コラム
2011年10月31日

イノベーションが進む福祉機器 -心のQOL向上-

社会研究部 准主任研究員   青山 正治

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10月上旬に福祉機器の大規模な展示会が開催され、その広報紙によると、最新の福祉機器2万点の展示とある。海外企業も多数出展し、会場は多くの福祉関係者、団体で来場している新社会人や福祉系学生と思われる人々で大盛況であった。自身は数年前にも見学したが、来場者の変化として、今回は車椅子や家族連れの来場者が増えたように思われた。展示品の変化としては、随所に技術革新の進展が実感された。

展示ブースで目立ったのは、その展示スペースの広さからも、各自動車メーカーの福祉車両の展示であった。車椅子ごと搭乗できる様々な車種や、足や上肢の不自由な人の運転を支援する補助装置が組み込まれた車種など、メーカーごとの様々な工夫が凝らされた車両が展示されていた。
   福祉車両を見ていて、過去、旅行中に見かけた1シーンを思い出した。その場所は、とある地方の台地の上に位置する公園である。台地の上は平地で畑が広がっていた。その一角に古墳群あり、そこが公園になっていた。そこからの眺めは視界を遮るものが無く、その地平線の先にある山並みが平地で見るよりも青々と幾重にもグラデーションを織り成していた。見かけたのは福祉車両でも助手席が車外にせり出すタイプの車で、そのせり出した助手席に座った高齢のご婦人が、とても穏やかな表情で遠くの山並みを眺めていた。その横を通りすがるわずかな時間ではあったが、その微笑んだような表情とくつろいだ姿が印象に残っている。その時に、なるほど、座席が車外にせり出すタイプの福祉車両にはこのような活用方法もあると納得した次第である。車窓からでなく座席に座ったままオープンエアで景色を堪能できることは、得がたい癒しの時間も提供できるようだ。この座席の機能が付いた福祉車両の供給メーカーでは、恐らく当初より想定していた活用方法であったかも知れない。

さて、福祉車両以外では、よりユーザビリティを高めた電動タイプのものやカーボンファイバーを使用した軽量タイプのものなど、車椅子の種類が大変増えたように思われた。このほか、寝た状態の人を、抱え上げることなくそのままの状態で、ストレッチャーに装着された薄いベルト状のマットを横に繰り出し手動や電動で回転させてベッドへ、またベッドからも乗せ替えができるストレッチャーの実演も多くの見学者を集めていた。またベッドの縦方向の1/2がそのまま電動車椅子になる参考出品のベッドなど、介助や介護者の負荷を大幅に低減させる付加機能が注目された。さらに既に実績を持つ、下肢の不自由な人の歩行をモーターで支援する装着型のロボットや、両上肢が不自由な人の食事を介助する小型の多関節型のアームロボットなど、近年の介護領域の機器のイノベーションを肌で感じることができた。このほかにも、入浴用の機器や日常生活用品、さらに各種コミュニケーション機器など数多くの機器、器具類が展示されていた。

これらハイテクの様々な機器群の登場は、身体機能の低下した高齢者や障がいのある人の身体的機能を補うだけでなく、介助や介護を行う人の様々な負荷をも軽減させる点で大きな意義がある。安全性が高く使い勝手のよい機器の開発と普及は、さらに少子高齢化が進行する日本社会において、必須である。何にも増して、これら機器類の利活用は、介助や介護される人が持つ、「介護者に依存し、手間をかけている」という心の負担感を軽減できる可能性をも持ち、「心のQOL」を高めることにも寄与しよう。この観点からも今後のさらなる福祉機器のイノベーションの進展に期待したい。

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社会研究部   准主任研究員

青山 正治 (あおやま まさはる)

研究・専門分野
少子高齢社会・社会保障

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