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【インドネシアGDP】4-6月期は前年同期比5.05%増~成長率は5%を維持するも、政局不透明感に在庫積み上がりによる生産抑制が重なり、2年ぶりの低水準に
経済研究部 准主任研究員 斉藤 誠
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4-6月期の実質GDPを需要項目別に見ると、総固定資本形成の伸び悩みと在庫の積み上がりの影響が成長率低下に繋がった(図表1)。
民間消費(対家計民間非営利団体含む)は前年同期比5.39%増(前期:同5.27%増)と若干上昇した。費目別に見ると、輸送・通信(同4.67%増)が鈍化したものの、食料・飲料(同5.39%増)やホテル・レストラン(同5.82%増)、住宅設備(同5.04%増)などが幅広く上昇した。
政府消費は前年同期比8.23%増となり、前期の同5.21%増から上昇した。
総固定資本形成は前年同期比5.01%増と、前期の同5.03%増から僅かに低下した。機械・設備(同9.87%増)が持ち直したものの、建設投資(同5.46%)が伸び悩み、自動車(同0.04%減)が低迷した。また在庫変動の成長率寄与度は▲0.85%ポイントとなり、前期の▲0.29%からマイナス幅が拡大した。
純輸出は成長率寄与度が+0.98%ポイントとなり、前期の+1.13%ポイントから縮小した。まず輸出は前年同期比2.06%減(前期:同1.68%減)となり、2四半期連続で減少した。輸出の内訳を見ると、財輸出(同1.70%減)が石油・ガス輸出を中心に低迷する一方、サービス輸出(同0.27%増)が若干プラス圏に浮上した。また輸入も同6.73%減(前期:同7.36%減)となり、2四半期連続のマイナスとなった。
成長を牽引する第三次産業は前年同期比6.47%増(前期:同6.56%増)と若干低下した。内訳を見ると、情報・通信が同9.60%増(前期:同9.06%増)、運輸・倉庫が同5.78%増(同5.25%増)、不動産が同5.74%増(前期:同5.46%増)、行政・国防が同8.82%増(前期:同6.40%増)と上昇した一方、構成割合の大きい卸売・小売が同4.63%増(前期:同5.27%増)、ホテル・レストランが同5.52%増(前期:同5.82%増)、ビジネスサービスが同9.94%増(前期:同10.36%増)、金融・保険が同4.55%増(前期:同7.32%増)と低下するなど、明暗が分かれた。
第二次産業は前年同期比3.22%増(前期:同4.09%増)と低下した。内訳を見ると、構成割合の大きい製造業が同3.54%増(前期:同3.86%増)、鉱業が同0.71%減(前期:同2.32%増)、建設業が同5.69%増(前期:同5.91%増)と、それぞれ低下した。
一方、第一次産業は前年同期比5.33%増(前期:同1.17%増)となり、前期に急減した食用作物(同5.13%増)を中心にが大きく上昇した。
1 8月5日、インドネシア統計局(BPS)が2019年4-6月期の国内総生産(GDP)を公表した。
2 Bloomberg調査
4-6月期GDPの評価と先行きのポイント
4-6月期は4月の大統領選挙・総選挙実施に伴う関連支出が拡大した。政府消費(同+8.23%)が上昇すると共に、政党による広告・宣伝活動が含まれる対家計民間非営利団体の消費(同15.27%)が3四半期連続の二桁増を記録した。民間消費(対家計民間非営利団体除く)も小幅に上昇したが、4月17日に実施された大統領選挙が結果発表までに約1ヵ月かかり、選挙結果を様子見していた層の購買意欲の高まりが6月まで先延ばしとなったため、消費回復は限定的だった。また同様の理由で、総固定資本形成も5%で底ばいとなった(図表3)。
インドネシア経済の先行きはどうなるだろうか。足元では世界経済の減速や米中貿易戦争、そしてコモディティ価格の下落がインドネシアの輸出や鉱工業に打撃を与えており、2019年の成長率が政府目標の5.3%程度まで加速するとは見込みにくい。しかし、景気は4-6月期で底打ちとなり、今後は内需を中心に緩やかな回復基調で推移するだろう。今回ジョコ大統領が再選したことにより現行の緩やかな経済改革路線が継続されることになったため、今後はインフラ整備が再び加速して海外投資も回復へ向かうだろう。また選挙を前に購入を控えた消費者の購買意欲も回復するほか、民間投資も活発化すると予想する。実際、乗用車と商用車の販売台数を見ると、5月まで減少が続いたが、6月にプラス圏に浮上している(図表3)。また海外からの直接投資(ドル換算)が選挙を控えて二桁減で低迷していたが、4-6月期はマイナス幅が縮小してきている(図表4)。このほか、19年度政府予算で拡充した社会保障プログラムの執行も景気の下支えとなるだろう。
さらに、7月18日にインドネシア銀行(中央銀行)が約2年ぶりに金融緩和に踏み切ったことも僅かながら景気の下支えとなるだろう。昨年、中央銀行は新興国通貨安への対応として5月から11月にかけて政策金利を合計1.75%引上げたほか、ルピア建てノンデリバラブルフォワード(DNDF)を導入した。しかし、今年に入って米国の金融政策のハト派化が強まり、7月末の利下げが確実視されるなか、中銀はインフレ率が低水準を維持する見通しであることや世界経済の先行き不透明感から景気拡大を後押しする必要があるとの判断から政策金利を6%から5.75%に引き下げたほか、政府と協力して景気を押し上げていく方針を示した。外部環境の不確実性が高まるなか、中銀がもう一段の金融緩和を実施するか、また10月20日に発足する第2期ジョコ政権が投資環境の改善や輸出促進のための刺激策を打ち出すか、政府と中銀の政策対応にも注目が集まりそうだ。
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(2019年08月05日「経済・金融フラッシュ」)
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- 【職歴】
2008年 日本生命保険相互会社入社
2012年 ニッセイ基礎研究所へ
2014年 アジア新興国の経済調査を担当
2018年8月より現職
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