2015年09月14日

拡大するインバウンド消費~今後地方への波及が期待される

岡 圭佑

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<要旨>

  1. 旅行収支は、東日本大震災の影響を受けて訪日外国人旅行者数が減少した2011年をボトムに、緩やかな改善を続けている。訪日ビザの発給要件の緩和・免除措置の拡大やLCCの就航数増加などを背景に訪日外国人旅行者数が増加し、旅行収支は改善基調を辿っている。また、足元では円安を主因に一人当たり旅行支出は拡大しており、訪日外国人旅行者数の増加が経済成長へ与える影響は高まりつつある。
  2. 訪日外国人旅行者による消費支出(インバウンド消費)の効果を試算すると、消費税率を引き上げた14年4月以降、個人消費の低迷が続く中で、百貨店、ドラッグストアなどの売上に一定の下支え効果を発揮している。こうした効果は円安によるところが大きいが、2014年10月の免税制度拡充も売上高の押し上げに寄与している。
  3. インバウンド効果は百貨店などの免税店が集中する都市部や一部の観光地に限られ、それ以外の地方にまで十分に行き渡っていないとの見方もある。業態別売上高に占めるインバウンド消費の割合を地域別に試算してみると、関東、近畿、北海道では総じて高く、訪日外国人旅行者数の増加による経済効果は一部の地域に偏っているといえる。
  4. 免税制度拡充を機にこれまで免税の対象外であった食料、飲料、化粧品などの消耗品が免税の対象となり、免税店の増加は都市部に留まらず地方にも広がりを見せている。また、政府が策定した「観光立国実現に向けたアクション・プログラム2015」では、観光振興策の一環として訪日外国人旅行者向けに地方では名産品(菓子類、酒など)を扱う免税店を増やすとの方針を示している。今後、景気回復が遅れる地方において、免税店の普及・拡大を背景に名産品等を中心にインバウンド消費が拡大することが地方経済の活性化に寄与することが期待される。
売上高に占める訪日外国人旅行者の割合
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