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コラム
2024年12月23日
1――「医保電子銭包」―医療保険ウォレットとは?
中国政府は、12月2日、医療保険ウォレットの試行を9省31の地域で実施することを発表した。
医療保険ウォレットとは、専用のアプリを通じて、公的医療保険の個人専用口座にある残高を家族・親族間でやり取りをすることを可能とする仕組みである。中国の都市部の会社員を対象とした公的医療保険制度は会社員本人の保険料負担分を医療保険専用口座(個人が管理)に積立てる仕組みとなっており1、これまでも自身の通院治療費や薬代などに利用が可能であった。
なお、近年、政府はこの医療保険専用の個人口座に関する改革を進めている。利用対象者については、2021年に本人に加えてその配偶者、父母、子女まで拡大している。更に、2024年7月には親族も利用を可能とした。利用対象についても拡大されており、通院治療費や薬代に加えて、医療機器、医療資材の個人負担分の費用の支払い、配偶者・父母・子女が加入する公的医療保険制度(都市・農村住民基本医療保険制度)の保険料の支払いも可能とした。
ただし、これまでは被保険者と父母などが同一省内などで生活している場合は利用が可能であったが、それぞれ別の省で生活している場合などは利用することができなかった。今回の医療保険ウォレットの試行実験はそれぞれの地域間において、オンライン上で積立金のやり取りをすることで、省を跨いだ家族・親族間の利用を可能とするものである。
1 従業員本人については前年の平均賃金の2%を納付。雇用主は従業員の賃金総額の8%を納付。雇用主が負担する医療保険料については医療保険基金に積み立てられ、入院給付、慢性病・特殊疾病などの給付に充てられている。なお、農村住民・都市の非就労者を加入対象とする公的医療保険(都市・農村住民基本医療保険)では、医療保険専用の個人口座は設置されていない。
医療保険ウォレットとは、専用のアプリを通じて、公的医療保険の個人専用口座にある残高を家族・親族間でやり取りをすることを可能とする仕組みである。中国の都市部の会社員を対象とした公的医療保険制度は会社員本人の保険料負担分を医療保険専用口座(個人が管理)に積立てる仕組みとなっており1、これまでも自身の通院治療費や薬代などに利用が可能であった。
なお、近年、政府はこの医療保険専用の個人口座に関する改革を進めている。利用対象者については、2021年に本人に加えてその配偶者、父母、子女まで拡大している。更に、2024年7月には親族も利用を可能とした。利用対象についても拡大されており、通院治療費や薬代に加えて、医療機器、医療資材の個人負担分の費用の支払い、配偶者・父母・子女が加入する公的医療保険制度(都市・農村住民基本医療保険制度)の保険料の支払いも可能とした。
ただし、これまでは被保険者と父母などが同一省内などで生活している場合は利用が可能であったが、それぞれ別の省で生活している場合などは利用することができなかった。今回の医療保険ウォレットの試行実験はそれぞれの地域間において、オンライン上で積立金のやり取りをすることで、省を跨いだ家族・親族間の利用を可能とするものである。
1 従業員本人については前年の平均賃金の2%を納付。雇用主は従業員の賃金総額の8%を納付。雇用主が負担する医療保険料については医療保険基金に積み立てられ、入院給付、慢性病・特殊疾病などの給付に充てられている。なお、農村住民・都市の非就労者を加入対象とする公的医療保険(都市・農村住民基本医療保険)では、医療保険専用の個人口座は設置されていない。
2――試行地域は流動人口の多い中規模都市を中心
2 河南省医療保障局「国家医保局黄華波副局長来豫調研 医保銭包試点工作」、2024年10月21日。
3 淮南市人民政府「【医療保障】安徽首家、淮南“医保銭包”来啦!跨省能共済、近親族共用」、2024年11月28日。
3――医療費の個人負担軽減へ
政府が医療保険専用の個人口座の改革を進め、医療保険ウォレットの普及を目指す背景には、社会保障に関する経費、特に医療保険財政が大きく関係していると考えられる。2023年の公的医療保険による給付総額1兆7,733億元のうち、基本医療保険基金(雇用主の保険料負担分を積み立てた基金)からの給付は65.6%を占める1兆1,641億元であった。一方、個人口座からの支払いも6,092億元で34.4%を占めており、医療保険財政における個人口座のプレゼンスは高い。加えて2023年の医療保険個人口座の残高の総額は1兆4,000億元にも上る。政府はこの“休眠資金”を活用し、家族間・親族間で相互に活用することで、個人負担に対する軽減をはかろうとしているのだ。更に、上掲の2024年7月に配偶者・父母・子女が加入する都市・農村住民基本医療保険制度の保険料の支払いも可能とした背景には、同時期に保険料の高額化を背景とした同制度からの脱退者が増加した点が考えられる。今後、医療保険ウォレットの普及がどこまで進むのか、政府がこの個人口座の活用をどこまで広げるのかなどについてもその動向を注視していく必要がある。
(2024年12月23日「研究員の眼」)
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経歴
- 【職歴】
2005年 ニッセイ基礎研究所(2022年7月より現職)
(2023年 東京外国語大学大学院総合国際学研究科博士後期課程修了) 【社外委員等】
・日本経済団体連合会21世紀政策研究所研究委員
(2019~2020年度・2023年度~)
・生命保険経営学会 編集委員・海外ニュース委員
・千葉大学客員教授(2024年度~)
・千葉大学客員准教授(2023年度) 【加入団体等】
日本保険学会、社会政策学会、他
博士(学術)
片山 ゆきのレポート
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