2016年04月26日

欧州大手保険グループの2015年決算状況について-低金利環境下での各社の生命保険事業の地域別の業績や収益状況はどうだったのか-

保険研究部 取締役   中村 亮一

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■要旨

欧州大手保険グループの2015年決算数値が、2月から4月にかけて、投資家向けのプレゼンテーション資料やAnnual Reportの形で公表されている。欧州大手保険グループを巡る経営環境は、世界的な金融緩和の長期化に伴う低金利環境の継続に加えて、2016年1月にスタートしたソルベンシーIIをはじめとした各種の規制の厳格化への対応等、困難な課題を抱えている状況にある。今回の基礎研レポートでは、こうした環境下での、各社の2015年の生命保険事業について、地域別の業績や投資関係損益を巡る状況等に焦点を当てて報告する。

なお、以前の基礎研レター「欧米大手保険グループの海外事業展開とその収益状況について-欧米大手保険グループの海外における生命保険事業展開はどのような状況(規模・収益)にあるのか-」(2015.9.29)において、欧米大手保険グループ各社の地域別の保険料や営業利益等の実態がどのような状況にあるのかについて、2014年末のAnnual Report 等に基づいて報告した。今回の基礎研レポートでは、欧州大手保険グループのみに焦点を当てて、その2015年ベースへの更新を行うとともに、2014年との比較に加えて、低金利環境下での投資関係損益を巡る状況及び各社毎のトピック項目について報告する。

■目次

1―はじめに
2―欧州大手保険グループの各社間比較
  1|会社全体の業績
  2|生命保険事業の地域別業績
3―欧州大手保険グループの決算状況-各社別-
  1|AXA
  2|Allianz
  3|Generali
  4|Prudential
  5|Zurich
  6|Aegon
4―まとめ
  1|地域別の事業展開及び業績状況
  2|低金利環境下での投資関係損益を巡る状況
  3|日本の生命保険会社への示唆

1―はじめに

1―はじめに

欧州大手保険グループの2015年決算数値が、2月から4月にかけて、投資家向けのプレゼンテーション資料やAnnual Reportの形で公表されている。欧州大手保険グループを巡る経営環境は、世界的な金融緩和の長期化に伴う低金利環境の継続に加えて、2016年1月にスタートしたソルベンシーⅡをはじめとした各種の規制の厳格化への対応等、困難な課題を抱えている状況にある。今回の基礎研レポートでは、こうした環境下での、各社の2015年の生命保険事業について、地域別の業績や投資関係損益を巡る状況等に焦点を当てて報告する。

なお、以前の基礎研レター「欧米大手保険グループの海外事業展開とその収益状況について-欧米大手保険グループの海外における生命保険事業展開はどのような状況(規模・収益)にあるのか-」(2015.9.29)において、欧米大手保険グループ各社の地域別の保険料や営業利益等の実態がどのような状況にあるのかについて、2014年末のAnnual Report 等に基づいて報告した。今回の基礎研レポートでは、欧州大手保険グループのみに焦点を当てて、その2015年ベースへの更新を行うとともに、2014年との比較に加えて、低金利環境下での投資関係損益を巡る状況及び各社毎のトピック項目について報告する1

前回のレターでも述べたが。以下の報告においては、例えば、保険料の地域別内訳のベースが各社毎に異なっていたり、地域区分の考え方も各社独自の方式によっている等、各社の公表データのベースが必ずしも統一されていない。このため、厳密な意味での各社間の比較等を行うことはできないが、筆者の判断で一定の前提をおいて、比較可能な数値を作成して分析を行っている。
 
1 なお、2015年末のソルベンシーの状況については、筆者による、保険・年金フォーカス「欧州大手保険グループの2015年末SCR比率の状況について-ソルベンシーⅡに基づく数値結果報告-」(2016.4.12)を参照していただきたい。

