2019年02月15日

2019・2020年度経済見通し(19年2月)

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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(厳しさを増す輸出環境)
輸出は海外経済の減速を背景に低調に推移している。当研究所では、米国は2018年には3%近い高成長となるものの、歳出拡大の時限措置終了、減税による押し上げ効果の減衰、保護主義的な通商政策による下押しなどから、2019年が2.4%、2020年が1.8%と成長率が徐々に低下すると予想している。また、すでに景気が減速し始めているユーロ圏、中国も成長率の低下が続くことを見込んでいる。
海外経済の見通し(実質GDP成長率) さらに、2019年中に米国の利上げ局面が終了することを受けて、これまで輸出の下支え要因となっていた円安・ドル高基調にも歯止めがかかりそうだ。先行きの輸出は回復基調を維持するものの、輸出環境が厳しさを増していく中で力強さに欠けるものとなるだろう。なお、東京オリンピック開催時には訪日外国人の急増によってサービス輸出(旅行収支の受取額)が大幅に増加することが見込まれる。

財貨・サービスの輸出は2017年度には前年比6.4%の高い伸びとなったが、2018年度が同1.8%、2019年度が同1.6%、2020年度が同2.5%と過去平均(1995年度以降の平均は4.5%)を下回る緩やかな伸びにとどまるだろう。
(物価の見通し)
消費者物価(生鮮食品を除く総合、以下コアCPI)は、2018年10月の前年比1.0%から、原油価格の下落に伴うエネルギー価格の上昇幅縮小を主因として12月には同0.7%まで上昇率が鈍化した。また、日銀が基調的な物価変動を把握するために重視している「生鮮食品及びエネルギーを除く総合」(いわゆるコアコアCPI)の上昇率はゼロ%台前半にとどまっている。

原油価格の動きが遅れて反映される電気代、ガス代は2018年度末頃をピークに上昇率が鈍化し始め、エネルギー価格の上昇率は2019年夏頃には前年比でマイナスに転じる可能性が高い。また、サービス価格との連動性が高い賃金は伸び悩みが続いているが、2019年の賃上げ率は前年を若干下回ることが見込まれる。基調的な物価上昇圧力が高まる材料は見当たらない中、物価は当面低空飛行を続けることが予想される。

2019年10月以降は消費税率引き上げと教育無償化により物価上昇率が大きく変動する。コアCPI上昇率は消費税率引き上げ(軽減税率導入の影響を含む)によって1%ポイント押し上げられるが、同時に実施される幼児教育無償化によって▲0.6%ポイント、2020年4月に予定されている高等教育無償化によって▲0.1%ポイント押し下げられる。消費税率引き上げと教育無償化を合わせたコアCPI上昇率への影響は、2019年度下期が+0.4%、2020年度上期が+0.3%、2020年度下期が▲0.1%となる。年度ベースでは2019年度が+0.2%、2020年度が+0.1%である。2019年度下期以降は消費税率引き上げと教育無償化の影響で物価の基調が見極めにくい状況が続くことになろう。

コアCPI上昇率は2018年度が前年比0.8%、2019年度が同0.5%、2020年度が同0.6%、消費税率引き上げを除くベースでは2019年度が前年比0.0%、2020年度が同0.1%、消費税率引き上げ・教育無償化を除くベースでは2019年度が前年比0.3%、2020年度が同0.5%と予想する。
消費税率引き上げと教育無償化による消費者物価への影響/消費者物価(生鮮食品を除く総合)の予測
日本経済の見通し(2018年10-12月期1次QE(2/14発表)反映後)/米国経済の見通し/欧州(ユーロ圏)経済の見通し
 
 

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経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

(2019年02月15日「Weekly エコノミスト・レター」)

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