2019年03月29日

鉱工業生産19年2月-4ヵ月ぶりの上昇も基調は弱く、景気後退の可能性は残る

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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1.生産は4ヵ月ぶりの上昇も、基調は弱い

経済産業省が3月29日に公表した鉱工業指数によると、19年2月の鉱工業生産指数は前月比1.4%(1月:同▲3.4%)と4ヵ月ぶりに上昇し、事前の市場予想(QUICK集計:前月比1.0%、当社予想は同2.8%)を若干上回る結果となった。出荷指数は前月比1.8%と4ヵ月ぶりの上昇、在庫指数は前月比0.5%と2ヵ月ぶりに上昇した。
鉱工業生産・出荷・在庫指数の推移 2月の生産を業種別に見ると、アジア向けを中心に半導体電子部品の輸出が大きく落ち込んでいることを反映し、電子部品・デバイスは前月比▲3.7%と4ヵ月連続で低下したが、1月に前月比▲9.6%と大きく落ち込んだ半導体製造装置を含む生産用機械が同5.6%と持ち直したほか、自動車工業が前月比7.5%の高い伸びとなった。

生産は4ヵ月ぶりの上昇となったが、1月の大幅減産(前月比▲3.4%)の後としては低い伸びにとどまった。2月の生産水準は直近のピークである18年10月と比べると▲3.2%低い。生産は基調として低迷している。
財別の出荷動向 財別の出荷動向を見ると、設備投資のうち機械投資の一致指標である資本財出荷指数(除く輸送機械)は18年10-12月期の前期比2.0%の後、19年1月が前月比▲8.1%、2月が同2.6%となった。また、建設投資の一致指標である建設財出荷指数は18年10-12月期の前期比2.8%の後、19年1月が前月比▲2.2%、2月が同2.4%となった。1、2月の水準を10-12月期と比較すると、資本財出荷が▲9.0%、建設財が▲2.1%低い水準にある。

18年10-12月期のGDP統計の設備投資は前期比2.7%と2四半期ぶりの増加となった。現時点では潤沢なキャッシュフローを背景とした設備投資の回復基調は維持されていると考えられるが、好調を続けてきた企業収益はここにきて変調の兆しもみられる。先行きの設備投資は減速に向かう可能性が高いだろう。

消費財出荷指数は18年10-12月期の前期比▲0.8%の後、19年1月が前月比2.6%、2月が同1.5%となった。2月は非耐久消費財が前月比▲2.3%(1月:同7.9%)の低下となったが、耐久消費財が前月比8.7%(1月:同▲7.0%)の高い伸びとなった。消費財出荷指数の1、2月の水準は10-12月期よりも2.9%高い。雇用所得環境の改善を背景に個人消費は持ち直しの動きが続いている。

GDP統計の民間消費は17年4-6月期以降、前期比でプラスとマイナスを繰り返してきた(18年10-12月期は前期比0.4%)が、19年1-3月期は2四半期連続の増加となることが予想される。

2.1-3月期は2四半期ぶりの減産が確実、景気後退の可能性は残る

製造工業生産予測指数は、19年3月が前月比1.3%、4月が同1.1%となった。生産計画の修正状況を示す実現率(2月)、予測修正率(3月)はそれぞれ▲2.3%、0.6%であった。
最近の実現率、予測修正率の推移 19年2月の生産指数を3月の予測指数で先延ばしすると、19年1-3月期は前期比▲2.5%となる。実現率、予測修正率はマイナスとなることがほとんどだが、3月の実現率に限ってはプラスとなる傾向があり、15年から18年まで4年連続でプラス(平均+1.0%)となっている。ただし、3月の生産指数が予測指数から1%上振れしても1-3月期は前期比▲2.2%となるため、2四半期ぶりの減産は確実だ。1月の大幅減産は中華圏の春節の影響もあったとみられるが、その影響がなくなった2月のリバウンドは小さかった。生産は基調として弱い動きとなっている。
内閣府の「景気動向指数」では、19年1月のCI一致指数が前月差▲2.5ポイントの大幅低下となり、CI一致指数の基調判断が、それまでの「足踏み」から、事後的に判定される景気の山がそれ以前の数か月にあった可能性が高いことを示す「下方への局面変化」に下方修正された。

2月は一致指数を構成する生産指数、耐久消費財出荷指数、投資財出荷指数(除く輸送機械))が前月から改善(ただし、鉱工業用生産財出荷指数、商業販売額(小売業)は前月から悪化)したため、CI一致指数は前月差1ポイント程度のプラスとなることが予想される。CI一致指数の基調判断は前月に続き「下方への局面変化」となるだろう。

ただし、2月のプラス幅は小さく、前月差の3ヵ月後方移動平均は1月に続きマイナスとなる公算が大きい。したがって、3月のCI一致指数が前月差マイナスとなった場合には、「(1)3か月連続して3か月後方移動平均が下降、(2)当月の前月差の符号がマイナス」となり、基調判断「悪化」の条件を満たすことになる。「悪化」の定義は、「景気後退の可能性が高いことを示す」となっている。

2月の景気動向指数で基調判断が「悪化」に転じることは回避されたが、リバウンドが小さかったため、3月に「悪化」に転じる可能性はあまり下がらなかった。引き続き18年秋頃をピークに景気が後退局面入りしている可能性は残っている。
 
 

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経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

(2019年03月29日「経済・金融フラッシュ」)

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