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2025年04月14日
欧州大手保険グループの地域別の事業展開状況-2024年決算数値等に基づく現状分析-
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6|Zurich
Zurichは、世界の200以上の国と地域で、生命保険や損害保険等のサービスを提供している。
Zurich は、事業ポートフォリオの見直しを適宜行っており、ノンコア(非中核)事業25の撤退を通じて資本を解放する一方で、成長が見込める市場において、買収等に再投資してきている。
また、2024年の決算発表で、2025年から2027年の財務目標として、SST比率が160%の下限を維持するとの条件の下で、(1)コアの1株当たり利益 CAGR 9%超、(2)コアROE 23%超、(3)3年間の累積キャッシュ送金190億ドル、を設定したことを公表している。
Zurich GroupのMario Greco CEOは、2024年の決算発表時に「損害保険と生命保険は過去最高の業績を記録」し、「これまでで最も野心的な目標を既に設定している新しいサイクルの始まりを力強く迎えている」と述べている。
25 ノンコア事業は、主として米国やバミューダや欧州で、多くは有益なランオフを達成するために管理されてきている。
Zurichは、世界の200以上の国と地域で、生命保険や損害保険等のサービスを提供している。
Zurich は、事業ポートフォリオの見直しを適宜行っており、ノンコア(非中核)事業25の撤退を通じて資本を解放する一方で、成長が見込める市場において、買収等に再投資してきている。
また、2024年の決算発表で、2025年から2027年の財務目標として、SST比率が160%の下限を維持するとの条件の下で、(1)コアの1株当たり利益 CAGR 9%超、(2)コアROE 23%超、(3)3年間の累積キャッシュ送金190億ドル、を設定したことを公表している。
Zurich GroupのMario Greco CEOは、2024年の決算発表時に「損害保険と生命保険は過去最高の業績を記録」し、「これまでで最も野心的な目標を既に設定している新しいサイクルの始まりを力強く迎えている」と述べている。
25 ノンコア事業は、主として米国やバミューダや欧州で、多くは有益なランオフを達成するために管理されてきている。
(1) 地域別の業績-2024年の結果-
図表中の保険収益や営業利益の数値は、生命保険と損害保険の合計数値を掲載しているが、これにFarmersやその他のセグメントを加えた会社全体の数値は、それぞれ595億7百万ユーロ、77億51百万ユーロ(2023年はそれぞれ560億99百万ユーロ、73億81百万ユーロ)となっている。
営業利益について、欧州では、自国のスイス以外に、英国、ドイツ、スペイン等から高い水準を上げている。ただし、こうしたEMEA(欧州・中東・アフリカ)からの構成比は、保険全体では48%(生保は71%、損保は35%)であり、残りの52%(生保で29%、損保で65%)を北米26、中南米、アジア・太平洋等が占めている。因みに、2023年は、EMEAの構成比は、保険全体では35%(生保は62%、損保は21%)、北米、中南米、アジア・太平洋等の構成比が65%(生保で38%、損保で79%)だった。
図表中の保険収益や営業利益の数値は、生命保険と損害保険の合計数値を掲載しているが、これにFarmersやその他のセグメントを加えた会社全体の数値は、それぞれ595億7百万ユーロ、77億51百万ユーロ(2023年はそれぞれ560億99百万ユーロ、73億81百万ユーロ)となっている。
営業利益について、欧州では、自国のスイス以外に、英国、ドイツ、スペイン等から高い水準を上げている。ただし、こうしたEMEA(欧州・中東・アフリカ)からの構成比は、保険全体では48%(生保は71%、損保は35%)であり、残りの52%(生保で29%、損保で65%)を北米26、中南米、アジア・太平洋等が占めている。因みに、2023年は、EMEAの構成比は、保険全体では35%(生保は62%、損保は21%)、北米、中南米、アジア・太平洋等の構成比が65%(生保で38%、損保で79%)だった。
他社との比較では、アルゼンチン、ブラジル、チリ、メキシコ等の中南米の位置付けが高くなっているのが特徴的で、営業利益(生保)で16%を占めている。Banco Santanderとの提携によるZurich Santanderにおける販売等が貢献している。また、オーストラリア、香港、インドネシア、日本、マレーシア等のアジア・太平洋のシェアも11%と比較的高い水準になっている。
なお、Zurichは、CSM残高について地域別には公表していないが、生命保険について、2024年末は116億57百万ドル、2023年末は115億26百万ドル、2022年末104億96百万ドルとなっている。
26 Zurichの米国子会社グループは、他の欧州の保険会社の米国子会社グループのような大きな規模を有していない。
なお、Zurichは、CSM残高について地域別には公表していないが、生命保険について、2024年末は116億57百万ドル、2023年末は115億26百万ドル、2022年末104億96百万ドルとなっている。
26 Zurichの米国子会社グループは、他の欧州の保険会社の米国子会社グループのような大きな規模を有していない。
(2) 地域別の業績-2023年との比較-
