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欧州保険会社が2018年のSFCR(ソルベンシー財務状況報告書)を公表(4)-SFCRからの具体的内容の抜粋報告(その3)-
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Prudentialは、内部モデルの計算について、以下の通り説明している。
「内部モデルは、重要なリスク管理ツールであり、ソルベンシーII SCR及びECapを計算する目的でリスクを識別、監視及び定量化するために使用されるシステム及びプロセスの集合を指す。内部モデルは、異なる方法論及び較正を反映するように調整された、ECapとソルベンシーII Pillar 1の両方の資本要件を計算するために使用される。」
E.4.1概要
内部モデルは、重要なリスク管理ツールであり、ソルベンシーII SCR及びECapを計算する目的でリスクを識別、監視および定量化するために使用されるシステム及びプロセスの集合を指す。内部モデルは、異なる方法論及び較正を反映するように調整された、ECapとソルベンシーII Pillar 1の両方の資本要件を計算するために使用される。ソルベンシーII資本とは、ソルベンシーII指令の規則及び要件に合わせて調整された、グループの内部モデルを使用して計算された資本を指す。これはリスクベースの基準であり、ソルベンシーII標準式と比較して、グループの事業の詳細とリスクをよりよく反映するという利点がある。これがグループの主要な規制上の自己資本要件である。したがって、当グループが計算、報告及び監視を行うために必要となる重要な資本指標の1つである。
PRAはまた、当グループの米国の保険事業体を合算するための控除及び集計方法の使用を承認している。これは、米国のRBC企業行動レベル(CAL)の150%でグループSCRの計算に含まれる。
標準式資本とは、ソルベンシーII指令によって提供される標準式規則に従って計算された資本を指す。ソルベンシーIIの一部としての標準式はリスクベースの指標を表しているが、それは欧州の保険会社向けに調整された一連の規定されたパラメータに基づいているため、Prudentialのようなグローバルのグループの特徴やグループがさらされている特殊な構造及びリスクを完全には反映していない。
E.4.2内部モデルの範囲
指令2009/138 / ECの第101条に規定されているように、承認された内部モデルからのSCRは、1年間にわたる99.5%以上の信頼水準での(再)保険事業の基本自己資本のリスク価値として計算される。内部モデルで許容されている主なリスク分類はセクションE2.2に示されている。これらのカテゴリの中で、基礎となる「リスクファクター」は、グループ全体の年間リスク識別プロセスの結果として指定されている。基礎となるリスクファクター毎にモデルが定義及び調整され、これらが適切な依存関係構造と組み合わされてシミュレーションされ、何千もの複合リスクシナリオが生成される。
これらのリスクシナリオは、(内部モデルの範囲内の各事業体について)当グループの全ての資産及び負債に適用され、当グループの純資産合計に対して広範囲の可能な結果を生み出す。簡単にするために、そして循環性を避けるために、リスクマージンはこれら全てのリスクシナリオで一定に保たれている。結果として生じる当グループの純資産の確率分布は、ストレスのないバランスシートから99.5パーセンタイルのワースト結果を控除することによって、内部モデルSCRを計算するために使用される。
内部モデルで使用されているデータは次のとおり。
- 負債データ - 資産データ - 財務データ
- オペレーショナルリスク・データ - 保険契約者データ
- 人口統計、経済、その他を含む仮定の設定に使用されるデータ
- 内部モデル及び技術的準備金によって要求されるその他の関連データ
データの品質は、データの正確性、完全性、適切性及び適時性を確保するために、内部モデルのデータ品質フレームワークの影響を受ける。
Avivaは、内部モデルの計算のプロセスについて、
リスクの特定→リスク発生確率の決定→リスクの財務上の影響を決定→同時に他のリスクが発生する確率を決定→リスク間の相互作用を考慮→資本要件分布を準備するために多重リスクシミュレーションを使用→資本要件
という図を作成して説明している。
また、「Avivaの内部モデルを使用すると、テールや経験分布のあるものを含め、どの統計分布をリスク要因(死亡率、金利、信用リスクなど)の表現に使用するかを柔軟に決定できる。較正は、標準式に暗黙的に示されているように、リスクが正規分布(または類似分布)に従うと仮定することに限定されない。」と説明している。
E.4.3内部モデルの計算
E.4.3.1使用されている方法
内部モデルの目的は、Avivaがさらされているリスクを識別し、適切に較正された入力を使用してこれらのリスクをモデル化し、それらを集計してSCRを計算することである。 内部モデルは、指令2009/138 / ECの第101条に準拠して、SCRを直接導き出すことができる(すなわちSCRが99.5パーセンタイルである)1年間の期間にわたる基本自己資本の変動の総計分布を生成する。
当社のアプローチの概要は以下の通り。
内部モデルアプローチ
リスクの特定→リスク発生確率の決定→リスクの財務上の影響を決定→同時に他のリスクが発生する確率を決定→リスク間の相互作用を考慮→資本要件分布を準備するために多重リスクシミュレーションを使用→資本要件
Avivaの内部モデルを使用すると、テールや経験分布のあるものを含め、どの統計分布をリスク要因(死亡率、金利、信用リスクなど)の表現に使用するかを柔軟に決定できる。較正は、標準式に暗黙的に示されているように、リスクが正規分布(または類似分布)に従うと仮定することに限定されない。この柔軟性は、Avivaにとって最も重要なリスクの動作を正確にモデル化するために重要である。
