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1.
小売店での販売時にメーカーの希望小売価格を表示しないことをオープン価格と呼び、オープン価格を用いた流通システムをオープン価格制と呼ぶ。オープン価格制は、1970年代初めに、生産が中止された製品や発売からかなりの時間が経過した製品を中心に始まり、1980年代にも徐々に広がった。1990年代以降になると、新製品としての販売時点からオープン価格で販売される製品が急増し、販売製品の全てを一挙にオープン価格化する企業も見られるなど、オープン価格制を導入する動きが急速に広がっている。
2.オープン価格制の導入が進んだ要因としては2点指摘できる。第1点は、経営環境や消費者行動の変化によって、希望小売価格が有する、品質表示、販売促進、取引弾力化、メーカー利益の拡大といった機能が低下したためである。第2点は、建値制の下で、小売業者に対するリベート供与が膨らみ、メーカーの利益を圧迫したことによるものである。
3.
商品がメーカー→小売店→消費者へと流通するチャネルを想定し、商品の需要に不確実性が存在する状況下での、メーカーと小売業者の行動を理論的に分析した。それによると、メーカーにとっては建値制のほうがオープン価格制より望ましく、小売業者では逆にオープン価格制が望ましくなることが判明した。しかし、小売業者の交渉力が高まり、小売業者が、オープン価格制の下での取引で得られる利益と建値制の下で得られる利益の差額を、追加的なリベートとして要求するようになると、メーカーにとってもオープン価格制が望ましくなることが明らかとなった。
4.
オープン価格制を導入したメーカーと小売業者を対象に、有価証券報告書を用いて、オープン価格制への移行がリベート削減に寄与したか分析したところ、必ずしもリベートの削減につながっていないことが判明した。これは、交渉力を増した小売業者が、オープン価格制の下でも多額のリベートを引き続き要求していることを反映したものと考えられる。
5.
公正取引委員会の調査によると、小売業者の受け取るリベートの中には、「不当」と判断されるものも少なくないようである。2005年11月1日から、独占禁止法第2条第9項が定める「不公正な取引方法」の一つである、優越的地位の濫用行為を規制する基本的ルールを指定した「大規模小売業者による納入業者との取引における特定の不公正な取引方法」が施行された。この告示によって今後は取引の透明性が増すと見られるが、取引の透明性の向上は、理論分析から見て、オープン価格制の普及を促進すると考えられる。
小本 恵照
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