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世界のプレコンセプションケアから学ぶ日本の在り方-早急なエビデンス構築と政策評価のための指標の明確化、包括的セクシャリティー教育の推進-

生活研究部 研究員・ジェロントロジー推進室・ヘルスケアリサーチセンター 兼任 乾 愛
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本稿では、日本がプレコンセプションケアを展開していくにあたり、参考となる世界各国のプレコンセプションケアに関する取組みについて概説し、日本のプレコンセプションケアの在り方について考えていきたい。
プレコンセプションケアの概念提供の起源となった米国では、すべての生殖可能年齢にある女性の健康状態を改善し、意図しない妊娠やリスクを減らすことを目的に、プレコンセプションケアの指針を掲げた同時に、PCHHCが創設され、臨床医や医療従事者向けの情報サイトの構築や妊娠前の最適な健康と生殖に関するライフプランニングを促進することを目的とした全国キャンペーンであるShow Your Love(SYL)を開始している。国家主導の国民健康施策である「Healthy People 」にも位置付けられ、家族計画に関する質問ツールであるReproductive Life Planningも開発されている。
早期からエビデンス構築に取り組んだオランダでは、プレコンセプションケア介入による良好な生殖転機が科学的実績として得られたことにより、社会実装に踏み切っている。様々な実証実験の結果、最終的にmHealthを用いて、普段の栄養摂取状況や運動習慣などの簡易的な質問にいくつか回答した上で、個人のリスク評価に合わせた提案がなされ、この提案に応じて具体的なライフスタイル改善のための知識と行動目標を得られるsmarter pregnancyが開発されている。
スウェーデンでは、RLPをカウンセリングツールとして用いており、個人の希望に沿って適切に選択ができることを目的に導入されている上に、「Sexual and Reproductive Health/Rights」にも配慮した保健指導が実施されていることが特徴的である。
日本では、5か年計画が始動したばかりであるが、政策評価のためには、プレコンセプションケアによる介入により生殖転機を含めた国民の健康がどれほど改善されたのかを測る指標の設定が必要である。また、今後の日本には、生殖教育の導入だけではなく、幼少期からのプライベートゾーンの認識や、性的同意に関する意識表示の重要性、社会に存在しているジェンダー問題、アンコンシャスバイアス*など、関連する社会的問題と絡めながら教育を展開する包括的セクシャリティー教育が重要となるであろう。日本にいる全ての人々が、プレコンセプションケアにおける恩恵を享受できるように、着実に改革が推進されることを期待している。
* アンコンシャスバイアスとは、無意識の思い込みや偏見のことである。例えば、赤いランドセルを見て女の子の持ち物だと思ってしまったり、親が海外赴任していると聞いて父親のことだと無意識に思ってしまうことである。
■目次
1――はじめに
2――世界各国のプレコンセプションケア
1|米国:PCHHCのShow Your LoveとCDCのRLP
2|オランダのmHealth
3|スウェーデンのSexual and Reproductive Health/Rights
3――日本へのプレコンセプションケアの在り方とは
1|政策評価のための指標明確化とエビデンス構築を
2|包括的セクシャリティー教育の展開
4――さいごに
(2025年08月12日「基礎研レポート」)
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03-3512-1847
- 【職歴】
2012年 東大阪市入庁(保健師)
2018年 大阪市立大学大学院 看護学研究科 公衆衛生看護学専攻 前期博士課程修了(看護学修士)
2019年 ニッセイ基礎研究所 入社
・大阪市立大学(現:大阪公立大学)研究員(2019年~)
・東京医科歯科大学(現:東京科学大学)非常勤講師(2023年~)
・文京区子ども子育て会議委員(2024年~)
【資格】
看護師・保健師・養護教諭一種・第一種衛生管理者
【加入団体等】
日本公衆衛生学会・日本公衆衛生看護学会・日本疫学会
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