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2022年09月07日
ドイツの生命保険監督を巡る動向(2)-BaFinの2021年Annual Reportより(生命保険会社の監督及び業績等の状況)-
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6―ソルベンシーIIによるSCR比率等の結果数値の概要
2021年末の報告日時点で、BaFinの監督下にある80の生命保険会社のうち79社がソルベンシーIIの対象になっていた。また、2021年末のソルベンシー資本要件(SCR)を計算する目的で、79の生命保険会社のうち、69社が標準式を採用し、10社は(部分)内部モデルを使用した。いずれの生命保険会社も会社固有のパラメータを使用しなかった。なお、2020年末のSCR計算においては、80社のうち70社が標準式を使用し、10社が(部分)内部モデルを使用していた。
79の生命保険会社のうち、52社が保険監督法第82条に従いボラティリティ調整(VA)を適用し、かつ保険監督法第352条に基づく技術的準備金の移行措置(TMTP)を適用した。この数値は2020年末の53社に比べて1社減少している。生命保険会社3社は技術的準備金の移行措置のみを適用し、11社はボラティリティ調整のみを使用した(2020年末は、それぞれ4社、10社であった)。2つの会社は、保険監督法第351条に従って、リスクフリーレートの移行措置(TMFR)、即ち移行割引曲線を、ボラティリティ調整との組み合わせで適用した(2020年末も2社だけだった)。
結果として、65の生命保険会社がボラティリティ調整を適用し、55の生命保険会社が技術的準備金の移行措置(TMTR)を、2つの生命保険会社がリスクフリーレートの移行措置(TMFR)を適用した。
なお、技術的準備金の移行措置(TMTP)及びリスクフリーレートの移行措置(TMFR)からの資本利益については2032年までに消滅することから、これらの適用無しでのソルベンシー要件の充足も求められてくることになる。因みに、2021年末において、技術的準備金の移行措置(TMTP)及びリスクフリーレートの移行措置(TMFR)を適用しないとした場合には、5社のSCR比率が100%を下回ることになっていた。
79の生命保険会社のうち、52社が保険監督法第82条に従いボラティリティ調整(VA)を適用し、かつ保険監督法第352条に基づく技術的準備金の移行措置(TMTP)を適用した。この数値は2020年末の53社に比べて1社減少している。生命保険会社3社は技術的準備金の移行措置のみを適用し、11社はボラティリティ調整のみを使用した(2020年末は、それぞれ4社、10社であった)。2つの会社は、保険監督法第351条に従って、リスクフリーレートの移行措置(TMFR)、即ち移行割引曲線を、ボラティリティ調整との組み合わせで適用した(2020年末も2社だけだった)。
結果として、65の生命保険会社がボラティリティ調整を適用し、55の生命保険会社が技術的準備金の移行措置(TMTR)を、2つの生命保険会社がリスクフリーレートの移行措置(TMFR)を適用した。
なお、技術的準備金の移行措置(TMTP)及びリスクフリーレートの移行措置(TMFR)からの資本利益については2032年までに消滅することから、これらの適用無しでのソルベンシー要件の充足も求められてくることになる。因みに、2021年末において、技術的準備金の移行措置(TMTP)及びリスクフリーレートの移行措置(TMFR)を適用しないとした場合には、5社のSCR比率が100%を下回ることになっていた。
3|改善措置
移行措置を適用し、その措置なしではSCRを十分にカバーできない会社は、保険監督法第353条第2項に従って改善計画を提出しなければならない。計画では、遅くとも2031年12月31日の移行期間末日までに、十分な自己資本を創出又はリスク・プロファイルを低減するために計画された措置を段階的に導入し、移行措置を用いずにソルベンシー資本要件を遵守することを確保しなければならない。
報告日において、23の生命保険会社(2020年は26の生命保険会社)が、移行措置なしでは適切なSCRのカバレッジを保証することができなかったため、改善計画を提出する必要があった。BaFinは、SCRが遅くとも移行期間終了後に、長期的に遵守されることを確実にするために、これらの会社に密接に関与している。関連する会社は、移行措置を適用しないで適切なSCRカバレッジを回復したとしても、当該措置によって達成された進捗状況について、年次進捗報告書において意見を述べることが求められる。
