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2025年04月14日
欧州大手保険グループの地域別の事業展開状況-2024年決算数値等に基づく現状分析-
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5|Aegon
Aegonは、以前は世界の20カ国以上で事業展開してきたが、例えば2010年から2017年までに4カ国の保険事業から撤退し、さらに、2018年にはAegon Ireland の売却、米国の生命保険再保険事業の最後のブロックの売却、チェコとスロバキアの事業売却(2019年1月8日に完了)を行ってきた。2019年には日本における変額年金ジョイントベンチャーの 50%持分をそのパートナーであるSony Lifeに売却(2020年1月29日に完了)した。さらに、2020年には、ハンガリー、ポーランド、ルーマニア、トルコでの保険・年金・資産管理事業の売却を発表して、2022年には売却を完了する予定と述べた(このうち、ハンガリーは2022年3月に完了、ポーランドとルーマニアは2023年6月に完了したことを発表している)。さらに、2023年7月4日には、オランダの年金、生命保険、損害保険、銀行業務、住宅ローン組成業務のASRとの統合を完了(Aegon自体は統合会社への29.99%の持分を保有)している。加えて、2023年7月21日には、インドの合弁会社の持分の売却により、インドの合弁事業からの撤退も表明し、この取引は2024年2月に完了した。さらに、2023年4月4日には、英国の個人保障ブックをRoyal Londonに売却することを発表し、この取引も2024年7対に完了した。
このように、Aegonは、主導的なポジションを得ることができる市場に焦点を当てるという観点から、積極的な対応を進めてきており、現在は、3つのコア市場(米国、英国、オランダ(持分を通じて))、3つの成長市場(スペイン&ポルトガル、ブラジル、中国)、TLB(Transamerica Life of Bermuda)24、さらにはグローバルなアセットマネージャーとしての事業に戦略的な焦点を当てて、投資、保障及び退職ソリューションを提供してきている。
Lard Friese CEOは、2024年の決算発表時に、変革は引き続き順調に進んでおり、2023年のCMD(Capital Markets Day)で掲げた2025年の目標((1)運営資本創出額 約12億ユーロ、(2)フリーキャッシュフロー 約8億ユーロ、(3)1株当たり配当金 約0.40ユーロ、(4)総財務レバレッジを約50億ユーロに削減)達成に向けて順調に進んでおり、新たな戦略とグループ目標については2025年12月10日開催のCMDで発表すると述べている。
24 バミューダが本店、香港とシンガポールに支店を有している生命保険会社で、様々な地域において富裕層(High-Net-Worth)向け等にユニバーサル生命保険等を提供している。
Aegonは、以前は世界の20カ国以上で事業展開してきたが、例えば2010年から2017年までに4カ国の保険事業から撤退し、さらに、2018年にはAegon Ireland の売却、米国の生命保険再保険事業の最後のブロックの売却、チェコとスロバキアの事業売却(2019年1月8日に完了)を行ってきた。2019年には日本における変額年金ジョイントベンチャーの 50%持分をそのパートナーであるSony Lifeに売却(2020年1月29日に完了)した。さらに、2020年には、ハンガリー、ポーランド、ルーマニア、トルコでの保険・年金・資産管理事業の売却を発表して、2022年には売却を完了する予定と述べた(このうち、ハンガリーは2022年3月に完了、ポーランドとルーマニアは2023年6月に完了したことを発表している)。さらに、2023年7月4日には、オランダの年金、生命保険、損害保険、銀行業務、住宅ローン組成業務のASRとの統合を完了(Aegon自体は統合会社への29.99%の持分を保有)している。加えて、2023年7月21日には、インドの合弁会社の持分の売却により、インドの合弁事業からの撤退も表明し、この取引は2024年2月に完了した。さらに、2023年4月4日には、英国の個人保障ブックをRoyal Londonに売却することを発表し、この取引も2024年7対に完了した。
