2023年04月04日

欧州大手保険グループの2022年末SCR比率の状況について(2)-ソルベンシーIIに基づく数値結果報告(比率の推移分析と感応度の推移)-

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6|Zurich
Zurichは、ソルベンシーII制度の対象会社ではないが、2019年末までは、ソルベンシーIIと同等と考えられているSST(スイス・ソルベンシー・テスト)による数値と社内の経済ソルベンシー比率であるZ-ECM(Zurich Economic Capital Model)を公表してきた。ところが、2020年からはSST比率での開示を中心に据えることに変更している。Zurichによれば、SSTはZ-ECMよりも安定性をもたらし、資本は基本的には同じ方法で管理される。

ZurichのSST比率は、監督当局であるFINMAと合意した内部モデルで算出している。また、2022年末の数値は、2022年第4四半期に完了したイタリアの生命保険・年金バックブックのGama Lifeへの売却後の数値であり、これが9%ポイントンの増加に寄与したとしている。
(1) SST比率の推移
2022年末のSST比率は、2021年末の212%から、53%ポイントと大きく上昇して、265%となった。

この要因については、以下の通りとなっている。

・成長のための増分資本を差し引いた営業資本形成により+33%ポイント

・金利や市場変動等の市場の影響で+64%ポイント(うち、金利の上昇で+65%ポイント、(下表の「その他」に含まれている)信用スプレッドの拡大で▲4%ポイント等)

・自社株買い、LTIP(長期インセンティブプラン)関連の株式買戻し、配当支払い、債務発行・返済及びM&Aの資本行動で▲40%ポイント
Zurichのソルベンシー比率(SST)推移の要因
(2) 感応度の推移
SST比率の感応度については、この3年間は第3四半期末の数値を公表してきている。
これによると、過去においては金利や信用スプレッドによる感応度がかなり高いものになっていたが、2020年に比べて2021年からの数値は若干水準が低下している。
ZurichのSST比率の感応度の推移

3―まとめ

3―まとめ

以上、各社のプレス・リリース資料等に基づいて、欧州大手保険グループの2022年末におけるSCR比率の推移分析や感応度の推移の状況について報告してきた。

2016年1月1日に新たなソルベンシー制度であるソルベンシーIIがスタートして、7 年が経過した。この間、各社は自社の考え方をベースとしつつも、新たなソルベンシー制度に適切に対応すべく、各社各様の方策で各種の対応を行ってきている。

次回のレポートでは、資本管理に関係する取引等のトピックについて報告する。
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中村 亮一

研究・専門分野

(2023年04月04日「保険・年金フォーカス」)

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