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年金改革ウォッチ 2018年9月号~ポイント解説:基礎年金の水準低下への対策
保険研究部 上席研究員・年金総合リサーチセンター 公的年金調査室長 兼任 中嶋 邦夫
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1 ―― 先月までの動き
2 ―― ポイント解説:基礎年金の水準低下への対策
1|問題と原因:削減停止の判定方法と経過措置の長期化で、給与が低いほど給付削減が大きく

*1 2009年に公表された見通しでも同じ傾向が見られていましたが(中嶋[2009])、より顕著になりました。
根本的な対策は、構造要因である削減停止の判定方法を変更し、基礎年金と厚生年金の削減停止を揃えることです。それには2つの方法があります。

もう1つは、国民年金と厚生年金を合算した収支で削減停止を判定する方法です(図表3のC)*3。現在は、全加入者共通の基礎年金の削減停止を、公的年金全体の1/10の規模しかない国民年金財政だけで決めていますが、この方法では公的年金全体で判断します。
この2つの対策は、基礎年金と厚生年金の削減停止が同時になるため、両者の給付のバランスを固定することになります。現在は、特例措置の影響で、現在の制度ができた2004年度よりも基礎年金の水準が高めになっているので、その修正策も考える必要があります*4。
*2 厚生労働省(2002)「年金改革の骨格に関する方向性と論点」, p.107。
*3 国民年金と厚生年金の財政がそれぞれ均衡するには調整弁が2つは必要ですが、合算すれば調整弁が1つで済みます。
*4 例えば、厚生年金の給付削減の一定期間停止(その間、基礎年金は削減継続)などが考えられます。
3|部分的な対策:拠出期間延長で基礎年金水準や逆進度合いは改善するが、解決には至らず
*5 他に、厚生年金の基礎年金拠出金算定対象者を国民年金の2~3号被保険者の全員に拡大することも考えられます。
4|第3の対策:適用拡大に該当すれば年金額全体が増えるが、既適用者は問題が改善せず
7月30日の年金部会では、給付削減の仕組みは見直さずに厚生年金の適用拡大で対処する、という意見が出ました。適用拡大に該当すれば、基礎年金に加えて見直し後に加入した分の厚生年金も受給できるため、年金額全体が増えます。しかし、ある程度現実的な拡大(図表3のE)では年金財政の改善は小さく、既適用者の逆進的な削減はほとんど改善しません。
5|対策に伴う課題:国庫負担は、現在の見通しより増えるが、当初計画の内枠には収まる
これらの対策で基礎年金の水準低下が改善されると、現在の見通しよりも国庫等の負担が増えます。基礎年金給付費の1/2を国庫等が負担する仕組みだからです*6。ただ、現在の見通しは今の制度ができた2004年の見通しを下回っており、前述の対策で増えても2004年の見通しを下回ります。逆進的な削減になる問題と財政負担とのバランスが要検討点です。
*6 社会保障・税一体改革で消費税率が引き上げられる大きな要因になりました。
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03-3512-1859
(2018年09月04日「保険・年金フォーカス」)
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