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健康経営優良法人2021認定に向けた申請スケジュール、認定要件-新型コロナウイルス感染症を踏まえた救済措置等も
小林 直人
1――はじめに
本稿では健康経営優良法人2021 認定に向けた申請のスケジュール、認定要件について、経済産業省のホームページ2をもとに紹介する。
1 拙稿「健康経営と『健康経営優良法人2020』認定法人」2020 年7 月10日(https://www.nli-research.co.jp/files/topics/64921_ext_18_0.pdf?site=nli)。
2 経済産業省「健康経営優良法人の申請について」(https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/kenkoukeiei_yuryouhouzin_shinsei.html, 2020 年8 月13日最終閲覧)。
2――認定に向けた申請スケジュール
3 経済産業省「第24回健康投資WG事務局説明資料②(今年度の健康経営顕彰制度について)」2頁(2020年7月16日)では、新型コロナウイルス感染症の流行に伴う、健康経営顕彰制度への影響と対応方針案として、スケジュールについて「健康経営優良法人(中小規模法人部門)については申請期間延長の措置をとりたい。」とされている。(https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/jisedai_health/kenko_toshi/pdf/024_10_00.pdf, 2020 年8 月13日最終閲覧)。
3――認定要件
健康経営優良法人2021の認定要件については、経済産業省が事務局を務める次世代ヘルスケア産業協議会健康投資WGの議論を踏まえ、2020年7月に決定された。
健康経営優良法人2021の認定要件は、大規模法人部門、中小規模法人部門ともに、大項目、中項目、小項目に分けられて構成されている。
大項目は、大規模法人部門、中小規模法人部門ともに、「1.経営理念(経営者の自覚)」、「2.組織体制」、「3.制度・施策実行」、「4.評価・改善」、「5.法令遵守・リスクマネジメント(自主申告)」の5項目となっている。このうち、「3.制度・施策実行」は中項目として、大規模法人部門では「従業員の健康課題の把握と必要な対策の検討」、「健康経営の実践に向けた基礎的な土台づくりとワークエンゲイジメント」、「従業員の心と身体の健康づくりに向けた具体的対策」、「取組の質の確保」の4項目、中小規模法人部門では「従業員の健康課題の把握と必要な対策の検討」、「健康経営の実践に向けた基礎的な土台づくりとワークエンゲイジメント」、「従業員の心と身体の健康づくりに向けた具体的対策」の3項目に分けられている(大規模法人部門については図表2、中小規模法人部門については図表3参照。)。
健康経営優良法人2020の認定要件(以下、「2020認定要件」。)と比較すると、大規模法人部門では2020認定要件の評価項目「健康増進・過重労働防止に向けた具体的目標(計画)の設定」が、健康経営優良法人2021の認定要件(以下、「2021認定要件」。)では、「健康課題に基づいた具体的目標の設定」に変更されて必須の認定要件とされている。
中小規模法人部門では、2020認定要件の評価項目「健康増進・過重労働防止に向けた具体的目標(計画)の設定」が、2021認定要件では、「健康課題に基づいた具体的目標の設定」に変更されて必須の認定要件とされ、また、2020認定要件では、「4.評価・改善」(大項目・中項目)の「評価項目」であった「(求めに応じて)40歳以上の従業員の健診データの提供」が、2021認定要件では「2.組織体制」(大項目・中項目・小項目)の「評価項目」に移動し、2021認定要件の「4.評価・改善」(大項目・中項目・小項目)の評価項目は「健康経営の評価・改善に関する取り組み」とされている。
健康経営優良法人2022に向けた認定要件の検討も進められている4。
健康経営優良法人2022(大規模法人部門)では、「3.制度・施策実行」の新たな評価項目に「従業員の喫煙対策」を追加することを検討するとされている。
健康経営優良法人2022(中小規模法人部門)では、「3.制度・施策実行」の新たな評価項目に「従業員の喫煙対策」を追加、「①定期健診受診率(実質100%)」、「②受診勧奨の取り組み」、「③50人未満の事業場におけるストレスチェックの実施」の3項目のうち今回は少なくとも1項目とされている選択項目の最低選択数の見直し(3項目中2項目への変更)、「⑮健康経営の評価・改善に関する取り組み」の必須化の3点の変更を検討していくとされている。
4 経済産業省「第24回健康投資WG事務局説明資料②(今年度の健康経営顕彰制度について)」9頁-11頁(2020年7月16日) (https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/jisedai_health/kenko_toshi/pdf/024_10_00.pdf, 2020 年8 月13日最終閲覧)、経済産業省「健康経営銘柄2021選定基準及び健康経営優良法人2021(大規模法人部門)認定要件」(https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/downloadfiles/kenkokeieiyuryohojin2021_daikibo_ninteiyouken.pdf, 2020 年8 月13日最終閲覧)、経済産業省「健康経営優良法人2021(中小規模法人部門)認定要件」(https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/downloadfiles/kenkokeieiyuryohojin2021_chushokibo_ninteiyouken.pdf, 2020 年8 月13日最終閲覧)。
4――新型コロナウイルス感染症の流行に伴う対応(配慮・救済措置、取り組み内容の評価等)
健康経営優良法人2021の審査対象期間は2019年4月1日から2020年8月下旬以降の申請日までであり、審査対象期間中に新型コロナウイルスの感染流行期間が含まれる。そのため、新型コロナウイルス感染症の流行に伴う、健康経営顕彰制度への影響と対応方針として以下の通り示されている5。
