2016年06月21日

米国PBR(プリンシプル・ベースの責任準備金評価)制度の動向-NAICが、2017年からの実施を採択-

保険研究部 取締役   中村 亮一

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■要旨

米国におけるPBR(プリンシプル・ベースの責任準備金評価:Principle Based Reserving)制度の導入を巡る動きについては、保険年金フォーカス「米国PBR(プリンシプル・ベースの責任準備金評価)制度の動向-ついに、2017年からスタートか-」(2016.4.18)(以下「前回の保険年金フォーカス」という)で報告した。

その中で、PBR制度が効力を発するためには、各州が、一定の要件を満たす形で、標準責任準備金法等の改正に関するNAIC(全米保険監督官会議)のモデル法を採択する必要があったが、各州の採択が進んで、4月上旬の時点において、改正法が効力を発するための数的要件が満たされた、ことを報告した。

ただし、この効力が発するためには、各州の採択内容がNAICのモデル法と「実質的に同等」である、との要件の確認が行われる必要があった。これについては、NAICの「PBR実行TF(タスク・フォース)(Principle-Based Reserving Implementation (EX) Task Force)」が評価・検討を行っていた。

このたび、NAICは、6月10日に、PBR実行TFから、「(実質的に同等との質的な面を含む)要件が満たされたため、2017年1月1日から、PBRの効力を発すべき」との勧告を受けて、これを採択した。これにより、まさに、2017年1月1日から、PBR制度がスタートする、ことになった。
このレポートでは、この内容について簡単に報告する。なお、PBR制度導入による影響及び今後の課題等については、前回の保険年金フォーカスで述べているので、今回のレポートでは触れていない。

■目次

1―はじめに
2―PBR制度について
  1|PBR制度とは
  2|NAICの標準責任準備金法の改正等
  3|PBR制度導入の要件
3―PBR実行TFからの勧告内容
  1|勧告内容とその評価方法等
  2|各州に求められる行動要件
4―今回の採択に関するNAICのリリース内容
5―保険業界からの反応
6―今後のスケジュール
7―まとめ

1―はじめに

1―はじめに

米国におけるPBR(プリンシプル・ベースの責任準備金評価:Principle Based Reserving)制度の導入を巡る動きについては、保険年金フォーカス「米国PBR(プリンシプル・ベースの責任準備金評価)制度の動向-ついに、2017年からスタートか-」(2016.4.18)(以下「前回の保険年金フォーカス」という)で報告した。

その中で、PBR制度が効力を発するためには、各州が、一定の要件を満たす形で、標準責任準備金法等の改正に関するNAIC(全米保険監督官会議)のモデル法を採択する必要があったが、各州の採択が進んで、4月上旬の時点において、改正法が効力を発するための数的要件が満たされた、ことを報告した。

ただし、この効力が発するためには、各州の採択内容がNAICのモデル法と「実質的に同等」である、との要件の確認が行われる必要があった。これについては、NAICの「PBR実行TF(タスク・フォース)(Principle-Based Reserving Implementation (EX) Task Force)」が評価・検討を行っていた。

このたび、NAICは、6月10日に、PBR実行TFから、「(実質的に同等との質的な面を含む)要件が満たされたため、2017年1月1日から、PBRの効力を発すべき」との勧告を受けて、これを採択した。これにより、まさに、2017年1月1日から、PBR制度がスタートする、ことになった。

このレポートでは、この内容について簡単に報告する。なお、PBR制度導入による影響及び今後の課題等については、前回の保険年金フォーカスで述べているので、今回のレポートでは触れていない。
 

2―PBR制度について

2―PBR制度について

1|PBR制度とは1
PBRとは、その名が示すとおり、これまでのルール・ベースの責任準備金評価とは異なり、プリンシプル・ベースで責任準備金評価を行う方式である。具体的には、これまでの「算式や計算基礎率等の前提を含めて、法令等に詳細な内容を規定する方式」とは異なり、「法令等には、基本的には考え方等のプリンシプルのみを規定し、その原則に基づいて、各社の判断で、適切な責任準備金評価の詳細な内容を決定していく方式」である。

2|NAICの標準責任準備金法の改正等
NAICは、こうしたPBR制度に関する標準責任準備金法の改正を、以下の通り、行ってきた。
標準責任準備金法の改正
3|PBR制度導入の要件
ただし、この改正法が効力を発するためには、標準責任準備金法(Model#820)第11条Bの規定により、以下の条件が満たされる必要があり、さらに、実際に「責任準備金評価マニュアル」の効力が発生するのは、「以下の要件が全て満たされた場合の最初の7月1日に続く暦年の1月1日」となっていた。
PBR制度導入の要件

1 PBR制度の具体的な内容については、筆者による、基礎研レポート「米国の責任準備金評価制度はIMFによってどう評価されたのか―米国に対するFSAP〔保険セクター〕の結果報告-」(2015.5.11)を参照していただきたい。

3―PBR実行TFからの勧告内容

3―PBR実行TFからの勧告内容

今回、PBR実行TFが NAICのExecutive (EX) Committeeに勧告した内容は、以下の通りである。

1|勧告内容とその評価方法等
勧告内容の結論は、以下の通りである。

「保険料で79.5%を占める45の管轄地域が、改定後の標準責任準備金法等と『実質的に同等(substantially similar)』とみなされる改正法を採択した。これにより、(23|で述べた)①~③の要件が満たされることになり、『責任準備金評価マニュアル』は2017年1月1日から効力が発生すべきである。」

この勧告の根拠となる評価方法等については、以下のように説明されている。

2015年11月21日に、PBR実行TFは「責任準備金評価マニュアルの発効日を決定するために、実質的に類似な条件と規定を評価するための計画」を採用した。これに基づいて、必要な調査書が2016年1月29日に(その時点で改正法を採択していた)43の州に配布され、回答を得た。

NAIC Legal Divisionが、州の法務担当責任者とNAICのテクニカル・スタッフのグループと共に、Model#820(2009年改正)の各州の採択におけるかい離を特定化した「州の調査の回答」の予備的なリーガル・レビューを完了した。TFは、Model#820からの特定化されたかい離が、レビュー中の法を条件に会社に適用される責任準備金評価要件における類似性に、影響を与えるかどうかを検討するレビュー基準から得られる結果を、Model#820(2009年改正)に実質的に類似した条件と規定を含んでいる法律を採択しているかどうかについての勧告の基礎とした。
(参考)各州毎の改正法の採択状況(2016年6月1日時点)
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保険研究部   取締役

中村 亮一 (なかむら りょういち)

研究・専門分野
保険会計・計理

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