2000年09月25日

統一に向けて動き出した米国保険法定会計

  小松原 章

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1.
米国保険会社に対しては一般目的の会計であるGAAPと保険監督目的の法定会計両方式が適用されるダブル・スタンダード体制が採用されている。後者の法定会計については保険監督が州の権限に属するため各州間で差があり、従来より保険監督の調整機関であるNAIC(全米保険監督官協会)が統合努力を重ねてきた。
2.
しかしながら、80年代後半から90年代初頭にかけて多くの州で営業する大規模保険会社の経営危機が続発するにつれて、ソルベンシー(支払能力)規制の見直しの一環として会計基準の統合ニーズが一段と強くなった。これに対し、NAICが中心となって法定会計の統合(codification,法典化)を90 年代初頭より進めてきた結果、このほど2001年1月から各州採択を前提に統一基準が適用されることとなった。
3.
新会計基準の特徴は、(1)法定会計のコンセプトを明確にしたこと(保守性基準等)、(2)GAAPを尊重するとともに法定会計のなかでのGAAPの位置づけを明確にしたこと
(GAAPの適用順位の明確化)、(3)その中で、法定会計の独自性部分を明確化・精緻化(責任準備金の取扱い等)したことで、これらにより法定会計の透明性・比較可能性が一段と高まることとなった。
4.
具体的に見ると、新基準の下ではFASB基準書等主要GAAP基準がNAICによる採択を前提に個別の法定会計基準(SSAP)に次ぐものとされ、税効果会計、年金(退職給付)会計等従来法定会計では採用されていなかった会計方式が採用されるなどGAAPへの接近が図られている。
5.
一方において監督上の骨格となる法定会計独自の方式、例えば、(1)非連結主義、(2)認容資産・非認容資産(什器・備品等B/S非計上資産)、(3)金融資産の評価(債券-償却原価)、(4)責任準備金評価(法令ベースの保守的評価)等においては従来どおりの方式が維持されるなど、法定会計のスタンスが堅持・明確化された。
6.
現在、一般目的会計に負債も含めて時価会計を導入しようとする国際会計基準委員会の動きもあり、会計目的が異なるとはいえ法定会計を巡る情勢はなお流動的な面もあるが、米国の法定会計が法典化によって新たな段階を迎えたことは事実である。法典化による会計基準はなお保険会社の唯一の会計基準ではなく、州の修正権限が留保されていることから、現在のところ会計士側により「GAAP以外の包括的会計基準」として認知されるには至っていないが、全州とも原則的に法典化による会計基準を採用予定であり、NAICも銀証保相互乗入れ等金融環境激変下での今後の保険監督基本方針として「州規制ハーモナイズ」のいっそうの強化を掲げていることから、新会計基準が全米レベルで確固たる会計基準として定着していくにつれて、事実上の「GAAP以外の包括的会計基準」として進化していくことが期待される。

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