このように、Aegonは、主導的なポジションを得ることができる市場に焦点を当てるという観点から、積極的な対応を進めてきており、現在は、3つのコア市場(米国、英国、オランダ(持分を通じて))、3つの成長市場(スペイン&ポルトガル、ブラジル、中国)、TLB(Transamerica Life of Bermuda)24、さらにはグローバルなアセットマネージャーとしての事業に戦略的な焦点を当てて、投資、保障及び退職ソリューションを提供してきている。
Lard Friese CEOは、2024年の決算発表時に、変革は引き続き順調に進んでおり、2023年のCMD(Capital Markets Day)で掲げた2025年の目標((1)運営資本創出額 約12億ユーロ、(2)フリーキャッシュフロー 約8億ユーロ、(3)1株当たり配当金 約0.40ユーロ、(4)総財務レバレッジを約50億ユーロに削減)達成に向けて順調に進んでおり、新たな戦略とグループ目標については2025年12月10日開催のCMDで発表すると述べている。
24 バミューダが本店、香港とシンガポールに支店を有している生命保険会社で、様々な地域において富裕層(High-Net-Worth)向け等にユニバーサル生命保険等を提供している。
Transamericaのブランドを中心とする米国子会社のAegon USA Groupは、2024年末の認容資産で、米国の生命保険・医療保険グループで第17位(2023年末は第17位)14となっている。
なお、損害保険事業は、欧州で展開しているが、その全体における位置付けは高くない。
Aegonのグループ全体のCSM残高は、2024年末に89億90百万ユーロ、2023年末に82億51百万ユーロ、2022年末に91億28百万ユーロとなっている。なお、図表のCSM残高の数値の単位は、(公表資料に基づいて)英国がポンド、米州が米ドル、国際はユーロで、合計がユーロとなっている。
(2) 地域別の業績-2023年との比較-
2023年と比較して、営業利益は1%減少し、14億85百万ユーロとなった。これは、資産管理事業は事業の成長と一時的な利益を反映して改善しているものの、主に米州において、特に上期における不利な請求経験等が反映された。
米州の営業利益は、2023年の11億7百万ユーロから4%減少し、10億62百万ユーロとなった。これは、有配当、貯蓄&投資、保障の3つの事業セグメントの全てで増加したものの、金融資産セグメントの投資成績が減少したことによる。(1)有配当は、WFG(World Financial Group)の年金販売量の増加による手数料収入の増加と第三者商品プロバイダーからの収益分配収入の増加、(2)貯蓄・投資は、退職年金制度において、平均口座残高の増加による手数料の増加と一般口座のStaple Value Fundに投資された収益の増加、(3)保障は、ポートフォリオの拡大と良好な市場環境下で投資残高が増加、簿価利回りが上昇したこと等の投資実績の貢献による。金融資産セグメントは、2023年上期の好調の反動もあり、大きく減少した。
英国における営業利益は、2023年に比べて7%減少して、1億98百万ユーロとなった。事業の成長とCSMのリリースの増加の恩恵を受けた。好調な市場が収益の増加につながったが、これはヘッジコストの上昇と自己資金の受取利息の減少によって相殺された。さらに、保障に関しては、2024年7月1日に事業を売却したことにより、下半期においては前年下期に生じた損失は繰り返されていないが、上期はマイナスの影響を受けた。
国際部門の営業利益は、2023年の1億96百万ユーロから7%減少して、1億83百万ユーロとなった。この減少は主に、2022年にTLBとTransamericaの間で行われた内部再保険取引に伴い、TLBの資産残高及び利益が減少したことによるもので、他の国際部門の営業利益の増加で一部相殺された。中国では、事業の成長、継続率の改善及び費用の減少により増加した。スペインとポルトガルでは、費用管理と収入保険料の増加によるプラスの影響が不利な請求経験によって一部相殺された。ブラジルでは、事業成長と良好な請求経験によるプラスの影響が、不利な為替レートの変動と費用の増加によって相殺された。因みに、保険料でみた生命保険の新契約売上高266百万ユーロの内訳は、スペイン&ポルトガル35百万ユーロ、中国71百万ユーロ、ブラジル132百万ユーロ、TLB 27百万ユーロとなっている。
