2024年03月05日

ドイツの民間医療保険及び民間医療保険会社の状況(1)-2022年結果-

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3―民間医療保険の普及状況(2)-収入保険料及び給付額-

この章では、民間医療保険の普及のうちの収入保険料及び給付額の状況について報告する。

1|収入保険料
収入保険料は47,153百万ユーロ、うち代替医療保険が35,699百万ユーロ(完全医療保険が30,627百万ユーロ、介護保険が5,073百万ユーロ)、付加医療保険が10,551百万ユーロとなっている。このように、代替医療保険からの保険料が全体の約3/4を占めている。

なお、この民間医療保険の収入保険料水準は、公的医療保険の収入保険料の2割弱に相当している。
民間医療保険の収入保険料(商品別内訳)
ドイツ保険協会(GDV)の資料に基づくと、2022年の収入保険料は、対前年3.9%増加している。

この増加率は、2012年から、過去において批判が増加していた導入的タリフ(Einsteigertarifen:Starter tariffs)6の販売推進を止めたこともあり、2014年までの5年間毎年低下してきていた。2015年は増加率を若干反転させたが、2016年は再び低下、2017年は、久々に高い増加率となったが、2018年は再び1.8%の伸びに鈍化していた。2019年以降は再び反転して、増加率を高めてきていたが、2022年の増加率は対前年1.9%ポイント低下して、3.9%となった。
民間医療保険の収入保険料の推移
商品別の状況を見てみると、介護保険や介護付加保険が他の商品に比べて、相対的に高い増加率を示している。
民間医療保険-収入保険料の商品別内訳の推移-
なお、医療保険の収入保険料は、生命保険・損害保険を含めた保険会社全体の収入保険料223,302百万ユーロの約2割に相当しているが、医療保険に対するニーズの高まりを反映して、過去30年間で、この比率は徐々に増加してきている。
民間保険会社における医療保険の位置付け(医療保険会社の収入保険料シェア)
 
6 限定された給付水準で、低い保険料水準からスタートして、その後保険料が増加していく商品
2|給付額
総給付額(老齢化積立金(生命保険の責任準備金に相当)への繰入額や保険料返還を含む)の推移は、以下の図表の通りとなっている。以前は、老齢化積立金への繰入額の増加率が相対的に高かったが、ここ数年間は、高齢化の影響等もあり、老齢化積立金への繰入額の伸びは低くなってきている。なお、将来の保険料軽減等に使用されるための準備金であるRfB(Rückstellung für Beitragsrückerstattung)への繰入額は44億ユーロとなっている。
民間医療保険-給付額の内訳-
保険種類別では、医療費用保険(完全医療保険等)が全体の9割近くを占めているが、近年は介護保険の給付額の増加率が高くなっている。
民間医療保険-給付額の内訳(保険商品別) -
介護保険以外の医療保険の給付タイプ別のシェアでは、通院給付が5割弱で最も高く、入院給付が3割弱で続き、歯科治療給付は15.7%を占めている。
民間医療保険(長期介護保険以外)-給付額の内訳(給付タイプ別) -
直近で判明している2021年ベースの医療保険の給付額(老齢積立金繰入を含む)52,352百万ユーロは、生命保険・損害保険を含めた保険会社全体の給付額の23.0%に相当している。
民間保険会社における医療保険の位置付け(医療保険会社の給付額シェア)
(参考)医療保険普及率の国際比較
ドイツの民間医療保険の普及率を、一人当たりの保険料及び対GDP保険料比率で見てみると、以下の図表の通りとなっており、保険密度を示す一人当たりの保険料は558ユーロ、普及率を示す対GDP保険料比率は1.22%となっている。

なお、これをEU(欧州連合)の加盟国間で比較してみると、欧州保険業界団体のInsurance Europeの最新公表数値である2020年ベースでは、(1)一人当たりの保険料は516ユーロで、オランダの3,111ユーロ、スイスの1,249ユーロ、ルクセンブルグの790ユーロに次いでおり、(2)GDP保険料比率は1.27%で、オランダの6.80%、スイスの1.64%、スロベニアの1.42%、フランスの1.30%に次いでいる。

医療保険の普及率等は、公的医療保険制度との役割分担が大きく影響しており、民間医療保険に大きく依存しているオランダやスイスが高いものとなっているが、ドイツもこれらに次ぐ国となっている。
民間医療保険-普及率の推移-

4―まとめ

4―まとめ

以上、ドイツにおける民間医療保険の普及状況について、基本的には2022年数値に基づいて報告してきた。

ドイツの民間医療保険は、公的医療保険制度の代替をその主たる機能としつつ、高まる医療保障ニーズに対応する観点から、補完及び補足的な機能を充実させることで、着実に保険料を増加させ、その位置付けを高めてきている。

次回のレポートでは、民間医療保険会社の市場シェア、経営効率及び財務面の状況について報告する。
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中村 亮一

研究・専門分野

(2024年03月05日「保険・年金フォーカス」)

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