コラム
2008年07月31日

宴(うたげ)の後に ・・・ 先進国の住宅価格はどこまで下がるのか?

経済研究部 主任研究員   石川 達哉

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公的資金注入を柱とする住宅金融公社の支援法案が米国で可決されたが、土地バブル崩壊後の日本における住専問題を思い起こした人は少なくないだろう。デフォルトリスクの高い低所得者に対する住宅ローン債権の証券化は米国特有のものとしても、地価や住宅価格の上昇が続く場合にしか債権回収が確保できないような形の融資が行われた場合には、価格反落時に金融機関が巨額の損失を被ることや、それに伴って深刻な金融危機が起きる可能性があることについては、米国に限定されないはずである。
   実際、政府の住宅価格統計が利用可能な先進国に限れば、カナダを除くほぼすべての国で実質住宅価格は横ばいか下落に転じている(拙稿「サブプライム・ショック”の第二幕~実質住宅価格は12カ国で下落へ」)。今回は、この下落が一時的なものにとどまらず、趨勢的に持続するかどうか、下落が持続した場合に下落幅はどの程度の大きさになるかについて考えてみたい。

まず、これまで続いてきた住宅価格上昇は90年代半ば以降に始まったものであり、1970年代以降の先進18カ国について分析したOECDの研究によると、実質価格の上昇が一定期間持続するという意味でのブームは、それ以前にも39ケースある。この6割に相当する23ケースにおいては、間隔をおくことなしに、上昇局面に続いて、大幅な下落を伴う持続的な下降局面(バスト:破裂、破滅)が訪れている。
   上昇局面の後の下降局面が終った時に、上昇分の1/2が残っているのは、このうちの1ケースのみである。それどころか、23ケース中の9ケースにおいて、下落が止まるまでの間に上昇分のすべてが失われている。単純に平均すると、上昇と下降の1サイクルを経た後の実質住宅価格は当初の水準よりも6%高いに過ぎない。90年代以降続いてきた日本の実質住宅地価(注)の下落は完全には終わっていないため、上記の23ケースには含まれていないが、下降局面に先立つ上昇局面の始まった77年9月の水準と現在の水準がほぼ等しいという事実は、驚くほどのことではないことになる。
   (注)全国市街地価格指数(日本不動産研究所)÷消費者物価指数(総務省)

長期的に見ると、住宅価格を一般物価で除した実質価格の水準は、一定の範囲にとどまるということである。そもそも、住宅価格は家賃、正確には持家の帰属家賃を実質金利で除した水準に決まるはずである。そして、長期的には、家賃の上昇率と一般物価の上昇率はほぼ同等であるので、実質金利が変動しなければ、住宅価格の上昇率も一般物価上昇率にほぼ一致し、実質住宅価格は一定の値をとることになる。短期的には名目金利や住宅価格の期待上昇率が変動するため、現実の実質金利は変動し、それを反映した住宅の実質価格の上昇・下落が起こるということである。このとき、実質金利がランダムに変化するのではなく、しばらくの間は低下や上昇を続けつつも、一定範囲での変動にとどまるということであれば、実質住宅価格には上昇が続く期間と下落が続く期間が訪れるが、水準は一定範囲に収まるという現象の説明がつく。住宅価格を実質ベースで見ることの重要性はここにある。

ちなみに、今回のブームでは、米国のピーク時までの上昇率は58%であったが、アイルランド・英国・ノルウェー・デンマーク・スウェーデン・フランス・スペイン・オランダ・オーストラリア・ニュージーランドの10か国はそれを上回っている。経験則に従えば、下落趨勢が定着して下降局面入りする確率は6割あり、下降局面入りした場合には大幅な下落が起きる可能性が高いことを心に留めておくべきだろう。

図1

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経済研究部   主任研究員

石川 達哉 (いしかわ たつや)

研究・専門分野
財政・税制、家計貯蓄・住宅

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