資産管理事業の営業利益は、2023年に比べて39%増加して、2億1百万ユーロとなった。グローバルプラットフォームと戦略的パートナーシップが牽引した。グローバルプラットフォームの営業成績は、CLO(ローン担保証券)事業の拡大や一時利益などの事業成長を反映して増加した。また、好調な市場の影響を受け、管理手数料が上昇したが、これは、人件費の増加による費用の増加によって一部相殺された。戦略的パートナーシップは、費用の減少とAegonの中国の資産管理合弁会社であるAIFMCからの一時利益によって、中国の市況悪化による影響を相殺しても、増加した。LBP AM(La Banque Postale Asset Management)の営業利益は、一時項目によって若干減少した。
持株会社の営業利益は、主に資金調達及び営業費用の影響により、1億59百万ユーロの損失となり、2023年と比較して4百万ユーロ改善した。
新契約価値については、10%増加して、6億38百万ユーロとなった。
CSM残高は2023年末に比べて7億39百万ユーロ、9%増加して、2024年末に89億90百万ユーロとなった。米国における事業の成長に牽引され、新契約がCSMに5億56百万ユーロの貢献をした。9億89百万ユーロのCSMリリースは、主に米州の金融資産と英国の伝統的ブックでの流出による。
なお、損害保険事業は、欧州で展開しているが、その全体における位置付けは高くない。
Aegonのグループ全体のCSM残高は、2024年末に89億90百万ユーロ、2023年末に82億51百万ユーロ、2022年末に91億28百万ユーロとなっている。なお、図表のCSM残高の数値の単位は、(公表資料に基づいて)英国がポンド、米州が米ドル、国際はユーロで、合計がユーロとなっている。
(2) 地域別の業績-2023年との比較-
2023年と比較して、営業利益は1%減少し、14億85百万ユーロとなった。これは、資産管理事業は事業の成長と一時的な利益を反映して改善しているものの、主に米州において、特に上期における不利な請求経験等が反映された。
米州の営業利益は、2023年の11億7百万ユーロから4%減少し、10億62百万ユーロとなった。これは、有配当、貯蓄&投資、保障の3つの事業セグメントの全てで増加したものの、金融資産セグメントの投資成績が減少したことによる。(1)有配当は、WFG(World Financial Group)の年金販売量の増加による手数料収入の増加と第三者商品プロバイダーからの収益分配収入の増加、(2)貯蓄・投資は、退職年金制度において、平均口座残高の増加による手数料の増加と一般口座のStaple Value Fundに投資された収益の増加、(3)保障は、ポートフォリオの拡大と良好な市場環境下で投資残高が増加、簿価利回りが上昇したこと等の投資実績の貢献による。金融資産セグメントは、2023年上期の好調の反動もあり、大きく減少した。
英国における営業利益は、2023年に比べて7%減少して、1億98百万ユーロとなった。事業の成長とCSMのリリースの増加の恩恵を受けた。好調な市場が収益の増加につながったが、これはヘッジコストの上昇と自己資金の受取利息の減少によって相殺された。さらに、保障に関しては、2024年7月1日に事業を売却したことにより、下半期においては前年下期に生じた損失は繰り返されていないが、上期はマイナスの影響を受けた。
国際部門の営業利益は、2023年の1億96百万ユーロから7%減少して、1億83百万ユーロとなった。この減少は主に、2022年にTLBとTransamericaの間で行われた内部再保険取引に伴い、TLBの資産残高及び利益が減少したことによるもので、他の国際部門の営業利益の増加で一部相殺された。中国では、事業の成長、継続率の改善及び費用の減少により増加した。スペインとポルトガルでは、費用管理と収入保険料の増加によるプラスの影響が不利な請求経験によって一部相殺された。ブラジルでは、事業成長と良好な請求経験によるプラスの影響が、不利な為替レートの変動と費用の増加によって相殺された。因みに、保険料でみた生命保険の新契約売上高266百万ユーロの内訳は、スペイン&ポルトガル35百万ユーロ、中国71百万ユーロ、ブラジル132百万ユーロ、TLB 27百万ユーロとなっている。