リスク要因の大部分については、統計分布は利用可能な関連データに直接当てはまる。 ただし、一般的な保険負債リスク、信用リスク、オペレーショナルリスクなど、一部のリスクタイプについては、分布はさらなるモデリングプロセスから導き出される。このアプローチは、これらのリスクタイプの重要性と、リスクの行動が正確に反映されることを確実にしたいという要望の両方を考えると適切である。
較正が適切であり、内部モデルの出力が妥当であることを確認するために、広範囲のテスト及びレビュープロセスが実行される。これらは、ボトムアップでのモデリングプロセスで使用される重要な前提の検証と、較正と損失関数のテスト(つまり、貸借対照表上の資産と負債の評価のための資産及び負債管理モデルでの計算の代用として使用される数式)から、トップダウンのストレステスト及びシナリオテスト、損益帰属のテストまで範囲が及んでいる。
Avivaは、ビジネスの様々な構成要素に対するソルベンシー資本要件を計算するために、内部モデルと標準式アプローチの組み合わせを使用して定義された、グループ全体にわたる部分内部モデルの実施を選択した。これらの要素は、一般的にリスクではなく、法人又は個別の事業ブロックである(詳細は上記のE.4.2に記載されている)。内部モデル資本の計算を標準式の計算と統合するために、部分内部モデルの手法2(委任法の付属書XVIIIに記述されているように)が使用される。
単体ベースとグループベースとでSCRを算出する際に同じ内部モデルが使用されているとは限らない。ここでは、両者の差異についてAXAとGeneraliの説明内容を紹介する。
AXAは、「個々の会社レベルで使用された内部モデルと、グループのソルベンシー資本要件の計算に使用された内部モデルとの主な違い」について、以下の2点を挙げて説明している。
2つの違いは、英国の監督当局である健全性規制機構(PRA)のスタンスによるものである。
1) AXA Insurance UK plcでは、「動的ボラティリティ調整」の使用が認められない。
2) 年金負債の評価で、AXA Insurance UK plc及びAXA PPP healthcare Ltdの単体SCR計算の社債スプレッドの動きに対して、50%のヘアカットが適用される。
E.2 ソルベンシー資本要件(SCR)と最低資本要件(MCR)
個々の会社レベルで使用された内部モデルと、グループのソルベンシー資本要件の計算に使用された内部モデルとの主な違い
AXA Insurance UK plcでは、英国の監督当局である健全性規制機構(PRA)の要件に起因して、グループ統合に使用される内部モデルとローカルで使用される内部モデルの間に、2つの主な違いが存在している。なお、殆どの主要な英国の保険会社は、(PRAの要件のため)ボラティリティ調整よりもマッチング調整の使用を好んでいる:
■市場リスクに関する内部モデルには、単体SCRとグループSCRへのローカル寄与の両方に対するSCRの計算においてボラティリティ調整の将来の変化を予測する「動的ボラティリティ調整」のモデル化が含まれる。しかし、PRAの立場は、英国の会社はSCRの算出においてボラティリティ調整の水準を変更してはならないということである。その結果として、AXA Insurance UK plcの市場リスクモデリングには、単体SCRの計算における動的ボラティリティ調整の利益を取り除くための調整が含まれている。
■PRAは、ストレスをかけた金融状況下で、年金基金の負債をより慎重にモデル化することを要求した。IAS第19号によれば、年金負債は社債のスプレッド・カーブで割り引かれる。保守性の理由から、(グループSCRへの英国寄与分の25%ではなく)AXA Insurance UK plc及びAXA PPP healthcare Ltdの単体SCR計算のための社債スプレッドの動きに対して、50%のヘアカットが適用される。
個々の会社レベルで使用される内部モデルとAXAグループのSCRの計算に使用される内部モデルとの間には、他の違いはない。
Generaliは、「法人レベルでのSCRの計算には異なるアプローチが適用される」として、以下の通り説明している。
具体的には、「ローカルに特定の較正に関して、イタリアの会社については、グループ・レベル及び他のPIM事業体の計算とは異なって、イタリア政府債務へのストレスや確率論的ボラティリティ調整は適用されない。」ことと述べている。これは、イタリアの保険監督当局のIVASSのスタンス等を反映したものとなっている。
E.4.3.内部モデルで使用された方法
法人レベルでのSCRの計算には異なるアプローチが適用される
グループPIM(部分内部モデル)の使用は、ローカルレベルで引き続きスイスのソルベンシーテストの資本要件を使用しているスイスの法的機関であるGenerali AssurancesGénéralesSA及びGenerali Personenversicherungen SAを除いて、グループ・レベルでのSCRの計算及びPIM範囲内の会社のSCRの計算の両方に対して、承認されている。この目的のために、ローカル適合性評価は、モデリングと較正が範囲内の会社に対しても適切なままであることを認めている。ローカルに特有の較正に関しては、イタリアの会社については、グループ・レベル及び他のPIM事業体の計算とは異なって、イタリア政府債へのストレスや確率論的ボラティリティ調整は適用されないことに留意されたい。
3―まとめ
各社とも2017年のSFCRにおける記述に比べて、内容についての若干の見直しを行い、一部充実を図っている。
次回のレポートでは、標準式と使用された内部モデルのリスクカテゴリ毎の差異の説明等の内容について報告する。
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(2019年07月22日「保険・年金フォーカス」)
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