2016年08月09日

IAIS(保険監督者国際機構)によるICS(保険資本基準)について-公表された市中協議文書の概要と関係団体からの初期反応等-

保険研究部 取締役   中村 亮一

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■要旨

IAIS(保険監督者国際機構)が、2016年7月19日に、保険会社に対する国際的な資本規制であるICS(Insurance Capital Standard:保険資本基準)に関する市中協議文書(2016 Insurance Capital Standard Public Consultation Document、以下「2016 ICS CD」という)を公表した。

今回のレポートでは、2016 ICS CDの概要とそれに対する関係団体からの初期反応等について報告する。なお、2016 ICS CDの概要については、主として、IAISによる7月19日のプレス・リリース資料と7月27日のパブリック・バックグラウンド・セッションで使用されたプレゼンテーション資料に基づいている。

■目次

1―はじめに
2―ICS(保険資本基準)について
  1|ICSとは
  2|ICSの位置付け
  3|ICS作成に向けてのプロセスと2016 ICS CDの位置付け
3―2016 ICS CDの全体像
  1|プレス・リリース資料による説明
  2|協議期間等
  3|2016 ICS CDのカバーする範囲等
4―2016 ICS CDの概要
  1|評価方法(valuation)
  2|適格資本(qualifying capital)
  3|ICS資本要件を決定するための標準手法
    (standard method for determining the ICS capital requirement)
5―2016 ICS CDに対する反応
  1|Insurance Europe(欧州保険協会)のコメント
  2|AIA(米国保険協会)及びPCI(米国損害保険会社協会)からの反応
  3|米中保険対話における声明における言及
  4|米国連邦準備制度理事会(FRB)の反応
6―ICSを巡る動向と今後の議論について
  1|保険負債評価手法についての2つの方式の並存
  2|EUのソルベンシーIIを巡る動き
  3|米国における保険資本規制を巡る動き
  4|市場価値調整ベース(MAV)について
  5|GAAP調整アプローチ(GAAP+)について
  6|ICSの最終目標
  7|最後に

1―はじめに

1―はじめに

IAIS(保険監督者国際機構)が、2016年7月19日に、保険会社に対する国際的な資本規制であるICS(Insurance Capital Standard:保険資本基準)に関する市中協議文書(2016 Insurance Capital Standard Public Consultation Document、以下「2016 ICS CD」という)を公表した。

今回のレポートでは、2016 ICS CDの概要とそれに対する関係団体からの初期反応等について報告する。なお、2016 ICS CDの概要については、主として、IAISによる7月19日のプレス・リリース資料と7月27日のパブリック・バックグラウンド・セッションで使用されたプレゼンテーション資料1に基づいている。
 
1 IAISのWeb サイトからともに入手可能 http://www.iaisweb.org/home
 

2―ICS(保険資本基準)について

2―ICS(保険資本基準)について

1|ICSとは
ICSは、IAIGs(Internationally Active Insurance Groups:国際的に活動する保険グループ)に適用されるグループベースの連結保険資本基準である2。IAIGsには、これからの指定基準の制定にもよるが、グローバルに保険活動を展開している50社から70社程度が該当し、これらの会社で世界の保険料シェアの5割以上を占めることが想定されている3

2|ICSの位置付け
ICSは、IAIGsを監督するための国際的な監督フレームワークで定性的かつ定量的な要件を取り扱う「コムフレーム(ComFrame)」の一部である。

ICSは、達成されるべき最低基準を制定しており、IAISの各国監督当局はそれぞれの管轄地域でICSを適用することが期待されている。各国監督当局はより高い基準やより高い最低資本水準を設定する追加的制度を採択してもよい。さらには、自国のIAIGsに対して補足的な資本十分性手段を導入してもよい。

3|ICS作成に向けてのプロセスと2016 ICS CDの位置付け
(1) ICSのVersion 1.0
2016 ICS CDは、2017年6月までに採択が計画されている機密ベースで会社が監督当局に報告する「ICS Version 1.0」に対するものである。

Version 1.0では、2つの評価方式アプローチとICS資本要件を算出する標準手法に基づいて、機密ベースの報告目的のICSを作成している。ICS Version 1.0の完成後、内部モデル(完全又は部分)の使用、外部モデル、標準手法のバリエーションを含む、他のICS資本要件の算出方法を検討する計画となっている。

(2) ICSのVersion 2.0
一方で、2019年において(コムフレームと一緒での)採択が計画されている「ICS Version 2.0」については、監督当局による実施に適合するICSを作成する。

ICS Version 2.0は、1) (最終目標で思い描かれているレベルではないが)ICS Version 1.0に比べて向上した比較可能性を有し、2) 未だ2つのアプローチが並存するかもしれないが、評価における差異を縮小することを熱望し、3) 標準的手法と内部モデル(完全又は部分)の使用、外部モデル、標準手法のバリエーションを含む、他のICS資本要件の算出方法の両方を認めているかもしれない、としている。
(参考)IAISによる保険監督規制の枠組み
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保険研究部   取締役

中村 亮一 (なかむら りょういち)

研究・専門分野
保険会計・計理

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