2019年03月18日

ドイツの民間医療保険及び民間医療保険会社の状況(1)-2017年結果-

保険研究部 常務取締役 研究理事 兼 ヘルスケアリサーチセンター長   中村 亮一

欧米保険事情 保険会社経営 などの記事に関心のあるあなたへ

btn-mag-b.png
基礎研 Report Head Lineではそんなあなたにおすすめのメルマガ配信中!
各種レポート配信をメールでお知らせするので読み逃しを防ぎます!

ご登録はこちら

twitter Facebook g+ このエントリーをはてなブックマークに追加 Pocketで後で読む

文字サイズ

1―はじめに

ドイツの民間医療保険及び民間医療保険会社を巡る状況については、基礎研レポート「ドイツの医療保険制度(2)―公的医療保険の保険者との競争環境下にある民間医療保険及び民間医療保険会社の状況」(2016.4.4)(以下、「前回のレポート」という)の中で、その現状と国全体の医療保険制度の中での位置付けについて、2014年ベースの数値に基づいて、報告した。さらには、1年前には保険年金フォーカス「ドイツの民間医療保険及び民間医療保険会社の状況(1)-2016年結果-」(2018.3.16)及び「ドイツの民間医療保険及び民間医療保険会社の状況(2)-2016年結果-」(2018.3.20)において、2016年ベースの数値に基づいて報告した。

今回と次回のレポートは、基本的にはこれらのレポートを2017年ベースに更新したものである1,2。まずは、今回のレポートでは、民間医療保険の普及状況について報告する。
 
1 ドイツの医療保険制度全体の概要及びその中での民間医療保険の位置付けや各種の制度の具体的な内容等については、基礎研レポート「ドイツの医療保険制度(1)(3)」(2016.3.15~2016.4.18)を参照していただきたい。
2 以下の図表については、基本的には、ドイツ保険協会(GDV)の「Statistical Yearbook of German Insurance 2018」及び民間医療保険連盟(PKV)の「Financial report for private healthcare insurance 2017」からの数値に基づいているが、両者の数値は必ずしもベースが同じにはなっていない。PKVをデータ・ソースとするGDVの資料についても、GDVの資料に基づく、としている。また、GDVの資料で必ずしも数値の整合性が取れていないと思われるものについても、原資料の数値を尊重した。なお、2018年の公表資料において行われた2016年以前の数値の修正等を反映している。
 

2―民間医療保険の普及状況(1)-被保険者数-

2―民間医療保険の普及状況(1)-被保険者数-

この章では、民間医療保険の普及のうちの被保険者数の状況について報告する。

1|代替医療保険
民間医療保険連盟(PKV)の資料に基づくと、次ページの図表が示すように、2016年において、公的医療保険を代替する代替医療保険1のうち、完全医療保険1の被保険者数が877万人、長期介護保険の被保険者数が937万人となっている。ともに、ここ数年間、前年に比べて減少し続けている。

この主たる理由としては、所得の減少や家族の一員となること等の理由で、公的医療保険に移動している人数が、民間医療保険に移動してくる人数を上回っていることが挙げられる。

公的医療保険と民間医療保険の間の移動状況については、2011年までは、民間医療保険への流入超過であったが、公的医療保険の加入要件等の制度変更の影響もあり、2012年からは公的医療保険への流出が上回っている。ただし、2016年及び2017年の流出数はそれぞれ1.5千人及び3.7千人で、2015年までの3年間において高い水準で流出していたのに比べると、大きく減少している。
代替医療保険の被保険者数/公的医療保険と民間医療保険の間の移動状況
(1)完全医療保険
なお、完全医療保険には、2017年でドイツ国民の約1割にあたる875万人が加入しているが、所得水準の差異等を反映して、旧西ドイツの州からの被保険者が9割以上を占めており、旧東ドイツの州からの被保険者は1割未満に過ぎない。

さらに、完全医療保険の被保険者の構成は、以下の図表の通りとなっており、(1)財政支援3を受けている公務員やその家族等が約半分を占めており、(2)男性が5割、女性が3割強、子供が2割弱の構成比となっている。
完全医療保険の被保険者構成(2017年)
 
3 公務員やその配偶者、子供等は、医療給付等に対して、連邦政府や地域や地方当局からの財政的な支援が行われる。
(2)長期介護保険
長期介護保険の被保険者数は2017年において932万人で、完全医療保険に比べて約60万人多い。これは、ドイツポスト(Deutsche Post AG)やドイツ鉄道(Deutsche Bahn AG)の職員が含まれてくることによる影響が大きい。
2|付加医療保険
一方で、公的医療保険に対する付加的な保障を提供する付加医療保険1の被保険者数4は2017年で1,958万人となっており、追加の医療保障ニーズへの高まりを反映して、2016年に比べて45万人増加している。

