2021年04月26日

新型コロナウイルスの感染拡大が保険会社に与える影響(1)-米国大手保険G及び大手再保険Gの2020年決算発表による-

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連結会社の見通し
COVID-19パンデミックに関連する進展を引き続き注意深く監視し、それが当社の事業に与える影響を評価する。COVID-19パンデミックは、世界経済と金融市場に影響を与え続けており、世界の株式、クレジット、不動産市場にボラティリティを引き起こしている。政府や企業は、旅行の禁止と制限、検疫、ソーシャル・ディスタンス、シェルターインプレイス又は完全なロックダウン命令、ビジネスの制限とシャットダウンなど、ウイルスを封じ込めようとする多くの対策を講じてきた。一部の政府や企業は、いくつかの制限を緩和し始めている。以前に解除した制限を復活させたケースもある。それにもかかわらず、これらの措置は事業活動を混乱させ、今後も混乱させ続け、金融市場の景気減速とボラティリティをもたらし、世界中の政府と中央銀行が前例のない財政及び金融政策で対応してきた。ワクチンが利用できるようになったが、人口のかなりの割合がワクチン接種を受けるまでには、配布とアクセスに時間がかかると予想される。「—業界の動向—金融及び経済環境」を参照してください。

さらに、長期にわたる低金利又はほぼゼロ金利の環境が依然として続く可能性がある。連邦準備制度理事会の経済予測は、現在の低金利環境が2023年まで、そして潜在的にはもっと長く続くことを示唆している。当社の投資ポートフォリオは非常に分散化しており、景気後退に耐えるのに適したポジションにあると信じている。ただし、COVID-19パンデミックの市場関連の影響、及び持続的な低金利環境は、引き続き投資ポートフォリオ全体に影響を与えると予想される。市場金利が当社の業績の主要な推進力であるため、金利感応度を低下させるために当社が講じた緩和措置の説明については、「—業界動向—持続的な低金利環境の影響」を参照してください。

COVID-19パンデミックに関連するイベントは、当社の特定の事業運営、投資ポートフォリオ、デリバティブ、業績又は財政状態に悪影響を及ぼし続ける可能性がある。「リスク要因」を参照してください。当社は、リスク管理及び事業継続計画を実施し、予防措置及びその他の予防措置を講じた。これにより、これまで、重要なビジネスプロセス、顧客サービスレベル、主要ベンダーとの関係、財務報告システム、財務報告及び開示管理及び手順に対する内部統制を維持することができた。

当社は、(i)延期された利上げなどの除外の免除、保険料払込猶予期間の延長、延滞手数料の免除、及び請求書類の要件の緩和、(ii)自動車及び保険付きの歯科保険料、(iii)特定の商業、農業及び住宅ローンの支払い延期及びその他のローンの変更、及び(iv)特定の営業及び直接融資のリースコンセッション、を含む、特定の便宜をお客様、借手、及び賃借人に認め、これを付与し続ける。COVID-19パンデミック関連のモーゲージローン及びリースコンセッションに関する詳細については、連結財務諸表注記の注記8を参照してください。 「—経営成績—セグメント業績及び企業及びその他—米国」も参照してください。

2020年12月31日の時点で、持ち株会社には45億ドルの現金及び流動資産があり、これは持ち株会社の現金目標である30億ドルから40億ドルの上限を上回っている。2021年には、この持ち株会社の現金目標を維持し、この範囲の上限内又は上限を超えると予想している。

当社の資本ストレステストと流動性への長年の取り組みにより、現在の危機に耐えることができる。当社は、通常よりも高い短期流動性を維持しており、今後も維持する可能性がある。これは、再投資プロセスが長期間にわたって発生した場合、純投資収益に悪影響を与える可能性がある。当社は、重大な流動性の不足は見込んでおらず、当社の信用契約の財務制限条項を引き続き遵守できると見込んでいる。「—流動性及び資本リソース」を参照してください。当社は、資本及び流動性への影響について、会計上の見積り、資産評価、及び様々な財務シナリオを引き続き検討する。詳細については、「—投資—現在の環境」及び「リスク要因」を参照してください。

