2023年10月04日

資産が減少する過程での運用は容易でない

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経済が将来に向かって成長するとか、株価がアップダウンはあるものの中長期で見ると上昇するといった仮定は、ごく自然なものである。その一方で、日本の生産年齢人口のみならず、総人口も減少をはじめている。規模の拡大に合わせて設計されたシステムは、減少過程で見直しが必要となる可能性が高い。
 
公的年金では、人口減少と高齢化比率の上昇に対応するため、マクロ経済スライドを導入し、積立金を運用することによって影響を緩和するように取り組んでいる。これまでは積立金運用の成果などもあって残高が増加して来たが、今後の人口減少と高齢化の進行によって、積立金を取り崩しながら給付に充てる状況が到来する。これは本来想定されたものであるが、運用は容易でない。
 
既に一部の企業年金や共済組合等では年金収支がマイナスになり、運用収支で補っている例も少なくないようであるが、運用原資である積立金が減少する中での運用は、これまでとは異なるものにならざるを得ない。資産の取り崩しを前提に考えると、フルに低流動性資産に配分することは出来ない。流動性を意識した資産運用が求められるが、資産が逓増する過程とは異なったアロケーションが必要になるだろう。資産の逓減を踏まえて運用する過程では、数理と運用のより緊密な連携が求められることになる。
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(2023年10月04日「ニッセイ年金ストラテジー」)

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