コラム
2008年06月17日

生保会社の一社専属募集人強化を目指す米国生保業界

  小松原 章

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収入保険料5,931億ドル(約69兆円、2006年)と我が国生保の2.4倍の規模を有する米国は世界最大の生保大国である。米国においても生保販売の中核を担う募集人はキャリアエージェントと言われる一社専属の専業募集人であるが、長期的な趨勢のなかでその人数は減少傾向にある。たとえば、リムラ(LIMRA)の調査によると、キャリアエージェントの数は1973年の25.7万人から2004年の16.1万人へと減少している。これに対して複数生保会社の商品を取り扱う独立エージェントは増加傾向にあり1998年の11.9万人から2004年の15.5万人へと勢力を増大させている。

こうした傾向に対して米国生保業界(米国生保協会(ACLI)、米国保険・フィナンシャルアドバイザー協会(NAIFA))は、国民経済的に見ても一般家庭に対して必要な生保商品を供給し、家計の適切な財産設計を確保する観点から問題であるとの強い認識を持つようになった。すなわち、米国ではキャリアエージェントの減少により、一般家庭に対して生命保険の重要性を啓蒙する機会が減り、多くの家庭において必要な生命保険が確保されていない実態があると認識するようになったからである。

米国生保業界によると、(1)子供のいる家庭の22%は生活費確保に困難を抱えている、(2)妻の28%、夫の15%が生保未加入である、(3)子供のいる親の66%が現在の生保保障額が不十分であると見ている、(4)多くの親は生保商品の複雑性から適切な購入決意ができないとしている、(5)既婚者の25%が相談先の欠如により生保購入ができないなどの調査結果が見られるとしている。つまり多数の国民は生保のニーズを認めているが、自身での生保購入ができない事実を業界は問題視しているのである。

そこで、生保業界はここへきて、このような事態を打開するには、生命保険の重要性を一般国民に啓蒙するキャリアエージェントの数を増やすことが重要であるとの認識に立ち、その実現に向けて積極的な行動に出る方針を明らかにした。具体的行動のひとつは、キャリアエージェント採用の障害となるような過剰規制を排除する一方、良質な人材を確保できるよう厳格な免許基準を導入するよう各州監督当局等に働きかけていくことである。

生保業界は特に重要な施策のひとつとして各州における全米保険監督官協会(NAIC)採択の「保険募集人免許モデル法」の全面採用を掲げている。これは、各州独自で行われている募集人免許規制をモデル法により全米統一化を図り過剰規制を排除する一方、募集人の資質向上の観点から、モデル法採択の一環として募集人免許取得前における所定の教育(20時間の履修)を義務付けるものである。そのほかにも統一的なテスト実施基準や教育ツールの開発など施策は多岐にわたっている。

このように業界が監督当局を取り込んでキャリアエージェント増大に向けて積極的に動き出すことは希少な動きである。需要が顕在化しがたい生保商品の普及を図るには多数の高資質キャリアエージェントが必要との認識が一段と高揚してきたことは生保業界の健全な発展という観点からも望ましいことであり、米国生保の取り組みの進捗状況が注目される。

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