2019年4月1日から2020年2月頃までについては「新型コロナウイルスによる企業活動への影響がそこまで大きくないと考えられる期間」として、「取組を継続していたが、一時的に新型コロナウイルスの影響で実施が出来なくなった場合には、継続していたと見なすこととする。」としている。そして、2020年2月頃から申請日までは、「新型コロナウイルスによる企業活動への影響が大きい期間」として、「新型コロナウイルス感染の影響で実施が出来なかった取組については、適宜配慮・救済措置を行う。」とし、具体的には以下の救済措置・対応が示されている。
「健診/検診/ストレスチェック/保健指導に関する項目」については、「経営者/従業員の中に、新型コロナウイルスの影響が出始めた時期(2020年2月頃)に受診/指導予定であり未実施・期間内に実施できなかった者がいる等」を考えられる影響としてあげ、「『実施予定だった』場合は項目適合とする。」こと、「定期健康診断では、新型コロナウイルスの影響で受診ができなかった従業員は評価対象から外す。(ただし厚労省の通知に従い、可能な限り早期に実施することを誓約させる)」ことが具体的対応方法として示されている。
「年に数回しか行わないイベント等を評価対象としている項目」については、「新型コロナウイルスの影響が出始めた時期(2020年2月頃)に予定していたイベント等が実施できなくなった等」を考えられる影響としてあげ、「新型コロナウイルスの影響によりイベント等を行うことができなかった場合、『取組を予定していたが実施できなかったため、現在、取り組みの実施を予定・計画をしている』ことをもって項目適合とする。(実施予定であったことが確認できる資料は、事務局の求めに応じて提出することを誓約させる)」ことが具体的対応方法として示されている。
「定期的に施策を行う事が求められている項目」については、考えられる影響として、「新型コロナウイルスの影響が出始めた頃(2020年2月頃)までは、定期的(1か月に1回等)に施策を行っていたが、新型コロナウイルスの影響により施策を行えなくなった。等」をあげ、「『新型コロナウイルスの影響以前は、定期的に取り組んでいた』ことをもって項目適合とする。(実施予定であったことが確認できる資料は、事務局の求めに応じて提出することを誓約させる)」ことが具体的対応方法として示されている。
一方、「制度・体制・設備の整備が求められている項目」については、考えられる影響として、「新型コロナウイルスの影響により、所属している協会けんぽが「健康宣言」を実施していない。」こと、「計画していた体制整備/設備投資が出来ない等」をあげているが、「そもそも健康経営優良法人の基準にまだ到達していない法人であるため、特例扱いはできないのではないか」として、「新型コロナウイルスを踏まえての考慮は行わない。」としている。
5 経済産業省「健康経営優良法人の申請について(https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/kenkoukeiei_yuryouhouzin_shinsei.html, 2020 年8 月13日最終閲覧)、経済産業省「第24回健康投資WG事務局説明資料②(今年度の健康経営顕彰制度について)」(2020年7月16日) (https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/jisedai_health/kenko_toshi/pdf/024_10_00.pdf, 2020 年8 月13日最終閲覧)。
取り組み内容の評価についても、新型コロナウイルス感染症の流行による影響が示されている。
「新型コロナウイルス感染症の流行により、各社様々な対応策を講じていることから、評価を行うべきと考えられる項目がある。」としている。
健康経営優良法人2021(大規模法人部門)については、「新型コロナウイルス感染症の流行において具体的な施策をとったこと自体ではなく、企業として組織体制を整え、計画的に取り組んだことを、優良な取組として評価したい。」との考えを示して、「感染症流行を受けた組織体制や、感染症予防に対応したBCPの取り組み状況をもって、評価項目「従業員の感染症予防に向けた取り組み」を適合とする。」として「評価項目『従業員の感染症予防に向けた取り組み』における従来の選択肢はそのままとして評価対象とする。」としている。
健康経営優良法人2021(中小規模法人部門)については、「中小規模法人部門では、これまで個別具体的な施策の実施をもって評価項目「従業員の感染予防に向けた取り組み」を適合としてきたことに鑑み、新型コロナウイルス感染症への「具体的な施策」をとったこと自体も、優良な取組として評価したい。」との考えを示して、「具体的には、新型コロナウイルスへの具体的な施策ができていれば、評価項目「従業員の感染症予防に向けた取り組み」を適合」とし、「感染症流行を受けた組織体制や、感染症予防に対応したBCPの取り組み状況についても、評価項目『従業員の感染症予防に向けた取り組み』の評価項目とする。」としている。
なお、在宅勤務の対応状況等については、大規模法人部門、中小規模法人部門の両部門とも、アンケート項目として集計するとしている。
これまでは、健康経営優良法人(大規模法人部門)では、連名申請する保険者が後期高齢者支援金の加算対象となっていない(特定健診・特定保健指導実施率で判断)ことが求められていた。この点について、新型コロナウイルス感染症の流行により保険者が特定健診等を実施できていない状況等を踏まえ、健康経営優良法人2021(大規模法人部門)では、連名申請する保険者が後期高齢者支援金の加算対象(2019年度の特定健診・特定保健指導実施率で判断)であるかを考慮せず、認定審査を行うとされている。
5――中小規模法人部門における新たな冠の認定―健康経営優良法人2021(中小規模法人部門(ブライト500))
正式名称は「健康経営優良法人2021(中小規模法人部門(ブライト500))」である。
6――おわりに
また、健康経営優良法人2021認定に向けた具体的な申請方法等の詳細については、追って決定次第、受付開始時までに経済産業省のホームページで案内するとされている。
健康経営®6に取り組む法人が、今後も引き続き増えていくこととともに、健康経営の取り組みがより進化していくことを期待したい。
6 「健康経営®」は、NPO法人健康経営研究会の登録商標です。
(2020年08月18日「基礎研レター」)
小林 直人
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