さらに、商品別にみてみると,外来付加保険が802万人,病院付加保険が611万人,歯科治療保険が1,566万人となっており、2016年との比較では、歯科治療保険を中心に増加している。
付加医療保険の被保険者数
 
4 1人の被保険者が複数の契約に加入している場合、複数カウントされる。
(参考)被保険者数の増加率の推移
過去からの被保険者数の増加率の推移をみると、完全医療保険及び付加医療保険ともに、その増加率が顕著に低下してきている。特に、完全医療保険については、ここ6年間、被保険者数が減少している。一方で、付加医療保険については、完全医療保険を上回る増加率で推移してきているが、ここ4年間の増加率は2%未満にとどまっている。
民間医療保険の被保険者数の増加率
3|基本タリフ1
2009年1月から、(代替医療保険を提供する)民間医療保険会社は、公的医療保険の給付サービスに相当する「基本タリフ(Basistarif)」5を提供しなければならなくなった。基本タリフは、民間医療保険連盟が保険監督法に基づいて設計している業界共通の統一料率商品であり、(1)加入時の年齢別に保険料が決定されるが、健康状態は加味されない、(2)保険料水準は公的医療保険の平均最高保険料を上回ってはならない、等の制約がある。

この基本タリフの2017年の被保険者数は、31,400人であり、前年に比べて1,100人増加しているが、2009年の設立当初から、大幅に増加している状況にはない。また、全体の被保険者のうちの18.18% が財政支援を受けている。

なお、1994年に導入された「標準タリフ(Standardtarif)」については、2017年において50,200人で、対前年2,900人の増加となっている。
基本タリフへの加入状況/標準タリフへの加入状況
 
5 実現するための第1段階の措置として、2007年7月からは、「標準タリフ(Standardtarif)」の提供が義務付けられていたが、第2段階の措置として「基本タリフ(Basistarif)」が導入されることになった。
 

3―民間医療保険の普及状況(2)-収入保険料及び給付額-

3―民間医療保険の普及状況(2)-収入保険料及び給付額-

この章では、民間医療保険の普及のうちの収入保険料及び給付額の状況について報告する。

1|収入保険料
収入保険料は39,049百万ユーロ、うち代替医療保険が29,677百万ユーロ(完全医療保険が27,082百万ユーロ、長期介護保険が2,594百万ユーロ)、付加医療保険が8,528百万ユーロとなっている。このように、代替医療保険からの保険料が全体の3/4以上を占めている。

また、この民間医療保険の収入保険料水準は、公的医療保険の収入保険料の2割弱に相当している。
民間医療保険の収入保険料(商品別内訳)
ドイツ保険協会(GDV)の資料に基づくと、2017年の収入保険料は、対前年4.7%増加している。この増加率は、2012年から、過去において批判が増加していた導入的タリフ(Einsteigertarifen:Starter tariffs)6の販売推進を止めたこともあり、2014年までの5年間毎年低下してきていた。2015年は増加率を若干反転させたが、2016年は再び低下していた。完全医療保険の被保険者数が新契約の低迷により、減少していたことによる。ところが、2017年は、久々に高い増加率となった。
民間医療保険の収入保険料の推移
商品別では、公的医療保険に対する付加的な給付を提供する公的医療付加保険や長期介護付加保険が他の商品に比べて、相対的に高い進展率を示している。
民間医療保険-収入保険料の商品別内訳の推移-
なお、医療保険の収入保険料は、生命保険・損害保険を含めた保険会社全体の収入保険料197,987百万ユーロの2割弱に相当しているが、医療保険に対するニーズの高まりを反映して、ここ四半世紀で、この比率は徐々に増加してきている。
民間保険会社における医療保険の位置付け(医療保険会社の収入保険料シェア)
 
6 限定された給付水準で、低い保険料水準からスタートして、その後保険料が増加していく商品
twitter Facebook g+ このエントリーをはてなブックマークに追加 Pocketで後で読む
27927_ext_01_0.jpg

保険研究部   常務取締役 研究理事 兼 ヘルスケアリサーチセンター長

中村 亮一 (なかむら りょういち)

研究・専門分野
保険会計・計理

レポート

アクセスランキング

【ドイツの民間医療保険及び民間医療保険会社の状況(1)-2017年結果-】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。

ドイツの民間医療保険及び民間医療保険会社の状況(1)-2017年結果-のレポート Topへ