2020年05月07日

EIOPAがソルベンシーIIの2020年レビューに関する助言のためのタイムテーブルを変更-新型コロナの影響で6月末から12月末へ-

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1―はじめに

ソルベンシーIIに関しては、レビューの第2段階として、ソルベンシーIIの枠組みの見直しが2021年までに行われる予定となっており、その検討が既にスタートしている。欧州委員会は、EIOPA(欧州保険年金監督局)に対して、2019年2月11日に指令2009/138/EC2(ソルベンシーII)のレビューに関する助言要請1を行った。これを受けて、EIOPAが検討を進めていたが、2019年10月15日に、ソルベンシーIIの2020年レビューにおける技術的助言に関するコンサルテーション・ペーパー(以下、「今回の CP」という)を公表2した。

今回のCPに対しての関係者からのフィードバックの締切りは2020年1月15日となっていたが、 例えば、欧州の保険業界団体であるInsurance Europe(保険ヨーロッパ)はこれに関連して、欧州委員会に意見提出を行い、さらには、欧州保険会社のCFO 及びCRO の集まりであるCFO Forum 及びCRO Forumと共同で、1月15日に今回のCPに対する意見を提出3している。

元々のタイムテーブルでは、EIOPA は、今回のCPに対するこうした利害関係者からの意見等も踏まえて、再検討を行い、6月30日までに欧州委員会に助言を行う予定となっていた。  

2―EIOPAによるタイムテーブルの変更

2―EIOPAによるタイムテーブルの変更

ところが、EIOPAは、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う影響を考慮して、4月30日に、「ソルベンシーIIレビューに関する助言のためのタイムテーブルを2020年12月までに変更する」と公表4した。この動きは既に一連の動向の中で想定されていたものではあったが、この段階で6か月の延期が公表されることとなった。

具体的には、EIOPAの公表内容によれば、「EIOPAは、欧州委員会と緊密に連携して、ソルベンシーIIレビューに対する現在のCovid-19状況の影響を評価することの重要性を考慮して、2020年12月末に欧州委員会に助言を提供することを決定した。」と述べた。

EIOPA は、2020年3月17日に、Covid-19のパンデミックに対応して運用上の救済を提供するために、2020ソルベンシーIIレビューの全体的な影響評価の情報要求の期限を2か月延長して、2020年6月1日とすると公表5していた。

新しいタイミングにより、パンデミックが金融市場及び保険事業に与える影響を考慮して、全体的な影響評価を更新し、その影響をEIOPAの助言に反映させることができることになるとしている。新しいタイミングは、ソルベンシーII指令をレビューする機会を使用する必要性と、助言が最近の進展を反映する必要性との間のバランスをとっていると述べた。

全体的な影響評価を更新するために、EIOPAは、進行中の情報要求を2020年6月30日の参照日付のデータ収集で補足する。その情報要求は、2020年7月から9月中旬に実行される。それは、進行中の情報要求の対象となるそれらのサブサンプルであり、その要求よりも焦点が絞られることになる。

EIOPAは危機とその影響を引き続き監視し、透明なプロセスを確保するために全ての利害関係者と協力すると述べている。  

3―今回のタイムテーブル変更の影響

3―今回のタイムテーブル変更の影響

今回のスケジュールの延期は、まさに新型コロナウイルスの感染拡大というパンデミックによるものであり、2008年の金融危機とは性格が異なるものとはいえ、全体的な影響評価の結果等によっては、これがソルベンシーIIの改革内容に大きな影響を与える可能性もあることになる。

具体的には、各種のリスク評価や適格資本の在り方といった定量的評価だけでなく、定性的評価の在り方等のソルベンシーIIの枠組み全体に影響を与えることも考えられることになる。

さらには、元々のスケジュールでは、欧州委員会は欧州議会等での承認を得るために、2020年末までに今回のレビューの内容を共有することが予定されていたが、これが少なくとも半年は遅れる可能性があることになってくる。

これに伴い、今回のソルベンシーIIの改革実施は早くとも2023年になるのではないかと想定されることになる。
 

4―まとめ

4―まとめ

以上、今回のレポートでは、EIOPAによるソルベンシーIIの2020年のレビューに関する助言のためのタイムテーブルの変更について報告した。

欧州委員会宛の2020 年レビューに関する助言内容がどのようなものになるのか、それを踏まえて 欧州委員会や保険業界が今後どのように対応していくことになるのか等については、それが今後の IAIS における ICS への議論に影響を与える可能性もある。

ICSの検討スケジュール自体も新型コロナウイルスの影響を受けることが考えられるが、いずれにしても、今回のソルベンシーIIのレビューを巡る動き及びそれによる改革の内容は、日本の保険業界関係者にとっても大変関心が高く興味深い事項であることから、これらの動きについて引き続き注視していくこととしたい。
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中村 亮一

研究・専門分野

(2020年05月07日「保険・年金フォーカス」)

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