資産管理事業の営業利益は、2023年に比べて39%増加して、2億1百万ユーロとなった。グローバルプラットフォームと戦略的パートナーシップが牽引した。グローバルプラットフォームの営業成績は、CLO(ローン担保証券)事業の拡大や一時利益などの事業成長を反映して増加した。また、好調な市場の影響を受け、管理手数料が上昇したが、これは、人件費の増加による費用の増加によって一部相殺された。戦略的パートナーシップは、費用の減少とAegonの中国の資産管理合弁会社であるAIFMCからの一時利益によって、中国の市況悪化による影響を相殺しても、増加した。LBP AM(La Banque Postale Asset Management)の営業利益は、一時項目によって若干減少した。
持株会社の営業利益は、主に資金調達及び営業費用の影響により、1億59百万ユーロの損失となり、2023年と比較して4百万ユーロ改善した。
新契約価値については、10%増加して、6億38百万ユーロとなった。
CSM残高は2023年末に比べて7億39百万ユーロ、9%増加して、2024年末に89億90百万ユーロとなった。米国における事業の成長に牽引され、新契約がCSMに5億56百万ユーロの貢献をした。9億89百万ユーロのCSMリリースは、主に米州の金融資産と英国の伝統的ブックでの流出による。
(3) 地域別展開に関する方針及びトピック
Aegonは、2024年に入ってからこれまでに、以下の地域別事業展開の見直し等を公表してきている。
2024年2月26日に、2023年7月21日に公表された、インドの合弁会社であるAegon Life Insurance Companyの株式56%のインドの金融サービス会社であるBandhan Financial Holdings Limitedへの売却が完了し、インドの合弁事業から撤退した、と発表した。
2024年7月1日に、Royal LondonがAegonからの英国の個人保障ブックの譲渡を完了したと発表した。この取引は、2023年4月4日にAegonが発表していた。この取引により、約40万人の顧客を対象とした生命保険、重度疾病、所得補償保険がRoyal Londonに移管された。
Aegonは、2024年に入ってからこれまでに、以下の地域別事業展開の見直し等を公表してきている。
2024年2月26日に、2023年7月21日に公表された、インドの合弁会社であるAegon Life Insurance Companyの株式56%のインドの金融サービス会社であるBandhan Financial Holdings Limitedへの売却が完了し、インドの合弁事業から撤退した、と発表した。
2024年7月1日に、Royal LondonがAegonからの英国の個人保障ブックの譲渡を完了したと発表した。この取引は、2023年4月4日にAegonが発表していた。この取引により、約40万人の顧客を対象とした生命保険、重度疾病、所得補償保険がRoyal Londonに移管された。
(2025年04月14日「基礎研レポート」)
中村 亮一のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
---|---|---|---|
2025/04/25 | 欧州大手保険グループの2024年の生命保険新契約業績-商品タイプ別・地域別の販売動向・収益性の状況- | 中村 亮一 | 基礎研レポート |
2025/04/14 | 欧州大手保険グループの地域別の事業展開状況-2024年決算数値等に基づく現状分析- | 中村 亮一 | 基礎研レポート |
2025/04/01 | 欧州大手保険グループの2024年末SCR比率等の状況-ソルベンシーII等に基づく数値結果報告と資本管理等に関係するトピック- | 中村 亮一 | 基礎研レポート |
2025/03/18 | EUがIRRD(保険再建・破綻処理指令)を最終化-業界団体は負担の軽減とルールの明確化等を要求- | 中村 亮一 | 基礎研レポート |
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【欧州大手保険グループの地域別の事業展開状況-2024年決算数値等に基づく現状分析-】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。
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