2016年08月02日

低金利や相続税対策などによる活況の一方、不動産賃貸市場の一部に頭打ち感~不動産クォータリー・レビュー2016年第2四半期~

竹内 一雅

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■要旨
  • 2016年4-6月には、熊本地震の発生に加え、円高・株安の進展、世界経済の減速、企業収益の悪化、英国のEU離脱決定とともに、消費税増税時期の延期決定などがあった。消費増税の延期で、2016年度の駆込み需要による景気押し上げがなくなる一方、2017年度の反動減による景気押し下げも回避。
     
  • 住宅着工は低金利や相続税対策に伴う貸家着工の増加に支えられ、年率換算で100万戸を上回る水準に上昇。2016年上期の首都圏マンション発売戸数は24年ぶりの低水準だったが、価格の上昇などから契約率は低下傾向が続く。他方で億ションなどの高額物件は平均を上回る契約率となっている。
     
  • オフィス市場では3-5月の大規模ビルの大量供給時に東京都心5区のオフィス需要が久しぶりに大きく増加したが、6月に需要は再び減少した。東京都心部Aクラスビルの空室率は改善が続くが、成約賃料は前期比で▲6.9%の下落と、上昇が頭打ちとなっている。2017年は新規供給が少ないため空室率の低下は継続する見込みだが、今後の大量供給に向けて今後の市況動向には注意が必要だろう。
     
  • 最近の百貨店販売を支えてきた外国人旅行者による免税品売上高が前年比▲15%の大幅減となった。円高・元安や中国の個人持込荷物等の関税見直し、購買単価の下落などが理由。訪日外国人旅行者数は前年比+19.0%と増加が続いているが、国内宿泊施設の延べ宿泊者数は▲2.5%の減少だった。日本人宿泊者数の大幅減に加え、外国人増加数の縮小が理由。
     
  • 4-6月の東証REIT指数は、英国のEU離脱決定などの影響から▲2.8%下落したが、年初来上昇率は+5.5%で、東証株価指数(同▲19.5%)を大きくアウトパフォーム。日銀によるマイナス金利政策は、利回り低下を通じてJ-REIT運用資産評価額や純資産額を拡大させる傾向があるが、持続的な不動産価格の成長のためには、利回り低下だけでなく収益の拡大が求められる。
首都圏分譲マンション契約率と在庫戸数
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竹内 一雅

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