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銀行業界におけるIT投資
近年、日本企業におけるIT投資は、大きく拡大してきているが、中でも銀行業界におけるIT投資は、銀行業界の再編の動きと絡めて、大きな注目を集めている。特に、邦銀が不良債権処理に経営資源の多くを投入せざるを得なかった間に、海外の金融機関(特に米銀)とでIT投資額で大きな差がついてしまい、商品・サービスの提供、リスク管理、経営管理などで格差がついてしまったと言われている。実際、2000年におけるIT投資予想額で見ても、かなりの格差が存在している。
日本と海外とのIT投資は、金額だけでなく質の面でも大きな格差があると指摘されている。日本の金融機関では、ITは合理化・省力化投資との考えが長らく支配的であり、投資対象の多くが勘定系システムやATMなどに費やされてきた。一方、海外ではIT技術を、一般的に言われているデリバティブなどの金融商品開発に加え、金融市場や融資でのリスク判断や、経営資源を適切に配分するツールとして積極活用しようとする動きが明確である。またバンカメリカ、チェース・マンハッタン等の大手米銀では、収益の柱となっているリテール分野(クレジットカード、消費者金融含む)への投資割合が高いという特徴がある。リテール分野のIT化は、単に支店のバックオフィスを合理化するだけでなく、顧客を管理・分析し、データベースを駆使したマーケティングを行うことで、収益拡大を目指しているのである。実際に、住宅ローンのマーケットシェアの拡大に成功した例も存在している。
日本の金融機関は、強い規制の下、商品・サービス等の差別化ができなかったこともあり、「顧客を知る」ことに熱心ではなかった。このため比較的自由に商品・サービスが提供できるようになっても、どの顧客に、どの商品を提供すべきなのか把握できていない。こうした状況の中、日本でも注目を集めてきているのがCRM(Customer Relationship Management)とそれをサポートするIT技術である。
久保 達哉
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