2023年06月23日

欧州保険会社が2022年のSFCR(ソルベンシー財務状況報告書)を公表(3)-SFCRからの具体的内容の抜粋報告(その2)-

文字サイズ

(2) Generali
GeneraliのSCRやMCRの計算方法の説明(の一部)は、以下の通りとなっている。

SCRについては、監督当局の承認を受けた会社の金融リスク、信用リスク、生命保険引受リスク、損害保険引受リスクとオペレーショナルリスクをカバーする内部モデルとその他の(再)保険会社に対する標準式及び他の規制セクター(銀行業や年金業務)に対するセクターの要件を適用して算出される。なお、オペレーショナルリスクについては、2019年まではグループの全ての保険会社において標準式により計測されていたが、2020年からは内部モデルを適用している。

その他、LTG措置や移行措置、USPの使用、簡素化の使用等について説明しているが、以下ではその記述は省略している。

E.2.1SCRMCRの値
このセクションは、Generaliグループのソルベンシー資本要件(SCR) 及び最低資本要件(MCR)について記載している。

特に、SCRは、1年間の信頼水準が99.5%の自己資本のバリュー・アット・リスク (VaR) として計算される。

グループはSCRを部分内部モデル(PIM)で測定している。SCRは、監督当局の承認を受けた会社の金融リスク、信用リスク、生命保険引受リスク、損害保険引受リスクとオペレーショナルリスクをカバーする内部モデルとその他の(再)保険会社に対する標準式及び他の規制セクター(銀行業や年金業務)に対するセクターの要件を適用して算出される。

PIMは、グループがさらされている主要なリスクの正確な表現を提供しており、セクションE .4でより詳細に説明されているように、各リスクの個別の影響とグループ自己資本に対する複合的な影響の両方を測定する。

当グループでは、SCRの定義に簡易計算を使用していない。

会社固有のパラメータ(USP)は、Euro Assistance Group、イタリアの会社D.A.S. (Difesa Automobilistica Sinistri)、TUA Assicurazioni S.p.A.及びSocieta Cattolica di Assicurazione S.p.A.のSCRの計算に使用される。これらのUSPsの使用は関連する監督当局により承認されている。

ボラティリティ調整の詳細はセクションD.に記載されている。マッチング調整は適用されない。

グループのSCRは21,050百万ユーロ(2021年は22,288百万ユーロ)だった。グループSCRの減少は、以下の理由による。

・当年度における株式市場の縮小に伴う金融リスクの減少、および金利カーブの大幅な上昇により、債券のエクスポージャーが減少し、保険契約者の損失吸収能力が高まったこと。これはリスクプロ ファイルに影響を与え、結果として当グループの分散投資効果に影響を与えた。

・当年度に買収等を完了したインド、マレーシア、フランスにおける事業に関連する6社を、標準式による資本要件の算定範囲に含めていること

・指令2003/41/EC(IORP)の第4条に基づき運営されていたフランス事業を、Generali Vie(IMの範囲に含まれる)から新しい法人であるGenerali Retraiteに移管した。それは、金融規制事業体の周辺の年金基金として含められる。
(図表等、省略)

以下のテンプレートは、分散を計算しない下記のカテゴリの会社に対する資本要件の合計としてのSCRの総額を提供している。

・内部モデルに基づくSCRの計算に内部モデル(IM)を使用する承認を受けたエンティティは、EEA(欧州経済領域)と非EEAの間で区別される。
・標準式計算に基づくエンティティは、EEAと非EEAとその他の少数保有エンティティに区別される。
・信用その他の金融サービスはセクタールールに基づく。
・IORP年金基金

分散を計算しない下記のカテゴリの会社に対する資本要件の合計としてのSCRの総額

グループの連結最低SCRの目的のために、算出はグループの法的単体のMCRに基づいており、EIOPAによって提供された指示に従っている。
(図表 省略)

MCRが2021年末の18,148百万ユーロから2022年末の16,686百万ユーロに減少したのは、保険料と準備金の動きや単体のSCRの動きによる。

E.2.2SCRの内訳
SCRの内訳は以下のとおりで、SCR総額に対するリスクの寄与とリスク分散の影響を示している。
(図表等、省略)