2―欧州大手保険グループの各社間比較

2―欧州大手保険グループの各社間比較

欧州大手保険グループとしては、欧州の主要国を代表する保険グループとして、AXA(フランス)、Allianz(ドイツ)、Generali(イタリア)、Prudential(英国)、Zurich(スイス)、Aegon(オランダ)の6社を選んでいる。このうち、AXA、Alianz、Prudential、Aegonの4社はFSB(Financial Stability Board:金融安定理事会) が選定するG-SIIs(Global Systemically Important Insurers:システム上重要なグローバルな保険会社)に指定されている。Generaliも2015年11月まではG-SIIsに指定されていた。
以下の図表の数値は、特に断りがない限り、各社の公表資料に基づいている。

1|会社全体の業績
欧州大手保険グループは、生命保険事業だけでなく、損害保険事業も行っており、さらには、資産管理事業2も会社によっては大きな位置付けを占めてきている。
まずは、保険料と営業損益について、生命保険事業と損害保険事業の内訳を示しておく。下記の図表からわかるように、会社全体における生命保険事業の位置付けは、会社毎に異なっているが、PrudentialとAegonの2社以外は、損害保険事業も大きな位置付けを有している。
前年との比較では、会社全体の業績としては、(損害保険事業で多額の損失を計上した)Zurich3を除けば、各社ともほぼ順調に進展している。
このうち、生命保険事業については、各国において低金利の影響を受けて、厳しい経営環境下にあったが、ほぼ前年並みか前年を上回る営業利益を確保している。損害保険事業については、生命保険事業と比較して、収益が安定しない傾向があるが、2015年については、Zurichを除けばほぼ増収・増益となっている。
欧州大手保険グループの生命保険・損害保険事業別内訳
 
2 2015年の資産管理事業の営業損益は、AXA  952百万ユーロ、Allianz 2,297百万ユーロ、Prudential 587百万ポンド、Aegon 170百万ユーロ、またGeneraliの金融セグメントの営業損益は434百万ユーロ等、各社とも大きな位置付けを占めてきている。
3 後に述べるように、Zurichの生命保険事業の業績数値は、米ドル高による米ドル建の報告数値へのマイナスの影響を大きく受けているが、損害保険事業の業績数値への影響は、現地通貨ベースの進展率でみても、保険料3%、営業利益▲34%となり、特に利益への影響は小さい。


2|生命保険事業の地域別業績
以下の分析では、各社のセグメント情報に基づいて、生命保険事業に関する数値の比較を行っている。具体的には、保険料と営業利益の地域別内訳を見ている456

2-1.保険料の状況
まずは、保険料の地域別内訳を見てみる。ここでの保険料の数値には、ユニット・リンク等の投資型保険からの収入が反映されていないが、各社の地域間の分布等を比較するための1つの基準として採用している。

(1)2015年の結果
これによれば、各社毎に状況は異なっているが、各社とも自国(親会社国)以外からの保険料が一定の規模を有しており、自国以外での事業が大きな意味を有している。
AXAは米国の構成比が22%、アジア・太平洋での構成比が12%で、欧州以外で全体の1/3を占めている。
Allianzは自国のドイツでの構成比が高いが、ドイツ以外の欧州が26%の構成比を占めており、米国やアジア・太平洋等の構成比も有意な水準を確保している(なお、32|で述べるように、法定保険料ベースでは、米国の構成比は16%と高いものとなっている)。
Generaliはイタリアの構成比は36%であるが、イタリア以外の欧州での構成比が57%と高くなっている。
Prudentialは米国の構成比が49%、アジアの構成比が23%と高く、自国の構成比は28%でしかない。
Zurichは自国の構成比は11%で、スイス以外の欧州での構成比が61%と高くなっているが、中南米を含むその他での構成比も18%と高くなっている。
 
欧州大手保険グループの生命保険料の地域別内訳(2015年)
 
4 地域区分は、基本的に引受会社の所属国に基づいている。
5 なお、Aegonについては、損害保険事業の保険料が一定割合を占めているが、生命保険事業のみの地域別内訳数値が得られないこと等の理由から、この表からは除外している。
6 また、2015年の数値については、会社によっては、地域別のセグメントの変更や算出方法等の変更を行っているケースもあり、必ずしも前回の基礎研レターで報告した2014年の数値とベースが一致していない、ことには注意を要する。
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保険研究部   取締役

中村 亮一 (なかむら りょういち)

研究・専門分野
保険会計・計理

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