2019年04月25日

欧州大手保険グループの地域別の事業展開状況-2018年決算数値等に基づく現状分析-

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6Aegon
(1)地域別の業績-2018年の結果-
Aegonは、世界の20カ国以上で事業展開している。

営業利益では、自国のオランダの構成比が30%、英国を中心としたその他の欧州が10%で、米国及び中南米からなる米州の構成比が約6割と極めて高くなっている。

Transamericaのブランドを中心とする米国子会社グループは、2018年末の認容資産で、生命保険・健康保険グループで第11位(2017年末も第11位)となっている。ブラジルとメキシコで事業展開しているが、カナダの生命保険事業や資産管理事業は2015年7月に売却している。

また、損害保険事業は、欧州でのみ展開しているが、その全体における位置付けは高くない。
保険事業の地域別内訳(2018年)/うち 欧州の主要国別内訳
(2)地域別の業績-2017年との比較-
2017年との比較では、全体では、保険料が大きく減少し、営業利益も若干減少した。

地域毎に見た場合も、保険料は、各地域で減少した。

営業利益については、欧州では、オランダにおける前提の最新化等の影響を受けて、13%増加した。

米国では、退職年金商品の売上げが減少したことに加えて、不利な市場の影響や各種の特別な費用の計上等もあり、為替レートの影響を含めて、営業利益は12%減少した。

アジアでは、死亡率の低下や事業費削減及び高い継続率等により中国における事業が好調だったこと等から、営業利益が12%増加した。

新契約価値については、アジアを除いて増加し、全体でも32%進展した。
保険事業の地域別内訳(2017年から2018年に向けての増加額と進展率)/うち 欧州の主要国別内訳(2017年から2018年に向けての増加額と進展率)
(参考)地域別のROE
なお、Aegonは、地域別のROEを開示しているが、その状況は下記の図表の通りである。

これによれば、アジアや南欧のROEは高くなく、中東欧が二桁台で高くなっている。
保険事業のROE(資本収益率)の状況
(3)地域別展開に関する方針及びトピック
Aegonは、現在、自国のオランダや英国を中心とする欧州と、米国、ブラジル、メキシコを中心とする米州が2大地域となっているが、今後はアジア各国に事業展開を行って、その位置付けを高めていくことを目指していく、としている。

2010年から2017年までに、コアでない事業で50億ユーロを売却し、4カ国の保険事業から撤退している。さらに、ランオフポートフォリオの規模を大きく縮小してきている。一方で手数料ビジネスの規模を拡大してきている。

Aegonが主導的なポジションを得ることができる市場に焦点を当てるという観点から、2018年においても、Aegon Irelandの売却、米国の生命保険再保険事業の最後のブロックの売却、チェコとスロバキアの事業売却を行う一方で、オランダのRobidusを取得している。また、スペインとポルトガルの収益性の改善を目指して、経営行動を起こしている。具体的には、以下の通りである。

・2018年4月 Aegon IrelandをAthora Holding(旧AGER Bermuda Holding)に195百万ユーロで売却
・2018年7月 スペインのBanco Santanderとの提携を拡大(定期保険と損害保険の選択されたラインをカバー)
・2018年8月 チェコとスロバキアの事業をNN Groupに155百万ユーロで売却することに合意
 (2019年1月に売却完了)
・2018年8月 米国の生命再保険事業の最後のブロックをSCOR Global Lifeに売却することに合意
・米国における変額年金のキャプティブを解散
・2018年9月 オランダの所得保障サービス提供者であるRobidusを取得
・2018年12月 ポルトガルでBanco Santanderとの提携を拡大
7Zurich
(1)地域別の業績-2018年の結果-
Zurichも、世界の210以上の国と地域で、生命保険・損害保険等のサービスを提供している。

欧州では、自国のスイス以外に、ドイツや英国から高い営業利益を上げている他、アイルランド、スペイン等からの営業利益も有意な水準となっている。ただし、こうした欧州各国からの構成比は全体の約2/3であり、残りの約1/3を米国中心の北米11、中南米、アジア・太平洋が占めている。