最も関連するリスクは、金融/市場リスクで、分散効果前のSCR総額の41.1%(2021年末は44.9%、以下同様)であり、信用/カウンターパーティリスクは19.1%(21.0%)、生命保険/健康保険引受リスク及び損害保険引受リスクで、それぞれ13.4%(10.9%)、17.9%(14.6%)、オペレーショナルリスクが8.5%(7.6%)となっている。

分散効果後では、金融リスクで49.1%(54.9%)、信用リスクが20.7%(22.7%)。生命保険/健康保険引受リスクが6.0%(3.9%)、損害保険引受リスクが15.6%(11.8%)、オペレーショナルリスクは7.2%(6.1%)となっている。

税金損失吸収(上表の「税金の吸収」)は4,745百万ユーロ(2021年末時点では5,460百万ユーロ)。これは基本的に、ソルベンシー・バランスシートのストレス項目と税務バランスシートの非ストレス項目との間の一時差異に基づく税金回収に関連している。現行の規則に従って、吸収のごく一部のみが、ストレスシナリオの結果として将来の利益を認識することによって決定される税金の回収可能性を考慮している。

モデル調整は、中期的なタイムホライズンにおける計画されたモデル改善に対して割り当てられた付加的な任意マージンを表している。

MAP(マッチング調整ポートフォリオ)調整がグループのポートフォリオには適用されていないのに対して、RFR(リングフェンスファンド)の調整項目は、規制上の要件として、他のポートフォリオとの分散効果を除去する調整を表している。

(3) Aegon
AegonのSCRやMCRの計算方法の説明(の一部)は、以下の通りとなっている。

「Aegonは、会計連結法と控除合算法のソルベンシーIIの下で利用可能なグループ統合手法の組み合わせを適用している。ソルベンシーII資本要件は、主としてEEAベースの保険及び再保険会社に対して、会計連結法を用いて適用される。ローカル要件は(暫定的に)同等な第三国(主として、米国の生命保険会社、バミューダ、メキシコ、ブラジル)からの保険及び再保険会社に対して使用される。」としている。

また、内部モデルの使用については、「Aegonにとって最も重要なリスクタイプは、ソルベンシーII PIM(部分内部モデル)の一部として内部モデルでカバーされ、あまり重要でないリスクタイプやビジネスユニットは、ソルベンシーII PIMの一部として標準式でカバーされる。」としている。

ソルベンシーII PIM SCR内の分散化については、「内部モデル内では、過去のデータと専門家の判断を利用して、全てのリスク要因に対して、限界確率分布関数が適合している。」とし、「ソルベンシーII PIMの内部モデルと標準式コンポーネントの間の分散は、ソルベンシーIIの規定に従って、統合テクニック3(IT3)を使用して計算される。 IT3では、内部モデルと標準式の構成要素との間の暗黙の線形相関係数の計算方法について説明している。この相関係数は、平方根公式を使用して合計ソルベンシーII PIM SCRを計算するために使用される。」としている。

E.2ソルベンシー資本要件及び最低資本要件
E.2.1ソルベンシー資本要件
Aegonは、会計連結法と控除合算法のソルベンシーIIの下で利用可能なグループ統合手法の組み合わせを適用している。ソルベンシーII資本要件は、主としてEEA及び英国ベースの保険及び再保険会社に対して、会計連結法を用いて適用される。ローカル要件は(暫定的に)同等な第三国(主として、米国の生命保険会社)からの保険及び再保険会社に対して使用される。

ソルベンシーII PIMに基づくSCR方法論
Aegonは、ソルベンシーIIの下でEEA保険会社の多数のソルベンシー・ポジションを計算するために、部分内部モデル(PIM)を使用している。AegonのPIMは、内部モデル適用プロセスの一部として監督カレッジによって承認された。Aegonにとって、標準式(SF)方法に含まれている業界全体の概算に対して、Aegon特有のモデリングと感応度を含んでいることから、PIMは実際のリスクのよりよい表現である。内部モデルの目的は、SCRにおいてAegonの実際のリスクプロファイルをより良く反映することにある。それゆえ、Aegonにとって最も重要なリスクタイプは、ソルベンシーII PIMの一部として内部モデルでカバーされ、あまり重要でないリスクタイプやビジネスユニットは、ソルベンシーII PIMの一部として標準式でカバーされる。下記が内部モデルの構造を表している図表である。

内部モデルの構造を表している図表

Aegon内部モデルは、以下の法的エンティティをカバーしている。

Aegon the Netherlands
・Aegon Levensverzekering N.V
・Spaarkas N.V.

