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- 2020年、東京の夏空にあなたの巨大な顔が浮かぶ?
コラム
2019年05月31日
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東京2020大会の開催まで1年余りとなった。今週水曜日に締め切られたチケット販売サイトへのアクセスは累計2,425万件に達するなど、競技大会への関心は確実に高まりつつある。
一方で、東京2020大会の文化プログラムについては、残念ながら一般にあまり知られていない。オリンピック憲章の根本原則に「オリンピズムはスポーツを文化、教育と融合させ、生き方の創造を探求するもの」と記されているとおり、オリンピック・パラリンピックはスポーツばかりではなく、文化の祭典でもある。実際、今から100年以上前、日本が初めて選手団を派遣した1912年のストックホルム大会から文化プログラムは実施されてきた1。
実は東京2020大会の文化プログラムは、リオ大会の終了した2016年9月から既に全国各地で実施されている。前の大会終了後から4年間行われる文化の取組は「文化オリンピアード」と呼ばれ、1992年のバルセロナ大会から定着した仕組みである。
一方で、東京2020大会の文化プログラムについては、残念ながら一般にあまり知られていない。オリンピック憲章の根本原則に「オリンピズムはスポーツを文化、教育と融合させ、生き方の創造を探求するもの」と記されているとおり、オリンピック・パラリンピックはスポーツばかりではなく、文化の祭典でもある。実際、今から100年以上前、日本が初めて選手団を派遣した1912年のストックホルム大会から文化プログラムは実施されてきた1。
実は東京2020大会の文化プログラムは、リオ大会の終了した2016年9月から既に全国各地で実施されている。前の大会終了後から4年間行われる文化の取組は「文化オリンピアード」と呼ばれ、1992年のバルセロナ大会から定着した仕組みである。
2020年に向けて様々な企画が準備されているが、筆者の一押しのひとつが現代アートチーム「目 / [mé]」の“まさゆめ”(写真はイメージ画像)である。「実在する一人の顔」を巨大バルーンのような立体物にして2020年夏の東京の空に浮かべよう、というプロジェクトで、「目 / [mé]」のアーティストのひとり荒神明香が中学生のときに見た夢に着想を得ている。何より、その顔を、年齢や性別、国籍を問わず世界中からひろく募集し、その中から選ぶ、という点がユニークだ。
この企画は、東京2020大会に向けて東京都が展開する文化プログラムTokyo Tokyo FESTIVALの中核事業として、昨年2月に行われた企画公募事業への応募案から選ばれた。国際都市東京を世界にアピールできるインパクトのある芸術創造、世代、国籍、障がいなどをこえ、だれでもが参加できて記憶に残るもの、そして社会的課題に向き合い、アートの可能性を広げる企画などを期待して、広く募集された。
採択されれば、委託事業費として東京都から1件あたり最大で2億円が用意されるということもあって、応募総数は2,436件、国内のみならず海外28ヶ国・地域からも多様なアイディアが寄せられた。昨年夏に審査が行われ2、選定されたのは13件、200倍近い競争率だった。そのひとつが、この“まさゆめ”である3。
顔は6月30日まで公募中だ。正面、左右、背面の4方向から顔を撮影し、以下のWEBサイトにアクセスして応募フォームに必要事項を記入すれば、誰でも簡単に応募できる。顔収集ワークショップや顔会議の開催などを経て、2020年の夏、東京に浮かぶ巨大な顔が選ばれる。
https://masayume.mouthplustwo.me/
「四年に一度の人類最大規模の集いのなか、実在する誰かの巨大な顔が、東京の空に浮かぶ。その圧倒的な風景は、私たちがこの広大な世界に存在しているということの不思議や実感をあらためて問いかけるでしょう」とは、顔募集のチラシに記載された企画の意図である。単に奇想天外なアイディアということではなく、アーティストならではの人間存在に対する深遠な問いかけがベースにあることも強調しておきたい。
一体何人の人がその顔を目撃することになるだろうか。TVや新聞など各種メディアによって、世界中に配信されるのは間違いないだろう。そう考えるだけでワクワクしてくる。ひょっとしたら、どの競技よりも、日本が獲得するメダルの数よりも、2020年の記憶に残るプロジェクトになるかもしれない。それが、オリパラの文化プログラムの醍醐味である。
みなさんも、お子さんやご家族を誘って、顔を応募してはいかがだろうか。高額だといわれる競技や開閉会式のチケットと比べ、こちらは応募も鑑賞も無料である。
1 詳細は以下の拙稿を参照されたい。
「2020年。全国で文化の祭典を(基礎研レポート、2018.3.28)」
https://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=58264?site=nli
