2020年10月09日

ニッセイ基礎研シンポジウム「『健康な社会』実現のために企業にできること」

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2020年10月9日「「健康な社会」実現のために企業にできること」をテーマにニッセイ基礎研シンポジウムを開催しました。

冒頭に、ニッセイ基礎研究所 三原主任研究員より、シンポジウム全体の流れと議論の背景についてご説明いたしました。



「健康な社会」実現のために企業にできること
 
三原 岳 ニッセイ基礎研究所 主任研究員

※ 当日資料はこちら

1――今日の流れと注意事項

皆さん、こんにちは。ニッセイ基礎研究所の三原です。今日は、先ほど社長の手島から申し上げたとおり、健康な社会づくりに向けて企業にできることというテーマで議論を進めていきたいと思います。
(以下スライド併用)
 
今日は近藤克則先生、それから愛知県豊明市の松本さんをお招きして、私の3人で議論を進めていきます。今日の流れとしては、私の方から10分ぐらい問題提起という形で話させていただきまして、それから近藤先生の基調講演で40分ぐらい、松本さんの事例紹介を挟み、4時40分ぐらいまで3人で議論していきたいと思っています。

今日はウェブなので、質問があれば、Q&Aというところに書いてもらえればと思います。コメント、質問、何でも構いませんので書いていただければ適時対応させていただきたいと思います。よろしくお願いします。

2――企業の健康づくりへの関わり

こういう医療や健康に関するシンポジウムに私も時々顔を出すのですが、大体テーマとしてよく出てくるのが医療費の適正化をどうするかとか、保険料の徴収をどうするかとか、あるいはメタボ健診の受診率をどう上げるかという議論です。それはもちろん大事なことなのですが、今日はその議論はあまりしません。
 
最初の出発点としてこの絵をご紹介したいと思います。これは簡単に、企業がどういう形で社会に関わり、健康づくりに関わるかという絵なのですが、真ん中がA社。皆さん、自分の会社がA社だと思ってください。最初が、企業経営の側面として健康づくりに関わっていくと書いています。これはどういうことかというと、皆さんの会社も健康経営を掲げられていると思うのですが、これもどうしても医療費適正化の議論につながりがちだと思います。

しかし、健康経営は英語で何というかご存じですか。Health and Productivity Managementといいます。Productivity(生産性)なのですよね。生産性とは何だと思われるかもしれませんが、これは具体的な事例を考えればすっと考えられると思うのです。

例えばある従業員がメンタルになって会社を辞めてしまったとか、会社に来ているのだけどちょっとパフォーマンスが低いという状態は会社にとって損失ですよね。生産性が下がることになります。あるいは、その人が辞めてしまって、新しい人を補充しなければいけなくなったら一からOJTをやらなければいけませんから、生産性が下がりますよね。だから最近、健康経営と働き方改革がリンクする動きになっているのは、このProductivityに着目しているからなのです。つまり、従業員の健康をどうするかということが企業経営で非常に大事になってきているというのがまず一つ目です。

二つ目に、これは皆さんの会社で例えば商品やサービスを売っていると思うのですが、ここに健康が入ってきていませんかということです。分かりやすい例でいうと、健康食品を売るような話だと思います。

3番目が左下ですが、地域活動の側面です。企業は法人市民税を払って、それから水道を使い、道路を使い、市民を従業員に雇っているわけですから、住民の側面があるわけです。だから、地域の活動に住民の一人として関わっていくという側面があると思います。

この三つを頭の片隅に置いておいていただいて、今日の議論を聞いていただければなと思います。
 
企業の人とたまに話をすると、よくこんな話を聞きます。健康経営でいうと、「一応掲げてはいるのだけど、無関心層にはなかなか広がっていかないのだよね」とか、あるいは「CSRやSDGsを掲げたはいいけど、自治体と協力関係を結ぶ包括協定を結んだのだけど、何をやっていいか分からないよね」という声をよく聞きます。皆さんの会社はどうでしょうか。あるいは、会社は営利法人ですので、株式会社であれば株主に費用対効果を説明しなければいけないわけですが、その辺はどうでしょうか。このあたりについてちょっと問題解決の糸口を探っていくのが今回のシンポジウムとご理解ください。

3――疾病構造と「健康」観の変化

私の方からもう一つご説明したいのは、疾病構造が大きく変わってきたということです。この図は一番上が1950年、戦争が終わって5年後の日本人の亡くなり方です。結核が一番多かったわけです。でも、結核は50年代の後半から死の病ではなくなりました。70年代、80年代からがんが上がってくるわけです。今、トップはがんです。この結果、健康と不健康の線引きが不明確になったわけです。