Zurichの決算数値は米ドル建で報告されているため、2023年との比較を見る上では、2024年の米ドルの主要通貨に対する状況等を考慮しておく必要がある。Zurichは通貨変動が各種指標に与える影響を開示している。
グループ全体の営業利益は、5%増加して77億51百万ユーロとなった。このうち、生命保険事業が8%増加して22億35百万ドル、損害保険事業が8%増加して42億4万ドル、Farmersが若干減少して22億86百万ドル、その他のノンコア事業やグループ機能で▲974百万ドルとなった。
営業利益(生保)の地域別の状況については、以下の通り。
・EMEAは、主にアイルランドとスイスの手数料ビジネスが好調に推移し、営業利益は前年比24%増の16億ドルとなった。また、準備金の取り崩しやドイツにおけるレガシー・バックブックの処分完了していないことによる非経常的な影響もあった。
・北米では、50百万ドル減少して57百万ドルとなり、死亡率の改善による影響は、前提条件の更新による不利な影響によって相殺された。
・アジアでは、12%減少して2億43百ドルとなったが、これは主に前年のオーストラリアにおける再価格決定措置による非経常的な好影響によるものである。
・ラテンアメリカでは、12%減少した。短期保障の技術的業績の伸びが、投資業績の減少、アルゼンチンにおけるインフレと通貨安の影響により相殺された。
営業利益(損保)については、以下の通り。
・全体では8%増加して42億ドルとなった。これは、北米における異常災害損失の増加により一部相殺されたものの、EMEAの好調な業績に牽引されたものである。
・EMEAでは、主に保険料の伸び、リテールの力強い回復、及び投資業績の改善により、前年比で6億72百万ドル増加した。
・北米では、主に約4億ドルの異常災害損失の増加により、前年比で13%、3億34百万ドルの減少となった。
・アジア・太平洋では、主に保険料の増加、良好な損害実績、投資利益の増加により、18%増加した。
・中南米では、保険料の伸びとコンバインドレシオの改善により、23%増加した。
なお、新契約価値は、全体で5%増加した。
CSM残高は1.1%増加して、11,657百万ドルとなった。
Zurichの決算数値は米ドル建で報告されているため、2023年との比較を見る上では、2024年の米ドルの主要通貨に対する状況等を考慮しておく必要がある。Zurichは通貨変動が各種指標に与える影響を開示している。
グループ全体の営業利益は、5%増加して77億51百万ユーロとなった。このうち、生命保険事業が8%増加して22億35百万ドル、損害保険事業が8%増加して42億4万ドル、Farmersが若干減少して22億86百万ドル、その他のノンコア事業やグループ機能で▲974百万ドルとなった。
営業利益(生保)の地域別の状況については、以下の通り。
・EMEAは、主にアイルランドとスイスの手数料ビジネスが好調に推移し、営業利益は前年比24%増の16億ドルとなった。また、準備金の取り崩しやドイツにおけるレガシー・バックブックの処分完了していないことによる非経常的な影響もあった。
・北米では、50百万ドル減少して57百万ドルとなり、死亡率の改善による影響は、前提条件の更新による不利な影響によって相殺された。
・アジアでは、12%減少して2億43百ドルとなったが、これは主に前年のオーストラリアにおける再価格決定措置による非経常的な好影響によるものである。
・ラテンアメリカでは、12%減少した。短期保障の技術的業績の伸びが、投資業績の減少、アルゼンチンにおけるインフレと通貨安の影響により相殺された。
営業利益(損保)については、以下の通り。
・全体では8%増加して42億ドルとなった。これは、北米における異常災害損失の増加により一部相殺されたものの、EMEAの好調な業績に牽引されたものである。
・EMEAでは、主に保険料の伸び、リテールの力強い回復、及び投資業績の改善により、前年比で6億72百万ドル増加した。
・北米では、主に約4億ドルの異常災害損失の増加により、前年比で13%、3億34百万ドルの減少となった。
・アジア・太平洋では、主に保険料の増加、良好な損害実績、投資利益の増加により、18%増加した。
・中南米では、保険料の伸びとコンバインドレシオの改善により、23%増加した。
なお、新契約価値は、全体で5%増加した。
CSM残高は1.1%増加して、11,657百万ドルとなった。
(3) 地域別展開に関する方針及びトピック
Zurichは、2024年に入ってからこれまでに、以下の地域別事業展開の見直し等を公表してきている。
2024年1月4日に、インドのKotak Mahindra General Insuranceの51%の株式を取得して、インドの損害保険市場に参入する、と発表した。時価総額でインド第3位の民間銀行であるKotak Mahindra Bank Limitedとの戦略的提携は、(規制当局の承認と慣例的な決算調整を条件に)新たな成長資本と株式購入の組み合わせにより、Kotak Mahindra General Insuranceの株式51%を4億8,800万米ドルで取得する提案を通じて行われる。さらに、Zurichは将来的に最大19%の株式を追加取得する予定である、と述べた。
2024年1月30日には、Viridium GroupがドイツのZurich Life Legacyの買収を計画通りに完了しないことを知らされたとし、このポートフォリオの解決策を見つけることに尽力しており、オプションを検討する予定である、と発表した。なお、Zurichは、この取引によりSST比率が8%ポイント上昇することを想定していたが、今回の件を受けて、これはZurichの目標や資本管理計画には影響しない、としている。
