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2020年の年金改革に向けた議論の状況と残された課題
保険研究部 上席研究員・年金総合リサーチセンター 公的年金調査室長 兼任 中嶋 邦夫
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前回(2014年6月)の財政検証の前後には、2013年に成立した社会保障制度改革プログラム法に掲げられた4つの検討項目を考慮して、年金制度の見直しが検討された。しかし、最終的な制度改正には年金部会で検討された項目の一部しか盛り込まれず、いくつかの課題が残された。加えて、2016年改正後の閣議決定などで、年金制度の追加的な見直しの検討が明示されている。
例えば、企業への影響が大きい短時間労働者(パート労働者)への厚生年金の適用拡大については、正社員501人以上の企業での実施を決定した2012年の改正法の附則に、2019年9月末までに更なる拡大を検討することが盛り込まれた。その後に閣議決定された「ニッポン一億総活躍プラン」(2016年6月)や「骨太の方針2017」(2017年6月)でも、検討や措置を講じることが盛り込まれている。2018年4月に招集された第4次年金部会では労働分野の専門家が複数追加され、同年9月に開催された同部会では「別途の検討の場」の設置などが議論されたが、それ以降は具体的な動きが見えない。前述した検討期限までに企業規模等の具体的な条件が提示されるのかや、オプション試算に具体的な条件が反映されるのかなどが、今後の注目点となる。
また、高齢者の就労促進と年金の関係については、2018年2月に閣議決定された高齢社会対策大綱に、70歳以降の受給開始を選択可能にするなどの柔軟な受給方法や在職老齢年金のあり方の検討が盛り込まれた。これらは同年10月と11月に開催された年金部会で議論されたが、賛否両論があり、具体的な結論には至らなかった。今後は、これらの見直しの採否や具体的な内容(70歳以降の繰下げ受給の割増率や在職老齢年金の具体的な見直し内容)が、注目される。
2014年の将来見通しでは、経済が改善する前提で、基礎年金(1階部分)の給付削減は2043年まで続き、給付水準が2014年と比べて▲29%、実質的に低下する見込みとなっている。他方、厚生年金(2階部分)の削減は2019年度頃に終わり、給付水準の低下が▲3~5%にとどまる見込みである。この結果、世帯年収別に見た年金額全体の実質的な低下率は、図表2のようになる。このように、厚生年金より基礎年金で給付水準の実質的な低下(目減り)が大きいことは、会社員OBの中でも現役時代の給与が少ない人ほど、年金額全体の目減りが大きいことを意味する。現役時代の給与が少ないと厚生年金の金額が少なく、年金全体に占める基礎年金の割合が大きい。他方、目減りの程度は厚生年金より基礎年金で大きい。この2つを合わせると、現役時代の給与が少ない人ほど年金額全体の目減りが大きくなる。つまり、逆進的な給付削減になる。前回改正では、基礎年金の適用期間を現行の20~59歳から5年間延長し、その分だけ基礎年金の水準を底上げする案が検討されたが、国庫負担の増加を理由に法案化が見送られた。
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(2019年01月08日「ニッセイ年金ストラテジー」)
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