2019年02月12日

【東南アジア経済】ASEANの貿易統計(2月号)~輸出は2年2ヵ月ぶりの減少、米国一強が鮮明に

経済研究部 准主任研究員 斉藤 誠

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18年12月のASEAN主要6カ国の輸出(ドル建て、通関ベース)は前年同月比4.5%減(前月:同0.1%増)と低下し、2年2ヵ月ぶりのマイナス成長となった(図表1)。輸出の伸び率は昨年前半まで堅調に推移したが、年後半からは米中間の追加関税発動や駆け込み輸出の余波、ベース効果の剥落などを受けて上下動を伴いながら減速傾向にある。

ASEAN5カ国の仕向け地別の輸出動向を見ると、12月は東アジア向け(同7.6%減)とEU向け(同12.6%減)に続いて東南アジア向け(同4.3%減)がマイナスに転じた(図表2)。一方で相対的に堅調な北米向け(同8.2%増)は上昇しており、「米国一強」がより鮮明になった。
(図表1)ASEAN6カ国の輸出額/(図表2)ASEAN5ヵ国仕向け地別の輸出動向
タイの18年12月の輸出額(ドル建て、通関ベース)は前年同月比1.7%減(前月:同0.9%減)と低下した。輸出の基調は主要工業製品を中心に堅調に推移してきたが、米中貿易摩擦や世界経済の減速など先行きの不透明感が強まるなかで電子機器が昨年末に大きく減少し、2ヵ月連続のマイナスとなった。一方で輸入額が前年同月比8.1%減(前月:同14.7%増)と大幅に低下した結果、貿易収支は10.6億ドルの黒字となり、前月から22.4億ドル改善した(図表3)。

輸出を品目別に見ると、全体の約8割を占める主要工業製品は同0.8%減(前月:同0.4%減)と低迷した(図表4)。工業製品の内訳を見ると、石油化学製品(同3.3%増)と自動車・部品(同2.0%増)は小幅ながら増加したが、主力の電子機器(同12.0%減)や家電製品(同5.6%減)、機械・装置(同0.7%減)はマイナスとなった。また鉱業・燃料は同2.0%増(前月:同21.0%増)と、石油製品を中心に大きく鈍化した。農産物・加工品は同6.6%減(前月:同8.4%減)と低迷した。国際市況が下落している天然ゴム(同32.6%減)をはじめ、コメ(同5.5%減)やゴム製品(同2.1%減)などが低調だった。
(図表3)タイの貿易収支/(図表4)タイ輸出の伸び率(品目別)
ベトナムの18年12月の輸出額(ドル建て、通関ベース)は前年同月比0.4%減となり、前月の同8.5%増から大きく低下した。輸出の伸び率は昨年概ね堅調に拡大してきたが、年末に電気電子製品が大幅に減少し、2013年2月以来のマイナスに転じた。また輸入額も前年同月比1.6%増(前月:同10.7%増)と低下した結果、貿易収支は8.1億ドルの赤字となり、前月から9.6億ドル悪化した(図表5)。

輸出を品目別に見ると、まず輸出全体の約2割を占める電話・部品が同26.2%減(前月:同4.1%増)と大きく低下した(図表6)。一方、コンピュータ・電子部品は同4.1%増(前月:同3.5%減)と上昇してプラスに転じた。アパレル関連では、織物・衣類が同12.0%増(前月:同17.5%増)、履物が同7.5%増(前月:同11.4%増)となり、それぞれ堅調な伸びを維持した。農産品は、コメ(同26.0%増)が2ヵ月連続で上昇する一方、カシューナッツ(同10.4%減)が低迷、コーヒー(同15.6%減)が大幅に低下するなど、品目毎にばらつきがみられた。

輸出を資本別に見ると、地場企業が同10.3%増(前月:同10.3%増)と横ばいで推移したものの、全体の7割を占める外資系企業が同5.2%減(前月:同7.9%増)と大幅に低下した。
(図表5)ベトナムの貿易収支/(図表6)ベトナム輸出の伸び率(品目別)
マレーシアの18年12月の輸出額(ドル建て、通関ベース)は前年同月比2.5%増(前月:同1.3%増)と小幅に上昇した。輸出の基調は主力の電気・電子製品と鉱物性燃料を中心に概ね堅調を維持しているが、伸び率はベース効果の剥落により鈍化傾向にある。なお、米中貿易戦争による貿易転換効果が見込まれる電気・電子製品と化学製品はそれぞれ上昇した。一方、輸入額が前年同月比1.2%減(前月:同4.4%増)と低下した結果、貿易収支は25.0億ドルの黒字と、前月から6.3億ドル黒字が拡大した(図表7)。

輸出を品目別に見ると、全体の約4割を占める機械・輸送用機器は同11.2%増(前月:同2.6%減)と、主力の電気・電子製品(同11.7%増)が持ち直して2ヵ月ぶりに二桁増となった(図表8)。また鉱物性燃料は同7.4%減(前月:同27.5%増)と大幅に低下し、2年1ヵ月ぶりのマイナスとなった。石油製品(同7.4%減)と天然ガス(同4.8%減)がそれぞれ減少に転じた。このほか、化学製品(同13.0%増)が再び上昇する一方で、動植物性油脂(同26.9%減)が引き続き大幅マイナスとなった。
(図表7)マレーシア貿易収支/(図表8)マレーシア輸出の伸び率(品目別)
インドネシアの18年12月の輸出額(ドル建て、通関ベース)は前年同月比4.6%減(前月:同2.8%減)と低下した。輸出は主力のパーム油とゴム製品が落ち込むなか、自動車や電気機械を支えに堅調に拡大してきたが、昨年後半からは鉱産物を中心に鈍化傾向が続き、2カ月連続で減少している。また輸入額も前年同月比1.2%増(前月:同11.8%増)と鈍化した結果、貿易収支は11.0億ドルの赤字となり、前月から8.9億ドル赤字が縮小した(図表9)。

輸出を品目別に見ると、石油ガスは同16.7%増(前月:同5.8%増)と上昇したが、全体の9割を占める非石油ガスは同7.0%減(前月:同3.6%減)と低迷した(図表10)。非石油ガスの内訳をみると、まず輸出全体の7割を占める製造品が同3.2%減(前月:同6.5%減)と低迷した。製造品のうち、機械(同30.1%増)や自動車・同部品(同25.7%増)は増加した一方、動植物性油脂(同17.8%減)やゴム製品(同14.6%減)は引き続き減少した。鉱業品も同20.7%減(前月:同9.2%増)と大きく低下したが、農産品については同8.2%増(前月:同0.9%増)と2カ月連続で上昇した。
(図表9)インドネシアの貿易収支/(図表10)インドネシア輸出の伸び率(品目別)
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経済研究部   准主任研究員

斉藤 誠 (さいとう まこと)

研究・専門分野
東南アジア経済、インド経済

経歴
  • 【職歴】
     2008年 日本生命保険相互会社入社
     2012年 ニッセイ基礎研究所へ
     2014年 アジア新興国の経済調査を担当
     2018年8月より現職

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