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ドイツにおける追加責任準備金(ZZR)制度の見直しを巡る動き-財務省が改正法案を提示-
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1―はじめに
その後も、ドイツの金利環境を巡る状況は厳しく、毎年の決算において多額のZZRの積立を余儀なくされている。また、その財源確保のために、債券の売却を行って、含み益の実現を余儀なくされることで、生命保険会社の財務状況に与える影響等が極めて大きなものとなっている。
こうした状況下で、生命保険業界等は、これまでBaFinや財務省(Bundesministerium der Finanzen:BMF)に対して、現行のZZR制度の見直しについて、強い働きかけを行ってきた。一方で、ドイツの連邦議会の金融委員会は、財務省に対して、2014年から施行されている生命保険改革法(LVRG)の影響を評価し、これを報告するように求めていた。財務省は、これらに応える形で、6月28日に「評価報告書」を金融委員会に提出して、公表した。この「評価報告書」の中で、ZZRについては、BaFinによる調査結果が示され、現行の制度に基づく課題が示され、その計算ルールの調整を行うべき、との結論が述べられた。
ZZR制度の見直し案については、これまでにDAV(ドイツ・アクチュアリー会)が具体的な提案を行い、BaFinとの検討も行われて、共同で開発されてきた。こうした動きについて、保険年金フォーカス「ドイツにおける追加責任準備金(ZZR)制度の見直しを巡る動き-BaFinとDAVによる新たな方式-」(2018.8.7)((以下、「前回のレポート」という)で、報告した。
その後、財務省が9月13日にZZRを改正するドラフト法案1を公表しているので、今回のレポートは、これについて報告する。
2―ZZR制度について
1|ZZR制度の概要
BaFinは、低金利環境が続く中で、生命保険会社の健全性の強化を図るために、2011年度決算から、新たに一定のルールに基づいて強制的に追加責任準備金の積立を求める、いわゆるZZR(Zinszusatzreserve:Additional Provision to the Premium Reserve)と言われる制度を導入した。
具体的には、「ドイツ連邦銀行(Deutsche Bundesbank)によって公表されるユーロの10年スワップレートの10年平均2」に基づいて決定される「参照利率(Referenzzins)」を算出し、この参照利率を上回る予定利率で責任準備金を算出している契約については、当初15年間はこの参照利率(16年目以降は契約時の予定利率をそのまま)を使用して、責任準備金を再評価しなければならない。
強制的な追加責任準備金積立制度であるZZRについては、その手法等は責任準備金命令(DeckRV)に規定されており、不足額の算出も機械的に行われる。こうして強制的に積み立てられる追加責任準備金については、将来参照利率が上昇等して、積立の必要がなくなった場合には、取り崩しが行われる。
2 毎年度の数値は、毎月末数値の12ヶ月平均が使用されるが、決算年度だけは1~9月の9ヶ月平均が使用される。
なお、2014年7月の生命保険改革法以前は、10年国債利回りを使用していた。
ただし、現在のような低金利環境が続くのであれば、新規投資と再投資の利回りは2%未満とならざるを得ず、2%という保証水準の利回りも持続的には達成できないことから、さらなるZZRの積立が求められてくることになる。
3―今回のZZR制度の見直し案について
今回、BaFinとDAV(ドイツアクチュアリー会)によって開発された見直し後のZZR制度の方式は、「回廊法(コリドー法)」(Korridor Methode)と呼ばれているものである。その具体的な内容は、DAVの資料に基づくと、以下の通りである。
「x%較正を用いた2M」、「回廊法(コリドー法)」とも呼ばれるものは、参照利率を以下の算式で決定する。
基本的な考え方としては、「参照利率の変動を(前年数値と過去1年の平均値の差の)一定の範囲内に収めることで、金利変動に対する参照利率の変動を緩やかに設定する。」方式である。
•RefZ_beizul(j-1)=前年の参照利率
•RefZ_Ziel(j)=現行の手順による参照利率
•BaseZ(j)=年j の年間平均値
•Deviation_max(j)= x%* Abs(RefZ_beizul(j-1)- BaseZ(j))
最大偏差:前年の参照利率と過去1年の平均値のx%
•ObGr(j)= RefZ_beizul(j-1)+ Deviation_max(j) 上限
•UntGr(j)= RefZ_beizul(j-1)-Deviation_max(j) 下限
•RefZ_beizul *(j)
= RefZ_Zielj)。 UntGr(j)≦RefZ_Ziel(j)≦ObGr(j)の場合
= ObGr(j); ObGr(j)<RefZ_Ziel(j)の場合
= UntGr(j); RefZ_Ziel(j)<UntGr(j)の場合
上限と下限の範囲内
•RefZ_beizul(j)
= RefZ_beizul(j-1)
; RefZ_beizul *(j)<RefZ_beizul(j-1)<BaseZ(j)
又はRefZ_beizul *(j)> RefZ_beizul(j-1)> BaseZ(j)の場合
= RefZ_beizul *(j);その他
上記数値が一定の条件を満たす場合、前年の参照利率に据置
(金利が上昇しているのに上記数値が前年数値を下回る場合や金利が下降しているのに上記数値が前年数値を上回る場合)
また、この計算式に現われるx%が「Xファクター」と呼ばれ、金利の変動のスピードを表すことになる。この割合が議論の的になっていたが、今回の財務省のドラフト法案ではx=9、即ち「9%」となっている。
なお、保険業界団体は、x%については、6.5%とより小さい(=変動の小さい)Xファクターの設定を要望していたようだが、財務省のドラフトはこれよりも大きな変動とする案となっている。
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