2007年06月25日

金融機関の本業におけるCSRを考える-「金融CSR」と「CSR金融」の視点から-

  川村 雅彦

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【本邦金融機関のCSRに対する取組の特徴】
(1)「CSRを重視した何らかの取組を行っている」のは7割近いが、本業外の社会・地域貢献が過半を占める。「CSR≒企業市民活動」という意識が強い。
(2)顧客・消費者関連、従業員関連の取組は少なく、金融商品としてのSRIもごく僅かである。本業のプロセスやプロダクトに係わるCSRの認識は低い。
(3)CSR専任組織の設置は1割強にすぎず、CSR推進体制が未整備のまま、CSRの取組が行われている。
(4)CSRに関する情報はホームページにも掲載されるが、「CSR報告書」の発行は1割に満たない。
(5)CSRの取組理由は、地域銀行が多いことから、「地域との共存共栄」が過半を占めるが、経営上の社会的リスクや株主価値・資本市場の視点は希薄である。
【本邦金融機関のCSRに対する取組の課題】
(1)経営におけるCSRの位置づけの明確化
(2)本業における「金融CSR」と「CSR金融」の認識
(3)CSR経営の推進体制の構築
(4)透明性の高い非財務情報の開示

3.本邦金融機関におけるCSR経営の取組事例
これまでCSRは「利益還元型の社会貢献」と同一視されていたため、そんなことよりも経営基盤の強化が先決であるという考え方が強かった。しかし、金融不祥事が頻発する中で、業態を問わず、経営課題としてCSRをどのように位置づけるべきかを模索する金融機関が増えてきた。

4.求められる金融機関の体質改善
しかしながら、金融機関の不祥事をみると、顧客や契約者の利益に係わるものが多く、金融業の根幹にかかわる内部管理体制の不備は明らかである。これまでの金融機関の企業体質が露呈している。既に各金融機関はその改善に向けて努力しているが、今後は金融機関の経営にとって、トップ・コミットメントに基づく「企業の誠実さ」が求められる。これは金融機関の本業におけるCSRの大前提である。

5.金融機関が誘導できる環境・社会の持続可能性
国際的には、金融機関の投融資や資産運用における環境・社会的側面への配慮が定着しつつある。「赤道原則」は、民間金融機関による融資時の環境や社会への配慮に関する自主協定である(2003 年)。一定規模以上の開発事業にプロジェクト・ファイナンスを行う際、環境面や社会面での影響評価を行い、融資終了時までモニタリングすることなどを定めている。これは「CSR金融」の領域である。国連の「責任ある投資の原則(PRI)」は、年金基金などの機関投資家の資産運用においてもE・S・G(環境・社会・統治)の課題に配慮することにより、企業の社会的責任を果たすことを基本精神としたものである(2006 年)。これは、株主・投資家としての「金融CSR」を意味する。

6.先進的な海外金融機関のCSR事例
英国では1995 年の年金法改正により、2000 年から年金運用受託者に対して、投資銘柄の選定に当たっての環境面・社会面・倫理面の考慮度合い、および議決権行使
に関する基本方針について情報開示義務が課せられた。これに基づき、英国保険協会(ABI)は、SRIについて機関投資家が投資先企業に求める情報開示のガイドラインを公表した。英国の金融機関による自主団体であるFORGEグループは、2002 年に「CSRマネジメントとレポーティングに関する金融業ガイダンス」を公表した。これは金融機関におけるCSRの理解の促進、知識の共有、適切な対応の検討のために策定されたものである。

7.欧米の個別金融機関のCSRの取組
銀行ではABNアムロ、ドイツ銀行、シティグループ、JP モルガン・チェース銀行、保険会社ではアビバ、スタンダードライフ、アリアンツを取り上げ、それぞれのCSR経営の狙いと特徴を整理した。いずれも「本業におけるCSR」をめざしている。

8.本邦金融機関のめざすべきCSRの姿
(1)金融機関のもつ社会的な責任の自覚
(2)CSRは金融機関の経営戦略という認識
(3)自らのCSR経営の確立(金融CSR)
(4)投融資や金融商品におけるE・S・Gの配慮(CSR金融)
(5)ステークホルダーへの説明責任

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