2022年06月01日

欧州大手保険Gの生命保険事業の収益構造について-2021年決算数値等に基づく結果報告-

文字サイズ

(2)保証利率の状況
Allianzの主要国における保有契約の平均保証利率の状況は、以下の図表の通りとなっている。

絶対的な保証利率の水準では、ドイツ、ベルギー、スイスが高く、イタリアがこれに続いており、フランスの保証利率が最も低いものとなっている。これは、同様の数値を公開しているAXAの状況と、AXAにおけるスイスの水準がかなり低くなっていることを除くと、各国間の相対的な大小関係のポジションはほぼ類似している。ただし、平均保証利率の絶対水準は両社でかなり異なっている。

2020年との比較では、平均保証利率が、ベルギーで0.5%、イタリアで0.3%、ドイツ、米国、スイスで0.1%低下したが、フランスでは横ばいとなっている。
生命保険事業の加重平均保証利率(国別)
(3)デュレーション・マッチングの状況
Allianz は、資産と負債のデュレーション・マッチングを進めてきており、2017年末の生命保険事業においては、資産及び負債のデュレーションは共に9.5年で一致していた。ただし。2018年末においては、経営行動によって資産のデュレーションの長期化を図った一方で、市場の動きやモデルの変更の影響を受けて、負債のデュレーションが短くなったことから、逆に資産のデュレーションが0.4 年長くなっていた。2019年は資産のデュレーションのさらなる長期化が図られるとともに、負債のデュレーションも長期化したことから、両者のギャップは逆に負債が0.2年長くなっていた。2020年は、資産及び負債のデュレ―ションがともに11年を超える数字で長期化しており、両者のギャップは負債が0.1年長くなっていた。2021年は負債のデュレ―ションの短期化により、再び資産のデュレ―ションが0.2年長くなっている。
生命保険事業における資産と負債のデュレーション・ギャップの推移
3|Generali
(1)営業利益の構造
Generaliは、生命保険事業の営業利益(operating result)の構造を地域別に開示しており、以下の図表の通りとなっている。

2020年から2021年にかけて、グループ全体では、「投資結果(Investment result)」は1,432百万ユーロから1,528百万ユーロに6.7%増加少し、「技術マージン(Technical margin)」のうちの「付加保険料&手数料5」は4,907百万ユーロから5.253百万ユーロに7.1%増加し、「技術的&その他結果(Technical & other result)」は1,318百万ユーロから1,566百万ユーロに18.8%増加した。一方で、「費用(Expenses)」は5,029百万ユーロから5,532百万ユーロに10.0%増加した。これらの結果として、営業利益は2,627百万ユーロから2,816百万ユーロに7.2%増加した。

「技術マージン」の増加はユニットリンク商品や保障商品へのシフトによる商品ミックスの改善を反映している。なお、COVID-19による影響は▲119百万ユーロ(2020年は▲63百万ユーロ)となっている。特にイタリア、フランス、米州及び南欧における保障ラインでの請求の増加による。

各国・各地域別に見てみると、欧州において、イタリアやフランスが引き続き投資結果に一定程度依存する収益構造であるのに対して、ドイツは投資結果が殆どなく、付加保険料&手数料や技術的&その他結果に依存した構造となっている。一方で、アジアは、投資結果は高くなく、ドイツほどではないが、付加保険料&手数料や技術的&その他結果に依存した構造となっている。
生命保険事業の収益構造(地域別)/生命保険事業の収益構造(主要国別)/生命保険事業の収益構造(主要国別)/
なお、付加保険料&手数料の内訳は、以下の図表の通りとなっている。
付加保険料&手数料の内訳
 
5 ここでは、「収益マージン(Margin on revenues)」及び「ユニット/インデックス・リンク手数料(Unit/indexed linked fees)」の合計を「付加保険料&手数料」としている。
(2)投資利回りと保証利率の状況
2021年末の保険負債の平均保証利率は1.15%であり、ベースは必ずしも同一ではないが2010年の2.30%からの11年間で1.15%ポイント低下している。これに対して、投資利回りは2021年に2.85%で、2010年の4.30%からの11年間で1.45%ポイント低下している。その結果として、両者の差額としてのスプレッドは2010年の2.00%から、2021年の1.70%に0.30%ポイント低下している。
生命保険事業における投資利回りと保険負債保証利率の推移
一方で、2021年の新契約の保証利率は0.06%であるのに対して、再投資リターンは1.50%となっており、両者の差額としてのスプレッドは1.44%となった。Generaliは、新契約保証利率の水準を過去から着実に低下させてきていたが、2021年は保証利率の水準が0.18%上昇している一方で、再投資利回りが0.19%増加したことから、スプレッドは0.01%ポイント上昇した。
新契約保証利率と再投資利回りの推移
なお、生命保険・金融債務の保証利率別内訳は、以下の図表の通りになっている。

着実に保証利率の低いあるいは保証利率無しの負債の割合が高まってきており、特に保証利率1%未満や保証利率無しの負債の割合がそれぞれ3割を超えてきている。
生命保険・金融債務の保証利率別内訳
(3) デュレーション・マッチングの状況
Generaliの2021年末の債券のデュレーションは10.2年となっている。固定利付資産と負債とのデュレーション・ギャップは、2020年には0.8年(負債のデュレーションが資産を0.8年上回る)だったが、2021年の数値は開示されていない。Generaliは、これまで資産のデュレーションの長期化を図ること等で、着実にデュレーション・ギャップの解消を図ってきていたが、2019年、2020年と負債のデュレーションが債券のデュレーションを上回った形になっていた。
資産と負債のデュレーション・ギャップ
(参考)Prudential
(1)営業利益の構造
Prudentialは、営業利益(operating profit)の構造は、以下の図表の通りとなっている。

2020年から2021年にかけて、グループ全体の「スプレッド収入(Spread income)」は、低金利環境下での利回り低下等により、マージンが74bpsから66bpsに低下したが、スプレッド収入は296百万ドルから5.4%増加(比較可能ベースでは2.6%増加、以下同様)して、312百万ドルとなった。

一方で、「手数料収入(Fee income)」は、282百万ドルから345百万ドルに22.3%増加(20.2%増加)し、「保険引受けマージン(Insurance margin)」が2,648百万ドルから2,897百万ドルに9.4%増加(7.7%増加)した。「収益マージン(Margin on revenues)6」は、3,007百万ドルから3,008百万ドルにほぼ横ばい(1.3%減少)だった。一方で、「費用(Expenses)」は3,137百万ドルから3,175百万ドルに1.2%増加(0.2%減少)した。これらの結果として、営業利益は3,425百万ユーロから3,753百万ユーロに9.6%増加した。
生命保険事業の営業利益の源泉の状況
 
6 主として、保険料から新契約費や管理経費をカバーするために控除される金額等
(2)保険負債のデュレーションの分布
Prudentialは、金利リスクへの対応のため、資産と負債のマッチング管理を行っているとしている。

保険負債のデュレーションの分布の状況は、以下の図表の通りとなっている。
生命保険事業の負債のデュレーション別分布
Xでシェアする Facebookでシェアする

中村 亮一

研究・専門分野

公式SNSアカウント

新着レポートを随時お届け!
日々の情報収集にぜひご活用ください。

週間アクセスランキング

レポート紹介

【欧州大手保険Gの生命保険事業の収益構造について-2021年決算数値等に基づく結果報告-】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。

欧州大手保険Gの生命保険事業の収益構造について-2021年決算数値等に基づく結果報告-のレポート Topへ