2016年05月11日

【ASEAN経済】ASEAN6の輸出動向(3月分)~1-2月対比では持ち直し

経済研究部 准主任研究員 斉藤 誠

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ASEAN主要6カ国の16年3月の輸出額(通関ベース)は、ベトナムを除く5カ国で伸び率(前年同月比)が低下した(図表2)。
2月はタイが同10.3%増まで上昇、シンガポール(石油と再輸出除く)、マレーシア、インドネシアの減少幅が二桁から一桁に縮小するなど持ち直しの動きが見られたが、3月は再び落ち込んだ。しかし、例年1-2月は中華圏の旧正月の影響で輸出が大きく振れる傾向があることを考慮する必要があるだろう。1-2月平均と比較すると、3月の輸出の伸び率はマレーシア、タイ、インドネシア、ベトナムの4カ国で上昇した。依然として世界経済は低調であるものの、年明けから進む原油価格の緩やかな上昇が輸出の持ち直しに寄与しているものと見られる。
(図表1)ASEAN6 輸出額(図表2)ASEAN6 輸出の伸び率
(図表3)タイ輸出の伸び率(品目別) タイの16年3月の輸出額は前年同月比1.3%増の191.2億ドルと、2ヵ月連続のプラスとなったものの、前月の同10.3%増から低下した(図表3)。
品目別に見ると、主要工業製品が同3.4%増(前月:同13.8%増)と低下したことが全体を押下げたことが分かる。電子製品や家電製品、自動車・部品、機械・装置は前月から上昇したものの、金や宝飾品が大きく低下した。また鉱業・燃料は同41.3%減(前月:同32.7%減)と14年9月以来の大幅減少が継続した。農産品・加工品は同1.0%増(前月:同2.2%増)と、ゴムや砂糖、魚の缶詰を中心に低下した。
(図表4)マレーシア輸出の伸び率(品目別) マレーシアの16年3月の輸出額は前年同月比0.2%増の665.9億リンギ(ドルベースでは同9.3%減の163.8億ドル)と、前月の同6.7%増から鈍化したものの、2ヵ月連続のプラスとなった(図表4)。また輸出数量は同5.7%増と、前月の同9.8%増から低下した。
品目別に見ると、全体の約4割を占める機械・輸送用機器が同2.7%増と、電気・電子機器を中心に前月の同12.4%増から鈍化した。同国の通貨リンギットは昨年後半に下落したものの、年明けからは買い戻しが進んだことから通貨安による輸出への恩恵が弱まりつつある。一方、原油や天然ガスなどの鉱物性燃料は同23.0%減(前月:同25.1%減)と2ヵ月連続でマイナス幅が縮小した。足元では原油価格の上昇傾向が続いていることから原油・石油製品が同5.4%減(前月:同17.2%減)と持ち直しつつある。一方、価格低迷が続く天然ガスは同42.4%減(前月:34.4%減)と、持ち直しの動きは見られない。またパーム油などの動植物性油脂は同6.9%増(前月:7.0%増)と増加傾向を維持した。
(図表5)インドネシア輸出の伸び率(品目別) インドネシアの16年3月の輸出額は前年同月比13.5%減の117.9億ドルと、18ヵ月連続のマイナスとなった上、減少幅は二ヵ月ぶりの二桁台に拡大した(図表5)。また輸出数量は同11.7%減と、前月の同3.7%減から低下した。
品目別に見ると、輸出全体のそれぞれ1割強を占める石油ガスが同38.2%減、鉱業製品が同28.5%減と大幅に減少しており、資源価格の低迷が輸出の重石となっていることが分かる。また製造品は同4.8%減(前月:同0.8%増)と動植物性油脂や電気機械を中心に低下した。
(図表6)ベトナム輸出の伸び率(品目別) ベトナムの16年3月の輸出額は前年同月比13.3%増の151.2億ドルと、二桁増を記録した(図表6)。
資本別に見ると、輸出全体の7割を占める外資系企業が同11.5%増(前月:7.9%増)と上昇し、地場企業も同1.8%増(前月:同1.7%減)とプラスに転じた。
品目別に見ると、輸出全体の約2割を占める電話・部品が同42.3%増(前月:41.4%増)と大幅な拡大傾向が続いた。また繊維・衣類が14.4%増(前月:同8.3%減)、履物が同14.8%増(前月:同6.3%減)と、それぞれプラスに転じた。一方、コンピュータ・電子部品は同5.6%増と、前月の同10.6%増から低下した。
(図表7)シンガポール輸出の伸び率(品目別) シンガポールの16年3月の輸出額(石油と再輸出除く)は前年同月比15.6%減の133.7億シンガポールドル(米ドルベースでは同15.3%減の97.4億ドル)となり、2ヵ月ぶりのマイナスとなった(図表7)。
品目別に見ると、輸出(石油と再輸出除く)全体の約3割を占める電子製品は同9.1%減(前月:同0.7%増)とマイナスに転じた。通信機器は増加傾向を維持したものの、主力のICやPC、PC部品、ダイオード・トランジスタがそれぞれ減少し、電子製品全体ではマイナスとなった。また同じく全体の約3割を占める化学製品も同23.1%減(前月:同8.2%増)と、石油化学製品と医薬品がそれぞれ減少し、化学製品全体でもマイナスとなった。その他製品は同14.4%減(前月:同1.4%減)と、前月からマイナス幅が拡大した。
(図表8)フィリピン 輸出の伸び率(品目別) フィリピンの16年3月の輸出額は前年同月比15.1%減の46.1億ドルとなり、4ヵ月連続でマイナス幅が拡大した(図表8)。
品目別に見ると、輸出全体の約5割を占める電子製品が同1.0%増とプラスを維持したものの、前月の同8.1%増から大きく低下した。また一次産品についても農産品が同41.3%減(前月:4.4%増)、鉱業製品が同36.7%減(前月:32.5%減)とそれぞれ低下した。さらにその他製品は同23.6%減(前月:12.8%減)と、アパレル、ワイヤハーネス、機械・輸送用機器を中心に低下した。同国では、これまで好調だった電子製品は増加傾向が弱まりつつあるなか、一次産品、他の製造品も一段と減少傾向が強まってきている。
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経済研究部   准主任研究員

斉藤 誠 (さいとう まこと)

研究・専門分野
東南アジア経済、インド経済

経歴
  • 【職歴】
     2008年 日本生命保険相互会社入社
     2012年 ニッセイ基礎研究所へ
     2014年 アジア新興国の経済調査を担当
     2018年8月より現職

(2016年05月11日「経済・金融フラッシュ」)

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