(i)2020年12月31日現在の0.91%及び2021年12月31日現在の1.12%の10年米国債レートを含む2020年12月31日現在の観察可能なフォワードイールドカーブに従った金利、及び(ii)2021年通年のS&P 500株式指数の1桁台半ばの増加、を仮定して、2020年と2021年の2年間の調整後利益に対するフリーキャッシュフローの平均年率が65%から75%になると予想している。さらに、当社は2020年から2024年までの期間に、約200億ドルのフリーキャッシュフローを生み出す軌道に乗っている。

当社は、不況のない市況を想定して、短期的に12%から14%の外貨換算調整(「FCTA」)以外のその他の包括利益累計額(「AOCI」)を除いて、調整後株主資本利益率を引き続き目標としている。ただし、(i)COVID-19パンデミック及びその他のイベントの影響の可能性、(ii)2021年第2四半期に処分を終了する予定であるため、調整後収益からのMetLife P&Cの除外、を考慮して、さらに(iii)a)金利は、上記の段落に記載されている2021年通年にわたる10年間の米国債レートの更新された仮定を含む、2020年12月31日現在の観察可能なフォワードイールドカーブに従う、(b)2021年通年のS&P500株式指数の1桁台半ばの上昇、及び(c)2021年のプラスの2桁のプライベートエクイティリターンを仮定すると、2021年の目標範囲の下限を下回る可能性がある。

当社は、直接経費及び12.3%未満の年金リスク移転に関連する注目すべき項目の合計を除いて、直接経費率の達成に全力で取り組んでいる。

直接経費率が低いMetLife P&Cの処分が保留されているため、2021年にはこの比率に圧力がかかると予想されるが、引き続き経費規律を行使し、2022年には12.3%を下回る予定である。

さらに、2019年12月の投資家の日に導入されたネクストホライズン戦略にも引き続き全力で取り組んでいる。

当社の見通しは、COVID-19パンデミックによってもたらされるような既知及び未知のリスクやその他の不確実性の影響を受ける可能性のある将来の経済及び事業状況に関する当社の仮定の正確さに依存している。COVID-19パンデミックの進化する非常に不確実な性質及びその他の要因により、私たちは継続的に私たちの仮定を見直し、緩和計画を実施し、予防策を講じる。COVID-19パンデミックの影響、それに対応するために取られた努力の効果と有効性、経済状況、規制の変更、及びその他のイベント、及びこれらのイベントが当社に与える影響、事業運営、投資ポートフォリオ、デリバティブ、業績及び財政状態に関する詳細情報を入手した時点で、見通しを修正する可能性がある。

3|AIG
AIGは、その2020年の決算発表5において、COVID-19 の影響について、Brian Duperreault CEOは、以下のように述べている。

「AIGの第4四半期及び2020年通年の業績は、長期的で持続可能かつ収益性の高い成長にAIGを位置付けるために私たちが行っている継続的な進歩を示している。私たちはCOVID-19と自然災害の影響を効果的に管理しており、前例のない不確実性のこの環境で十分な資本を維持している。」

また、プレゼンテーション資料6の中で、以下のように述べている。

・COVID-19の死亡率とベーススプレッドの圧縮にもかかわらず、35億ドルの生命保険及び退職のAPTI(調整済税引前利益)は、強力な株式市場のパフォーマンスと、より高いコール及び入札収入に牽引されている。

・損害保険における24億ドルのCATs((再保険控除後の)カタストロフィ損失)。これには、暴風雨や雹嵐、山火事、市民不安などの事象による13億ドルの非COVID-19 CATs、及び主として商業用不動産、Validus Re、コンティンジェンシー及び旅行における11億ドルのCOVID-19 CATsが含まれる。

より、具体的には、繰り返しになるが、以下のように記述されている。

・損害保険APTIは、主に次の理由により、2019年から16億ドル減少した。
11億ドルのCOVID-19 CATs を含むCATs の12億ドルの増加
‒ NII(ネット投資収入)、APTIベースの5億ドルの減少
‒ 2019年と比較して2020年のより低い有利なPYD(再保険控除後の昨年進展)を反映して、有利なPYD比率が1.0ポイント減少
‒調整後のAYCR(事故年度コンバインドレシオ)での1.9ポイントの改善により部分的に相殺

