2024年01月16日

公的年金と企業年金・個人年金は、どう組み合わせるべきか?~年金改革ウォッチ 2024年1月号

保険研究部 上席研究員・年金総合リサーチセンター 公的年金調査室長 兼任 中嶋 邦夫

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1 ―― 先月までの動き

年金財政における経済前提に関する専門委員会は、次期財政検証に使用する経済前提について検討作業班から報告を受け、年金部会へ報告する内容を議論した。年金部会と企業年金・個人年金部会は合同で開催され、公的年金と私的年金の連携や広報等について意見交換を行った。年金記録訂正分科会は、2022年度と2023年度上期の年金記録訂正事業の報告を受けた。年金数理部会は、厚生年金と国民年金の2022年度の財政状況をヒアリングした。年金部会は、前述した合同開催とは別の回で、国民年金における育児期間の保険料免除策などを確認した。
 
○社会保障審議会 年金部会 年金財政における経済前提に関する専門委員会
12月4日(第6回) 検討作業班における議論について
 URL https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_36605.html (資料)
12月27日(第7回)  年金財政における経済前提のあり方(年金部会への議論の経過報告案)
 URL https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_37073.html (資料)
 
○社会保障審議会 年金部会(第10回)、企業年金・個人年金部会(第30回) ※合同開催
12月11日 公的年金と私的年金の連携、制度の周知、広報・年金教育
 URL https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_36778.html (資料)
 
○社会保障審議会 年金記録訂正分科会
12月20日(第11回) 年金記録の訂正に関する事業状況(令和4年度事業状況、令和5年度上期概況)
 URL https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/newpage_00091.html (資料)
 
○社会保障審議会 年金数理部会
12月25日(第98回) 令和4年度財政状況、厚生年金保険、国民年金・基礎年金制度
 URL https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000198131_00029.html (資料)
 
○社会保障審議会 年金部会
12月26日(第11回) 国民年金における育児期間の保険料免除、標準報酬月額の上限
 URL https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/nenkin_20231226.html (資料)

2 ―― ポイント解説:公私年金連携の課題

2 ―― ポイント解説:公私年金連携の課題

合同開催された年金部会と企業年金・個人年金部会では、公私年金の連携が議論された。本稿では、経緯や現状を確認し、課題を考察する。
図表1 公的年金の給付水準の見通し (対2019年度)/図表2 企業年金等の加入率 (対雇用者数)/図表3 企業年金等の実施率 (企業規模別) 1|現状:私的年金への期待が高まる一方で、企業年金の加入率や実施率は低下
部会では、公的年金が国民の老後生活の基本を支え、私的年金(企業年金や個人年金)と合わせて老後生活の多様な希望やニーズに対応する、と厚生労働省が整理した。しかし、公的年金の給付水準は今後低下していく見通しである(図表1)。そのため、従来は公的年金が担っていた老後収入の一部を、就労や私的年金などで補う必要性が増している。

その一方で、企業年金の縮小が進んでいる。1990年代の半ばには雇用者の約6割が企業年金等に加入していたが、2000年代初頭に適格退職年金制度の廃止等が打ち出されると加入率は低下した(図表2)。企業規模別に見ると、実施率がもともと低かった中小企業で、実施率のさらなる低下が大きくなっている(図表3)。
2|課題:中小企業やパートでの企業年金の充実
第1の課題は、中小企業での企業年金や個人年金支援の充実である。中小企業でも企業年金を実施できるよう、賃上げと同様に産業界全体での取り組みを期待したい。また、企業年金を未実施の企業における個人型確定拠出年金への拠出支援(iDeCoプラス)も、手続きの電子化などによる普及を期待したい*1

第2の課題は、パート労働者への企業年金の適用である。厚生年金の適用拡大は進んでおり、企業年金の適用は「同一労働同一賃金ガイドライン」を踏まえるよう通知されているが、最終的には就業規則次第である。米国では、2019年に成立したSECURE法で401(k)年金の提供が義務づけられるパート労働者の範囲が拡大され、2022年成立のSECURE法2.0でさらに拡大された*2。日本でも同様の議論を期待したい。
 
*1 iDeCoプラスの導入時には、加入者全員の情報を所定の用紙(もしくは同書式のExcelシート)に記入し、他の書類も含めて全ての書類を紙で提出する必要がある。
*2 1986年から年1000時間以上の就労者が対象だったが、2022年には2年連続で年500時間以上の就労者も対象となった。
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保険研究部   上席研究員・年金総合リサーチセンター 公的年金調査室長 兼任

中嶋 邦夫 (なかしま くにお)

研究・専門分野
公的年金財政、年金制度全般、家計貯蓄行動

経歴
  • 【職歴】
     1995年 日本生命保険相互会社入社
     2001年 日本経済研究センター(委託研究生)
     2002年 ニッセイ基礎研究所(現在に至る)
    (2007年 東洋大学大学院経済学研究科博士後期課程修了)

    【社外委員等】
     ・厚生労働省 年金局 年金調査員 (2010~2011年度)
     ・参議院 厚生労働委員会調査室 客員調査員 (2011~2012年度)
     ・厚生労働省 ねんきん定期便・ねんきんネット・年金通帳等に関する検討会 委員 (2011年度)
     ・生命保険経営学会 編集委員 (2014年~)
     ・国家公務員共済組合連合会 資産運用委員会 委員 (2023年度~)

    【加入団体等】
     ・生活経済学会、日本財政学会、ほか
     ・博士(経済学)

(2024年01月16日「保険・年金フォーカス」)

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