「文化の祭典、ロンドンオリンピック――東京オリンピック2020に向けて(基礎研レポート、2012.9.5)」
https://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=40144?site=nli
2 審査結果の公表、審査委員会の構成は、以下を参照。筆者は審査会委員長を務めさせて頂いた。
http://ttf-koubo.jp/wp-content/uploads/2018/08/20180831.pdf
3 採択されたプロジェクトは、ひとつのシークレット企画を除いて12件の概要が以下に掲載されている。
https://ttf-koubo.jp/
この企画は、東京2020大会に向けて東京都が展開する文化プログラムTokyo Tokyo FESTIVALの中核事業として、昨年2月に行われた企画公募事業への応募案から選ばれた。国際都市東京を世界にアピールできるインパクトのある芸術創造、世代、国籍、障がいなどをこえ、だれでもが参加できて記憶に残るもの、そして社会的課題に向き合い、アートの可能性を広げる企画などを期待して、広く募集された。
採択されれば、委託事業費として東京都から1件あたり最大で2億円が用意されるということもあって、応募総数は2,436件、国内のみならず海外28ヶ国・地域からも多様なアイディアが寄せられた。昨年夏に審査が行われ2、選定されたのは13件、200倍近い競争率だった。そのひとつが、この“まさゆめ”である3。
顔は6月30日まで公募中だ。正面、左右、背面の4方向から顔を撮影し、以下のWEBサイトにアクセスして応募フォームに必要事項を記入すれば、誰でも簡単に応募できる。顔収集ワークショップや顔会議の開催などを経て、2020年の夏、東京に浮かぶ巨大な顔が選ばれる。
https://masayume.mouthplustwo.me/
「四年に一度の人類最大規模の集いのなか、実在する誰かの巨大な顔が、東京の空に浮かぶ。その圧倒的な風景は、私たちがこの広大な世界に存在しているということの不思議や実感をあらためて問いかけるでしょう」とは、顔募集のチラシに記載された企画の意図である。単に奇想天外なアイディアということではなく、アーティストならではの人間存在に対する深遠な問いかけがベースにあることも強調しておきたい。
一体何人の人がその顔を目撃することになるだろうか。TVや新聞など各種メディアによって、世界中に配信されるのは間違いないだろう。そう考えるだけでワクワクしてくる。ひょっとしたら、どの競技よりも、日本が獲得するメダルの数よりも、2020年の記憶に残るプロジェクトになるかもしれない。それが、オリパラの文化プログラムの醍醐味である。
みなさんも、お子さんやご家族を誘って、顔を応募してはいかがだろうか。高額だといわれる競技や開閉会式のチケットと比べ、こちらは応募も鑑賞も無料である。
1 詳細は以下の拙稿を参照されたい。
「2020年。全国で文化の祭典を(基礎研レポート、2018.3.28)」
https://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=58264?site=nli
「文化の祭典、ロンドンオリンピック――東京オリンピック2020に向けて(基礎研レポート、2012.9.5)」
https://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=40144?site=nli
2 審査結果の公表、審査委員会の構成は、以下を参照。筆者は審査会委員長を務めさせて頂いた。
http://ttf-koubo.jp/wp-content/uploads/2018/08/20180831.pdf
3 採択されたプロジェクトは、ひとつのシークレット企画を除いて12件の概要が以下に掲載されている。
https://ttf-koubo.jp/
(2019年05月31日「研究員の眼」)
吉本 光宏 (よしもと みつひろ)
吉本 光宏のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
---|---|---|---|
2023/07/11 | 個人寄付から社会を変える-新型コロナの経験を活かすために | 吉本 光宏 | ニッセイ基礎研所報 |
2023/06/07 | Achieving world peace through art and culture: A declaration at the Busan International Cultural Forum | 吉本 光宏 | 研究員の眼 |
2023/05/25 | 文化から平和を考える-釜山国際文化フォーラムに出席して | 吉本 光宏 | 研究員の眼 |
2022/11/22 | DON’T FOLLOW THE WIND-未だ終わらぬ東日本大震災と福島第一原発事故 | 吉本 光宏 | 研究員の眼 |
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