2024年6月19日に、Kotak Mahindra General Insuranceの70%を取得し、2021年に外国直接投資規則が改正されて最大74%の外国人所有が認められて以来、インドに進出する初の外国保険会社となった、と発表した。
2024年6月26日に、AIGのグローバル個人旅行保険及びアシスタンス事業(AIG Travel)を6億ドル(及び潜在的な追加アーンアウト支払い)で買収する契約を締結したことを発表した。この事業はチューリッヒの旅行保険プロバイダーであるCover-More Group(Cover-More)と統合され、米国での展開を拡大する。この買収により、Zurichは新たなグローバルなリテール顧客基盤にアクセスでき、世界有数の旅行保険会社になる、と述べている。なお、2024年12月13日に、この買収が完了し、世界中で 2,000万人以上の顧客と 200社の販売パートナーにサービスを提供する世界有数の旅行保険会社となった、と発表した。AIG の以前の世界的な個人旅行保険及びアシスタンス事業は、チューリッヒ所有の旅行保険会社 Cover-More Group と統合され、「Zurich Cover-More」として運営され、本社は米国に移転する。なお、この取引はチューリッヒのSST比率に5%ポイントの影響を及ぼした。
Zurichは、2024年に入ってからこれまでに、以下の地域別事業展開の見直し等を公表してきている。
2024年1月4日に、インドのKotak Mahindra General Insuranceの51%の株式を取得して、インドの損害保険市場に参入する、と発表した。時価総額でインド第3位の民間銀行であるKotak Mahindra Bank Limitedとの戦略的提携は、(規制当局の承認と慣例的な決算調整を条件に)新たな成長資本と株式購入の組み合わせにより、Kotak Mahindra General Insuranceの株式51%を4億8,800万米ドルで取得する提案を通じて行われる。さらに、Zurichは将来的に最大19%の株式を追加取得する予定である、と述べた。
2024年1月30日には、Viridium GroupがドイツのZurich Life Legacyの買収を計画通りに完了しないことを知らされたとし、このポートフォリオの解決策を見つけることに尽力しており、オプションを検討する予定である、と発表した。なお、Zurichは、この取引によりSST比率が8%ポイント上昇することを想定していたが、今回の件を受けて、これはZurichの目標や資本管理計画には影響しない、としている。
2024年6月19日に、Kotak Mahindra General Insuranceの70%を取得し、2021年に外国直接投資規則が改正されて最大74%の外国人所有が認められて以来、インドに進出する初の外国保険会社となった、と発表した。
2024年6月26日に、AIGのグローバル個人旅行保険及びアシスタンス事業(AIG Travel)を6億ドル(及び潜在的な追加アーンアウト支払い)で買収する契約を締結したことを発表した。この事業はチューリッヒの旅行保険プロバイダーであるCover-More Group(Cover-More)と統合され、米国での展開を拡大する。この買収により、Zurichは新たなグローバルなリテール顧客基盤にアクセスでき、世界有数の旅行保険会社になる、と述べている。なお、2024年12月13日に、この買収が完了し、世界中で 2,000万人以上の顧客と 200社の販売パートナーにサービスを提供する世界有数の旅行保険会社となった、と発表した。AIG の以前の世界的な個人旅行保険及びアシスタンス事業は、チューリッヒ所有の旅行保険会社 Cover-More Group と統合され、「Zurich Cover-More」として運営され、本社は米国に移転する。なお、この取引はチューリッヒのSST比率に5%ポイントの影響を及ぼした。
(2025年04月14日「基礎研レポート」)
中村 亮一のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
---|---|---|---|
2025/04/25 | 欧州大手保険グループの2024年の生命保険新契約業績-商品タイプ別・地域別の販売動向・収益性の状況- | 中村 亮一 | 基礎研レポート |
2025/04/14 | 欧州大手保険グループの地域別の事業展開状況-2024年決算数値等に基づく現状分析- | 中村 亮一 | 基礎研レポート |
2025/04/01 | 欧州大手保険グループの2024年末SCR比率等の状況-ソルベンシーII等に基づく数値結果報告と資本管理等に関係するトピック- | 中村 亮一 | 基礎研レポート |
2025/03/18 | EUがIRRD(保険再建・破綻処理指令)を最終化-業界団体は負担の軽減とルールの明確化等を要求- | 中村 亮一 | 基礎研レポート |
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【欧州大手保険グループの地域別の事業展開状況-2024年決算数値等に基づく現状分析-】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。
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