2015年12月17日

資金循環統計(15年7-9月期)~個人金融資産は前年比28兆円増の1684兆円、6月末比では34兆円の減少

経済研究部 シニアエコノミスト   上野 剛志

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1.個人金融資産(15年9月末): 再び1700兆円割れ

2015年9月末の個人金融資産残高は、前年比28兆円(1.7%)増の1684兆円となった1。6月末までは4四半期連続で過去最高を更新してきたが、今回で一旦更新が途絶えた形に。年間で資金の流入超過が28兆円あったことが前年比での資産増に繋がった。この間、時価変動2の影響はプラスマイナスゼロ(うち株式・出資金が6兆円増、投資信託が6兆円減)であった。

四半期ベースで見ると、個人金融資産は前期末(15年6月末)比で34兆円の減少となった。例年7-9月期は一般的な賞与支給月を含まないことからフローで流入が進まない傾向があり、今回も1兆円の流入超過に留まった。また、7-9月期は中国不安の高まりなどから円高・株安となったため、時価が35兆円減少(うち株式・出資金が21兆円減、投資信託は11兆円減)し、残高を押し下げた(図表1~4)。
 
(図表1)家計の金融資産残高(グロス)/(図表2)家計の金融資産増減(フローの動き)/(図表3)家計の金融資産残高(時価変動)/(図表4)株価と為替の推移(月次終値)
なお、その後の10-12月期については、一般的な賞与支給月を含むことから、例年フローで資金流入超となる時期にあたる。また、中国不安の一服などから、再び株高・円安が進んでいるため、現在の個人金融資産は9月末から数十兆円規模(40兆円程度か?)で増加していると考えられる。
 
 
1 2015年4-6月期の計数は確報化に伴って改定されている。
2 統計上の表現は「調整額」(フローとストックの差額)だが、本稿ではわかりやすさを重視し、「時価(変動)」と表記。

2.内訳の詳細: リスク性資産への資金流入が進む

7-9月期の個人金融資産への資金流出入について詳細を見ると、季節要因(賞与等)によって例年同様、現預金(とりわけ普通預金等の流動性預金)からの資金流出(引き出し)が顕著になっている。ただし、今回は流動性預金からの流出規模が大きいうえ、この時期としては異例となる定期性預金からの資金流出も起きている。
 

リスク性資産については、投資信託への資金流入が3.0兆円と7-9月期としては過去最高3となる大規模な流入を記録。同じく、株式・出資金もこの時期としては過去最高となる1.4兆円の資金流入となった。円高・株安局面を投資機会と捉え、家計の投資が積極化したとみられる。

一方、株と投資信託に外貨預金や対外証券投資などを加えたリスク性資産の残高は272兆円、その個人金融資産に占める割合は16.2%と、6月末の299兆円、17.4%からそれぞれ縮小した。株安等に伴う時価の減少が響いた。
 

なお、その他証券については、例年と比べて大きな特徴はなかった(図表5~8)。
(図表5)家計資産のフロー(各年7-9月期)/(図表6)現・預金のフロー(各年7-9月期)/(図表7)株式・出資金・投信除く証券のフロー(各年7-9月期)/(図表8)リスク性資産の残高と割合
 
3 厳密には四半期データで遡れる98年1-3月以降の最高(株式・出資金の記述も同様)

3.その他注目点: 企業の対外投資が継続、海外勢の国債保有高が初の100兆円越え

15年7-9月期の資金過不足を主要部門別にみると、企業部門が例年同様、資金余剰となったが、その規模は例年を大きく上回った。好調な企業収益の影響とみられる。一方、家計と政府部門は例年と同じく資金不足となったが、その規模は前年とほぼ変わらなかったため、企業の資金余剰拡大分は、ほぼ海外部門に流れた形になっている(図表9)。
 
また、9月末の民間非金融法人のバランスシートを見ると、現預金残高は247兆円と、6月末から3.3兆円増加し、過去最高をまたも更新した。ただし、負債サイドの借入金もこの間に3.6兆円増加しているため、純借入金残高(借入金-現預金、99兆円)としては6月末からほぼ横ばいに留まっている。これまでに積み上がった現預金が前向きな資金として積極的に取り崩される動きはまだ見えないものの、企業による海外直接投資は引き続き投資超過となっている。現地生産の流れや活発な海外M&Aなどから、企業による海外投資の拡大基調は続いている(図表10~11)。
(図表9)部門別資金過不足(各年7-9月期)/(図表10)民間非金融法人の現預金・借入/(図表11)民間非金融法人の現預金・対外直接投資(フロー)/(図表12)預金取扱機関と日銀、海外の国債保有シェア
国庫短期証券を含む国債の9月末残高は1040兆円と、従来の過去最高であった3月末(1038兆円)を超えた。国債増は財政赤字に伴うものであり、前年比では27兆円の増加となる。

国債の保有状況を見ると、従来同様、預金取扱機関(銀行など)の保有高が減少(256兆円、6月末比17兆円減)する一方で、異次元緩和で国債の大量買入れを継続している日銀の保有高が大きく増加(315兆円、6月末比20兆円増)し、両者の差が拡大した。全体に占める日銀の保有シェアも30.3%(6月末は28.5%)と初めて3割を突破している。日銀は今後も異次元緩和を継続するため、日銀の存在感(シェア)はさらに高まっていく。
 

また、海外部門の国債保有高は6月末から7兆円増加し、102兆円と初めて100兆円の大台に乗せた。そのシェアも9.8%と、過去最高を更新している(図表12)。国債市場における海外勢の存在感の高まりがうかがわれる。
 
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経済研究部   シニアエコノミスト

上野 剛志 (うえの つよし)

研究・専門分野
金融、日本経済

(2015年12月17日「経済・金融フラッシュ」)

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