Aegon the UK
・Scottish Equitable plc

Aegon N.V.

ソルベンシーIISCR計算に従うAegon内部の全てのその他のエンティティは、標準式を使用している。

以下のリスクタイプは、ソルベンシーIIPIMの内部モデルコンポ-ネントに基づいてモデル化される。

ミスマッチリスクカテゴリ内
・Aegon the Netherlands, UK and Aegon N.V.に対する金利リスクと金利ボラティリ
ティリスク
・Aegon UK とAegon N.Vの通貨リスク

投資・カウンターパーティリスクカテゴリ内
・固定金利リスク(スプレッドリスクとデフォールト/ミグレーションリスクの両方)
・株式レベルリスク
・株式ボラティリティリスク
・オルタナティブ投資リスク内で、Aegon the Netherlandsの不動産リスクに対してIMを、全てのその他のオルタナティブ投資リスクはSFに基づく。
・Aegon the Netherlandsによって2020年に設定された決定論的調整。この特徴は、EIOPAのVA参照ポートフォリオとAegon the Netherlands自身の参照資産ポートフォリオとの間のベーシスリスクによって引き起こされるボラティリティを軽減し、ソルベンシーIIのレビューから生じる変更が制定されるまで実施される。

アンダーライティングリスクカテゴリ内-生命保険アンダーライティングリスク
・Aegon the Netherlandsに対する死亡率パラメータリスク
・Aegon the Netherlands とAegon UKに対する長寿パラメータリスク
・継続率リスク内で、Aegon the Netherlandsにおけるモーゲージ期限前返済リスクと
Aegon UKにおける契約者行動
・Aegon UKにおける事業費リスク

その他のリスク
・Aegon UKにおけるオペレーショナルリスク
・グループのカウンターパーティデフォールトリスク

内部モデルでカバーされていない全てのリスクタイプは、ソルベンシーII PIMの標準式の構成要素の下でカバーされている。ソルベンシーIIPIMの全ての構成要素で使用されているリスク指標は、1年のタイムホライズンに適用される99.5%のリスク値である。欧州委員会委任規則(EU)2015/35(委任法)の附属書XVIII.Dにリストされているように、統合手法3(IT3)を使用して標準式SCR と内部モデルSCRを組み合わせてソルベンシーII PIM SCRを計算する。

ソルベンシーII PIM SCR内の分散効果
ソルベンシーII PIMの下で、Aegonは国単位及びリスクタイプ間の分散効果を計算する。標準式の構成要素内では、規定されたSF相関行列に従って分散化が決定される。

内部モデル内では、過去のデータと専門家の判断を利用して、全てのリスク要因に対して限界確率分布関数が適合されている。組み合わされた全てのリスク要因の全体的な同時確率分布関数は、リスク間の依存構造を考慮に入れる。この共同分布からのサンプルをシミュレートする200万シナリオからの損失は、全体的な経験的損失分布関数を当てはめるために使用され、これから99.5%のポイントを取ることによって200年に1回の損失を導き出す。

シナリオはシナリオジェネレータと依存構造を使用して生成され、市場データと専門家の判断に基づくリスクドライバー間の依存関係(相関)が定義される。各シナリオには、金利、株式リターン、死亡率などのリスク要因の値が含まれている。

合計ネットSCR(分散効果反映後)は、自己資本における200年に1回の損失の平均によって決定される。分散はリスクタイプの独立型SCRの合計と合計ネットSCRの差として定義される。

ソルベンシーII PIMの内部モデルと標準式コンポーネントの間の分散は、ソルベンシーIIの規定に従って、統合テクニック3(IT3)を使用して計算される。

Xでシェアする Facebookでシェアする

中村 亮一

研究・専門分野

公式SNSアカウント

新着レポートを随時お届け!
日々の情報収集にぜひご活用ください。

週間アクセスランキング

レポート紹介

【欧州保険会社が2022年のSFCR(ソルベンシー財務状況報告書)を公表(3)-SFCRからの具体的内容の抜粋報告(その2)-】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。

欧州保険会社が2022年のSFCR(ソルベンシー財務状況報告書)を公表(3)-SFCRからの具体的内容の抜粋報告(その2)-のレポート Topへ