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2025年09月30日

鉱工業生産25年8月-7-9月期は自動車中心に減産の可能性

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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1.2ヵ月連続の減産

鉱工業生産・出荷・在庫指数の推移 経済産業省が9月30日に公表した鉱工業指数によると、25年8月の鉱工業生産指数は前月比▲1.2%(7月:同▲1.2%)と2ヵ月連続で低下し、事前の市場予想(QUICK集計:前月比▲0.8%、当社予想は▲同1.0%)を若干下回る結果となった。出荷指数は前月比0.5%と3ヵ月ぶりの上昇、在庫指数は前月比▲1.0%と2ヵ月ぶりの低下となった。

8月の生産を業種別に見ると、7月に前月比▲6.7%と急速に落ち込んだ自動車が同2.5%と持ち直したが、電気・情報通信機械(前月比▲5.7%)、金属製品(同▲7.8%)、無機・有機化学(同▲5.2%)が大きく落ち込むなど、15業種中12業種が前月比でマイナスとなった。
財別の出荷動向 財別の出荷動向を見ると、設備投資のうち機械投資の一致指標である資本財出荷指数(除く輸送機械)は25年4-6月期の前期比3.9%の後、7月が前月比▲8.4%、8月が同▲0.5%となった。また、建設投資の一致指標である建設財出荷指数は25年4-6月期の前期比▲2.4%の後、7月が前月比▲3.3%、8月が同▲3.3%となった。

25年4-6月期のGDP統計の設備投資は前期比0.6%と3四半期連続で増加した。高水準の企業収益を背景に設備投資は回復が続いているが、トランプ関税による先行き不透明感などから7-9月期は減速することが見込まれる。

消費財出荷指数は25年4-6月期の前期比▲0.1%の後、7月が前月比▲0.5%、8月が同▲1.1%となった。8月は耐久消費財が前月比3.6%(7月:同▲6.7%)、非耐久消費財が前月比▲1.7%(7月:同2.4%)であった。

25年4-6月期のGDP統計の民間消費は前期比0.4%と1-3月期の同0.0%から伸びを高めたが、7-9月期は横ばい圏にとどまることが見込まれる。

2.先行きの生産は下振れリスクが高い

製造工業生産予測指数は、25年9月が前月比4.1%、10月が同1.2%となった。生産計画の修正状況を示す実現率(8月)、予測修正率(9月)はそれぞれ▲4.0%、0.3%であった。

予測指数を業種別にみると、9月は非鉄金属(前月比7.0%)、金属製品(同9.0%)、電気・情報通信機械(同12.6%)が大幅増産計画となり、生産全体を牽引している。ただし、これらの業種はいずれも8月の実現率が大幅なマイナスとなっており、実際の生産は計画から大きく下振れる可能性が高い。トランプ関税の影響を強く受けている自動車を含む輸送機械は9月が前月比▲2.2%、10月が同4.7%と一進一退の生産計画となっている。
最近の実現率、予測修正率の推移/輸送機械の生産、在庫動向
25年8月の生産指数を9月の予測指数で先延ばしすると、25年7-9月期は前期比0.8%となるが、実際の生産の伸びは計画を大きく下回る傾向があり、直近3ヵ月平均の実現率は▲2.9%となっている。ちなみに、9月の生産が予測指数から▲3%下振れた場合(前月比1.1%)、7-9月期の生産は前期比▲0.2%となる。

4-6月期の生産は、トランプ関税下でも輸出価格の引き下げによって米国向け輸出数量が横ばい圏で踏みとどまったことなどから、前期比0.4%の増加となった。しかし、日本の主要自動車メーカーが米国での販売価格の引き上げに踏み切り、日本車の米国車に対する相対価格が上昇したことから、米国向けの自動車輸出は7月以降、数量ベースでも落ち込んでいる。7-9月期は自動車を中心に2四半期ぶりの減産となることが見込まれる。

本資料記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と完全性を保証するものではありません。
また、本資料は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。

(2025年09月30日「経済・金融フラッシュ」)

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経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

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