移行措置を適用し、その措置なしではSCRを十分にカバーできない会社は、保険監督法第353条第2項に従って改善計画を提出しなければならない。計画では、遅くとも2031年12月31日の移行期間末日までに、十分な自己資本を創出又はリスク・プロファイルを低減するために計画された措置を段階的に導入し、移行措置を用いずにソルベンシー資本要件を遵守することを確保しなければならない。
報告日において、23の生命保険会社(2020年は26の生命保険会社)が、移行措置なしでは適切なSCRのカバレッジを保証することができなかったため、改善計画を提出する必要があった。BaFinは、SCRが遅くとも移行期間終了後に、長期的に遵守されることを確実にするために、これらの会社に密接に関与している。関連する会社は、移行措置を適用しないで適切なSCRカバレッジを回復したとしても、当該措置によって達成された進捗状況について、年次進捗報告書において意見を述べることが求められる。
4|裁量配当の進展
殆どの生命保険会社は、低金利環境を背景に、2022年の裁量配当の水準を緩やかに引き下げた。養老保険の市場で利用可能なタリフの現在のトータルリターン、つまり現在の総収益率、すなわち保証予定利率と利差益配当率の合計は、2021年には、部門全体で平均2.0%であり、前年の2.2%から減少した。2019年は2.3%だった。
殆どの生命保険会社は、低金利環境を背景に、2022年の裁量配当の水準を緩やかに引き下げた。養老保険の市場で利用可能なタリフの現在のトータルリターン、つまり現在の総収益率、すなわち保証予定利率と利差益配当率の合計は、2021年には、部門全体で平均2.0%であり、前年の2.2%から減少した。2019年は2.3%だった。
5|追加責任準備金(ZZR)の進展
2011年以降、生命保険会社は、将来の投資収益の減少と、高額のままである保証義務に備えるために、追加責任準備金(Zinszusatzreserve:ZZR)を積み立てなければならなくなっているいる。これは、一方では将来の投資収益が減少し、他方では高い保証債務が続いていることを反映している。2021年には89億ユーロ(2020年は104億ユーロ)以上がこのために使われた。2021年末時点での累計ZZRは953億ユーロ(2020年末の累積ZZRは859億ユーロ)に達した。2021年末のZZRの算出に用いられた基準金利は1.57%(2020年末の時点で1.73 %)だった。
2011年以降、生命保険会社は、将来の投資収益の減少と、高額のままである保証義務に備えるために、追加責任準備金(Zinszusatzreserve:ZZR)を積み立てなければならなくなっているいる。これは、一方では将来の投資収益が減少し、他方では高い保証債務が続いていることを反映している。2021年には89億ユーロ(2020年は104億ユーロ)以上がこのために使われた。2021年末時点での累計ZZRは953億ユーロ(2020年末の累積ZZRは859億ユーロ)に達した。2021年末のZZRの算出に用いられた基準金利は1.57%(2020年末の時点で1.73 %)だった。
7―まとめ
以上、今回のレポートでは、BaFinの2021年Annual Reportの「Ⅲ.監督」の章の「2.保険会社及び年金基金(Pensionsfonds)」に基づいて、ドイツの生命保険会社の監督及び業績等の状況について報告してきた。
ドイツの生命保険会社は、低金利環境下で、これまでZZRの積立や新契約の保証利率の引き下げ、さらには保障性商品や固定保証利率を有さない商品へのシフトを進めることにより、健全性維持のために着実な対応を進めてきている。ただし、超低金利環境の継続により、生命保険業界を巡る状況は、引き続き楽観視できないものとなっており、今後とも注意深く監視していく必要がある状況にある。
このように日本と類似した環境下にあるドイツの生命保険会社を巡る状況に関しては、日本の生命保険業界関係者にとっても極めて関心の高い事項であることから、その監督や業績等を巡る動向については、今後とも引き続き注視していくこととしたい。
ドイツの生命保険会社は、低金利環境下で、これまでZZRの積立や新契約の保証利率の引き下げ、さらには保障性商品や固定保証利率を有さない商品へのシフトを進めることにより、健全性維持のために着実な対応を進めてきている。ただし、超低金利環境の継続により、生命保険業界を巡る状況は、引き続き楽観視できないものとなっており、今後とも注意深く監視していく必要がある状況にある。
このように日本と類似した環境下にあるドイツの生命保険会社を巡る状況に関しては、日本の生命保険業界関係者にとっても極めて関心の高い事項であることから、その監督や業績等を巡る動向については、今後とも引き続き注視していくこととしたい。
(2022年09月07日「保険・年金フォーカス」)
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中村 亮一のレポート
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