特に、他社との比較では、アルゼンチン、ブラジル、チリ、メキシコ等の中南米の位置付けが高くなっているのが特徴的である。Banco Santanderとの提携によるZurich Santanderにおける販売が貢献している。
生命保険事業(Global Life)の地域別内訳(2018年)/うち 欧州の主要国別内訳
 
11 Zurichの米国子会社グループは、他の米国事業を有する4社の米国子会社グループのような大きな規模を有していない。
(2)地域別の業績-2017年との比較-
Zurichの決算数値は米ドル建で報告されているため、2017年との比較を見る上では、2018年の米ドルの主要通貨に対する状況を考慮しておく必要がある。

営業利益について、欧州・中東・アフリカで22%、アジアで41%と大幅進展した他、前年度赤字の北米が黒字となり、中南米も為替レートの影響があったものの米ドルベースでも8%進展した。

欧州では、スイス、イタリアでマイナス進展だったものの、英国がここ2年間の特殊要因の影響があり、倍増したことから、全体でも22%増加した。

アジア・太平洋は、引き続き継続的な高成長をベースに、営業利益も41%と大幅に増加した。

なお、MCEVや新契約価値は、ともに会社全体では減少したが、アジア・太平洋では二桁以上進展した。
生命保険事業(Global Life)の地域別内訳(2017年から2018年に向けての増加額と進展率)/うち 欧州の主要国別内訳(2017年から2018年に向けての増加額と進展率)
(3)地域別展開に関する方針及びトピック
Zurichは、保険事業に関して、例えば、2017年から2018年にかけて、以下の地域別展開の見直し等を行っている。

・2017年8月 Cover-More Group Limited とHalo Insurance Limitedの買収
・2017年11月 ドイツの医療過誤ポートフォリオのCatalinaへの売却
・2017年12月 ドライバー、ディーラー及び製造業者を結ぶテレマティクス・ソリューションのプロバイダーであるBright Box HK Limitedの買収
・2017年12月 Australia and New Zealand Banking Group (ANZ)のオーストラリアの生命保険会社OnePath Lifeの買収合意、2019年上半期での完了を予定
・2018年2月 QBEのラテンアメリカ事業の買収に合意
・2018年3月 英国の学生ポートフォリオEndsleighのブローカーA-Plan Holdingsへの売却
・2018年7月、アルゼンチンとブラジルがそれぞれ196百万ドル及び34百万ドルで買収完了
・2018年8月、メキシコとエクアドルがそれぞれ32百万ドルと52百万ドルで買収完了
・2018年11月 チリにおけるEuroAmwricaの個人及び団体の生命保険ポートフォリオ等を買収(推定144百万ドルで完了)
・2018年9月、インドネシアのPT Asuransi AdiraDinamika (Adira Insurance) の80%の株式取得、2019年上半期での完了を予定
・2018年10月、100%子会社のCover-More Australia Pty LtdがBlue Insurance の買収を完了
・2018年12月 2007年以前の英国のレガシー雇用者責任ポートフォリオのCatalinaへの売却契約を締結(2019年下半期に完了予定)
・2018年11月、ベネズエラの事業売却契約を締結
・2018年12月、ADAC Autoversicherung AGへの51%の参加及びBonnfinanz AGへの株式の売却契約を締結(前者は2019年1月1日から有効、後者は2019年上半期に完了する予定)
・2019年2月、コロンビアが36百万ドルで買収完了
 (この買収により、ラテンアメリカで第4位の保険会社となり、特にアルゼンチンの市場シェアは大きく上昇)

Zurichの生命保険事業の国際的な事業展開は、欧州と中南米が中心で、これまでのところアジアに関しては、他の欧州大手保険グループに比較して、例えば中国やインドにおけるノンプレゼンスにみられるように、相対的に限定されている。
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中村 亮一

研究・専門分野

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