これも何を言っているのかと思われるかもしれませんが、具体的なことを考えていただきたいのです。皆さんの周りで、例えばがんで入院した方はいらっしゃいますかね。多分、身の回りでいらっしゃるのではないかと思うのですが、がんはすぐに死を意味する病気ではなくなりましたので、ある程度治ってくる、あるいはコントロールできる状態で戻ってきたときに、その人が例えば状態が良くなって、会社でパフォーマンスがすごく良くなった。つまり、がんになる前と同じぐらいにばりばり働いている状態の人は不健康ですか。実は、不健康とはいえないかもしれないのですよね。

私は病気ではないわけですが、病気のない私がだらだら過ごしているよりも、実はその人の方が健康かもしれないわけです。言い換えると、不健康と健康の線引きは不明確になったわけです。結核の時代は、結核になったら隔離するわけですから、健康と不健康の線引きは明確だったのですが、疾病構造が慢性疾患に変わった結果、健康と不健康の線引きが不明確になった。そういう時代にわれわれは来ているのだということです。新型コロナウイルスで若干先祖返りしている面はあるのですが、長期的なトレンドは変わりません。その中でどうやって会社が健康づくりに関わってくるかということが問われてくるのだと思います。

4――健康の社会的決定要因とは何か

この後はお二方の講演の少し前さばき的な話になるのですが、その中で新しい健康の概念として「健康の社会的決定要因」(Social Determinants of Health)という言葉が出てきています。近藤先生が日本のこの分野の第一人者なので、詳細は近藤先生にご説明いただいてご理解いただきたいのですが、要は健康というのは本人の生物学的な要因だけではなくて、心理的・社会的な要因が絡むということです。

これも何を言っているのかと思われるかもしれませんが、少し事例を考えると、例えば会社でストレスでメンタルの問題を抱えた方がいたとします。その人は病院に行きますよね。睡眠薬を処方されます。その人が睡眠薬を飲みます。不眠症は治るかもしれませんが、不眠症を生み出しているストレスは解消しますか。解消しないですよね。そうすると、その人のストレスの原因、例えば会社で上司とうまくいかないとか、地域のPTAでトラブってしまっているとか、家族で子育てと仕事の両立ができていないとか、そういった要因に川上へ川上へとさかのぼっていかなければいけないわけです。川上へ川上へとさかのぼっていくことによって不健康を生み出す環境や要因を取り除いていく、これが社会的決定要因です。これを近藤先生から詳しくご紹介いただきたいと思っています。

5――医学モデルから生活モデルへの転換

この後もう一つ、生活モデルという考え方が出てきています。これも疾病構造の変化なのですが、「医学モデルから生活モデルへ」などといわれます。これも具体的な事例を考えたいのですが、例えばがんになったとします。病院で手術を受けます。これは左側の医学モデルです。手術を受けて帰ってきます。帰ってきた後、例えば地域でも会社でもどこでもいいのですが、その人が暮らしていく上で医療の役割は何になりますか。実はウエートが小さくなるのですよね。

もちろん再入院や検査などで、医療のお世話になるのですが、むしろ例えば会社であれば、上司がその人の状態をきちんと理解して仕事をちゃんと与えるとか、人事課が人事面で配慮するとか、あるいはみんなでワークシェアリングをするとか、検査の日は残業を外すとか、そういうことが必要になってくるわけです。だから、生活モデルに「カンファレンス」「多職種によるチーム」と書いていますが、これは要するに周りの環境、周りの配慮が必要になってくるということなのです。関係者の連携が大事になってくるということです。これがコミュニティであれば、高齢者でがんの人が帰ってきて地域に戻ったら、医者だけではなくて看護師とか、ケアマネジャー(介護支援専門員)とか、介護職とか、いろいろな人が関わっていく。その関係者の連携が大事になってくるということです。

その関係者の一つとして、実は豊明市の取り組みには民間企業が入っています。その中で高齢者の健康づくり、介護予防をやっています。なので今日は、「健康の社会的決定要因」と「生活モデル」という二つの言葉が非常に大事になってきますので、ちょっと頭の片隅に置いていただいて、近藤先生の基調講演、それから松本さんの事例紹介を聴いていただければと思います。

雑ぱくでしたが、以上です。ご清聴ありがとうございました。それでは、近藤先生、お願いします。
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