・生命保険及び退職APTIはほぼ横ばい。結果は、COVID-19の死亡率、ベーススプレッドの圧縮、FVO債券収入の減少の影響を反映しているが、プライベート・エクイティのリターンの増加と、金利の低下と信用スプレッドの縮小による好影響により、コール収入と入札収入が増加している。

さらに、プレゼンテーション資料6においては、事業部門別や商品ライン別にCOVID-19の影響についての説明が行われているが、ここでは報告を省略する。  

3―大手再保険グループの公表内容

3―大手再保険グループの公表内容

ここでは、大手再保険グループから、Munich Re(ミュンヘン再保険)とSwiss Re(スイス再保険)の状況について、各社のプレスリリース資料等から抜粋して報告する。なお、抜粋箇所における下線付与は筆者による。
1|Munich Re
Munich Reは、その2020年の決算発表8において、COVID-19の影響について、Joachim Wenning会長は、「COVID-19によってもたらされた途方もない挑戦にもかかわらず、Munich Reは明確な利益で2020年を締めくくった–そして私たちの配当は信頼できるままである。2021年には、パンデミック前に想定していた利益目標を達成できると見込んでいる。」と述べている。

また、「Munich Reは、2020年に1,211百万ユーロ(2019年は、2,707百万ユーロ、以下同様)、第4四半期に212百万ユーロ(217百万ユーロ)の利益を生み出した。2020年は、COVID-19に関連した高い損失によって特徴づけられた。再保険では、合計34億ユーロのパンデミック関連の損失が計上され、そのうち37000万ユーロは生命及び医療の再保険に起因し、30億ユーロをわずかに超える額は損害保険に起因していた。ERGOでは、COVID-19による結果への悪影響は合計6,400万ユーロだった。上記の損失を調整すると、当グループは2020年3月に撤回された、当初想定されていた2020年の利益目標である28億ユーロを達成した。」と述べている。

事業部門別には、以下の通りと報告されている。
(1)再保険
それぞれが1,000万ユーロを超える大規模損失は、通年で合計4,689百万ユーロ(3,124百万ユーロ)、第4四半期で1,191百万ユーロ(1,462百万ユーロ)だった。これらの数値には、前年度からの大規模損失の決済による利益と損失が含まれている。大規模損失支出は、正味収入保険料の20.8%(15.2%)に相当し、長期平均の12%を大幅に上回っている。これは主に、コロナウイルスのパンデミックに関連する大規模損失に起因していた。これに関連して、大規模イベントのキャンセル又は延期に関連して最も重大な損失が発生した。小規模ではあるが、事業の中断を含む、他の損害保険の再保険にも損失があった。これら及びその他の人為的な大規模損失は、合計でかなりの3,784百万ユーロ(1,071百万ユーロ)になった。

(2)ERGO
Munich Reは、COVID-19に起因する負担にもかかわらず、2020年にERGO事業分野で517百万ユーロ(44百万ユーロ)の利益を生み出し、第4四半期には136百万ユーロ(11百万ユーロ)の利益を生み出した。これは、ERGOが戦略プログラムを無事に完了し、2020年の利益ガイダンスである530百万ユーロをほぼ達成したことを意味している。

ERGO損害保険ドイツセグメントは、主に強力な保険料の伸びと優れた技術的成果により、157百万ユーロ(148百万ユーロ)の利益を生み出した。COVID-19の影響は、主要な損失の減少によって緩和された。ERGO 生命保険&医療ドイツは、130百万ユーロ(187百万ユーロ)の結果を報告した。この減少は主に、健康分野への投資結果の減少と旅行保険へのCOVID-19の影響が原因で発生した。

また、今後の見通しにおけるCOVID-19の影響に関しては、「グループは、COVID-19による財務上の影響は、2020年よりもかなり小さいと予想している。」と述べている。具体的には、「損害保険再保険のコンバインドレシオは、約96%(COVIDによる負担なしで95%)になると予測されている。」、「ERGOは、損害保険ドイツセグメントで92%(COVID-19の支出なしで91%)」と述べている。
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中村 亮一

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