2016年07月01日

消費者物価(全国16年5月)~円高の影響で食料を中心に下落品目数が増加

経済研究部 経済調査室長   斎藤 太郎

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1.コアCPI上昇率は3ヵ月連続のマイナス

消費者物価指数の推移 総務省が7月1日に公表した消費者物価指数によると、16年5月の消費者物価(全国、生鮮食品を除く総合、以下コアCPI)は前年比▲0.4%(4月:同▲0.3%)と3ヵ月連続のマイナスとなり、下落率は前月から0.1ポイント拡大した。事前の市場予想(QUICK集計:▲0.4%、当社予想も▲0.4%)通りの結果であった。

食料(酒類を除く)及びエネルギーを除く総合は前年比0.6%(4月:同0.7%)、総合は前年比▲0.4%(4月:同▲0.3%)となり、いずれも下落率が前月から0.1ポイント拡大した。
消費者物価指数(生鮮食品除く、全国)の要因分解 コアCPIの内訳をみると、電気代(4月:前年比▲9.9%→5月:同▲9.6%)、ガス代(4月:前年比▲10.6%→5月:同▲10.5%)、ガソリン(4月:前年比▲16.0%→5月:同▲16.1%)、灯油(4月:前年比▲26.8%→5月:同▲26.9%)の下落幅がいずれも前月からほぼ変わらなかったため、エネルギー価格の下落率も前年比▲12.6%と4月と同じ下落率となった。

一方、15年度中は2%程度の高い伸びが続いていた食料(生鮮食品を除く)は円高による輸入物価下落の影響から前年比1.3%(4月:同1.5%)と伸び率が鈍化した。食料(生鮮食品を除く)の上昇率は直近のピークである15年12月の前年比2.3%から5ヵ月で1ポイント低下し、コアCPI上昇率への寄与度は0.2ポイント以上縮小した。

コアCPI上昇率を寄与度分解すると、エネルギーが▲1.17%(4月:▲1.16%)、食料(生鮮食品を除く)が0.28%(4月:0.34%)、その他が0.50%(4月:0.52%)であった。

2.物価下落品目数が増加、東京都区部は上昇品目数の割合が5割を下回る

消費者物価(除く生鮮食品)の「上昇品目数(割合)-下落品目数(割合)」 消費者物価指数の調査対象524品目(生鮮食品を除く)を、前年に比べて上昇している品目と下落している品目に分けてみると、5月の上昇品目数は326品目(4月は344品目)、下落品目数は144品目(4月は134品目)となり、上昇(下落)品目数が前月から減少(増加)した。上昇品目数の割合は62.2%(4月は65.6%)、下落品目数の割合は27.5%(4月は25.6%)、「上昇品目割合」-「下落品目割合」は34.7%(4月は40.1%)であった。

上昇品目数の割合は引き続き6割を超えているものの、2ヵ月連続で低下しており、東京都区部の6月分では上昇品目数の割合が5割を下回った(5月:51.1%→6月:48.8%)。サービス価格は比較的底堅いが、円高に伴う輸入物価下落の影響を受けて、食料品を中心とした財の値下がりが目立つようになっている。

3.物価押し上げ要因が見当たらず

16年6月の東京都区部のコアCPIは前年比▲0.5%(5月:前年比▲0.5%)と6ヵ月連続の下落となり、下落率は前月と変わらなかった。事前の市場予想(QUICK集計:▲0.5%、当社予想は▲0.4%)通りの結果であった。

灯油(5月:前年比▲17.4%→6月:同▲19.1%)は下落幅が拡大したが、電気代(5月:前年比▲14.2%→6月:同▲13.3%)、ガス代(5月:前年比▲19.3%→6月:同▲18.6%)、ガソリン(5月:前年比▲15.9%→6月:同▲15.6%)の下落幅が前月から縮小したため、エネルギー価格の下落率は5月の前年比▲16.0%から同▲15.3%へと縮小した。

一方、テレビ、ビデオレコーダーなどの教養娯楽用耐久財(5月:前年比3.6%→6月:同▲0.6%)が1年ぶりに下落に転じたこと、家具・家事用品の上昇率が5月の前年比0.8%から同0.0%へと鈍化したことなどがコアCPIを押し下げた。

東京都区部のコアCPI上昇率のうち、エネルギーによる寄与が▲1.00%(5月:▲1.08%)、食料(生鮮食品を除く)が0.25%(5月:0.24%)、その他が0.26%(5月:0.34%)であった。
 
原油価格(ドバイ)は1月中旬の1バレル=20ドル台半ばから足もとでは40ドル台後半まで上昇しているが、電気代、ガス代は原油価格の動きが遅れて反映されること、円高で原油価格上昇の影響は一部相殺されることなどから、消費者物価のエネルギー価格は夏場までは前年比で二桁のマイナスを続ける可能性が高い。また、年明け以降円高傾向が続いていたが、英国のEU離脱をきっかけに一段と円高が進んだため、輸入物価下落による物価下押し圧力は今後さらに高まるだろう。景気低迷の長期化によって需給面からの物価押し上げも期待できず、現時点では物価を押し上げる要因がほとんど見当たらない。コアCPI上昇率は当面マイナス圏の推移が続く可能性が高いだろう。
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経済研究部   経済調査室長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

(2016年07月01日「経済・金融フラッシュ」)

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