コラム
2007年05月21日

人口減少への備え=「情けは人のためならず」

  臼杵 政治

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昨年12月の将来人口推計によると、現在から2050年までに65歳以上の老年人口が50%増加し、それを支える15~64歳の生産年齢人口が40%減少する。その結果、両者の比率は現在のおよそ3倍から、2050年にはほとんど同数になる。こうした人口構成の変化の影響を強く受けるのが賦課方式の年金制度である。日本では2004年の制度改正で18.3%までの保険料の引き上げとマクロ経済スライドを通じた給付の抑制により人口構成の変化を乗り切ることになった。

ただ、依然として根強いのが少子高齢化の影響を受けないように、事前の積立金を増やすべきという議論である。確かに積立金を増やしておき、それを取り崩して給付に充てれば保険料の引き上げや給付削減の必要性が減る。

ところが、資金の流れを国内だけに止めていると、積立方式でも人口減少の影響を免れない。例えば、年金積立金を国債に投資したとしよう。年金を給付するためには国債を償還しなくてはならない。その償還原資となる税金を払うのは、将来の現役世代である。社債や株式に投資したなら、現金化するにはそれらを売らなくてはならない。それを買うのは、やはり数の減ったその時の現役世代である。

各世代の人口が等しければ、将来の現役世代が国債を償還し、また社債・株式を購入するために必要な資金を払うことができる。もしも、現在の世代(第1世代)が所得の10%を拠出して資産を積み立てたとしよう。所得の伸びと利息を横におくと、将来の世代(第2世代)も所得の10%を支払えば資産を買い取ったり、国債を償還するための税を払ったりできる。しかし、貯蓄をする生産年齢人口が半分になっていれば、第2世代は所得の20%を支払わなくてはならない。結局、賦課方式の年金で、年金給付のための保険料支払が増えるのと同じように、所得の内、消費に充てられる部分がその分だけ減少する。

この落とし穴を逃れる方法が1つある。それは積み立てた資産を外国人に売って現金に換えることである。資産を買えるのは、生産年齢人口が十分あり、しかも、所得水準も貯蓄も高い国の人である。日本以外の先進国も、遅かれ早かれ少子高齢化を迎える。結局、人口構成の若い発展途上国の人々の所得が伸びないと、日本人の資産を売ることはできない。ペンシルバニア大学ウォートン校のシーゲル教授も指摘するように、人口の少子化・高齢化に直面する先進国の国民が引退後、自ら保有する資産を売り払うのも、売り払った資金で購入する財・サービスを生産するのも、途上国の人々以外にないだろう。

以上のように、高齢化を迎えた日本人が生活の糧に充てるため、資産を売る主たる相手は、今はまだ若年人口の増えている途上国の人々になろう。それら途上国の人々の所得を伸ばし、日本人から資産を買えるだけの貯蓄を生み出せるようにすることが、将来の人口減少に直面する日本人を助けることになる。いま途上国の発展に力を貸すことが自分たちの老後の安心につながる。「情けは人のためならず」、国境を越えた世代間の助け合いである。

また、今後、公私の年金資産を含めた、1500兆円の個人貯蓄ポートフォリオが、途上国を含めた海外投資家が買いたくなるような魅力のあるものかどうかという点にも配慮していくべきであろう。人口減少に備えた貯蓄・投資には、国際経済や市場への配慮が不可欠といえる。

臼杵 政治

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