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- FIFAワールドカップの結果をアクチュアリーとAIが予測-果たして、どちらの予測があたるのか-
2018年06月19日
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3―Goldman SachsのAI(人工知能)による予測
次に、投資銀行Goldman Sachsは、独自のAI(人工知能)アルゴリズムに基づいて、結果を引き出している。
1|具体的なアプローチ 具体的なアプローチについては、報告書で、以下のように概要が説明されている。
さらに、より詳しく以下のように説明されている。
各種の変数が全体的な説明力にどの程度貢献しているのかについては、チームのレーティングが40%と最も高く、次がプレーヤーのレーティングが25%、最近のチームや対戦相手の実績(最近10試合の勝敗の割合)がそれぞれ10%弱で続いている。
「20万のモデル、『機械学習』の最近の進展を利用して、チームの特性や個々の選手のデータを調べて、どの要因が試合のスコアを予測するのに役立つかを分析する。これにより、私たちに多数の予測がもたらされ、それらが全体的な予測を生成するために結合される。各チームがラウンドを進行する確率を測定するために、トーナメントの可能な進展を100万回シミュレートする。」
さらに、より詳しく以下のように説明されている。
「チームの特性、個々のプレーヤー、最近のチームのパフォーマンスに関するデータを、4つの異なるタイプの機械学習モデルに入力して、各試合で獲得したゴール数を分析する。モデルは、2005年以来の競争力のあるワールドカップと欧州カップの試合のスコアを使って、得点と得点の関係を学ぶ。変数の代替組み合わせを循環させることによって、成功のためにどの特徴が重要か、どれがベンチに留まっているべきかの感覚を得る。次に、このモデルを使用して、トーナメントの各対決で得点されるゴール数を予測し、丸められたスコアを使用して勝者を決定する。」
各種の変数が全体的な説明力にどの程度貢献しているのかについては、チームのレーティングが40%と最も高く、次がプレーヤーのレーティングが25%、最近のチームや対戦相手の実績(最近10試合の勝敗の割合)がそれぞれ10%弱で続いている。
因みに、Goldman Sachsは過去3回のワールドカップにおいてもブラジルが優勝することを予測していたが、それぞれ2006年ドイツ大会はイタリア、2010年南アフリカ大会はスペイン、2014年ブラジル大会はドイツが優勝しており、結果として優勝国を当てることはできなかった。
なお、Goldman Sachsの予測によれば、日本の優勝確率は24位で0.4%となっており、極めて低い確率であることには変わりはないが、ADDACTISの予測に比べれば、日本にとっては優しい結果となっている。
さらに、日本が決勝トーナメントに進出する確率も36.5%とかなり高くなっている。ただし、これは参加国中22位の水準である。
また、各グループの結果も予測しているが、これによれば日本は1分け2敗(セネガルと引き分け)となり、予選リーグで敗退する予測になっている。
なお、Goldman Sachsの予測によれば、日本の優勝確率は24位で0.4%となっており、極めて低い確率であることには変わりはないが、ADDACTISの予測に比べれば、日本にとっては優しい結果となっている。
さらに、日本が決勝トーナメントに進出する確率も36.5%とかなり高くなっている。ただし、これは参加国中22位の水準である。
また、各グループの結果も予測しているが、これによれば日本は1分け2敗(セネガルと引き分け)となり、予選リーグで敗退する予測になっている。
3|予測結果(決勝の組み合わせ)
決勝の組み合わせについては、ADDACTISと同様に、ブラジルとドイツを予測している。フランスの優勝確率が単独では2位であるにも関わらず、決勝の組み合わせがブラジルとフランスにならないのは、決勝トーナメントの組み合わせで、ブラジルとフランスが各グループを1位通過して、順当に勝ち進んでいけば、両チームは準決勝で対戦することになるからである。
なお、決勝の結果については、ブラジルが1.70ゴールを挙げて、ドイツの1.41ゴールを上回り、優勝するとしている。
決勝の組み合わせについては、ADDACTISと同様に、ブラジルとドイツを予測している。フランスの優勝確率が単独では2位であるにも関わらず、決勝の組み合わせがブラジルとフランスにならないのは、決勝トーナメントの組み合わせで、ブラジルとフランスが各グループを1位通過して、順当に勝ち進んでいけば、両チームは準決勝で対戦することになるからである。
なお、決勝の結果については、ブラジルが1.70ゴールを挙げて、ドイツの1.41ゴールを上回り、優勝するとしている。
4―最後に
以上、ワールドカップロシア大会の結果については、多くの予測や予想が出されているが、その中で「アクチュアリーとAIによるという2社の例」を紹介してきた。予測手法が過去のデータ等をベースにしているとはいえ、その予測手法の違いやアクチュアリーという専門家とAIによる予測との違いから、その予測結果はかなり異なる特徴を有するものとなっている。
・どちらの予測でも今回のワールドカップでの優勝確率の最も高い国はブラジルである。
・過去に優勝経験がある有力国の優勝確率については、両者でかなり様相が異なっている。
・AIは、ブラジルに、より高い評価を与えている。
・アクチュアリーの優勝確率の予測は、有力国に集中しているが、AIの予測は相対的に有力国以外にも幅広く分布している。さらに、ポルトガルやベルギーといった優勝未経験国の優勝確率もかなり高くなっている。
・決勝の組み合わせを予測するのは、予選リーグでの各種の番狂わせの発生等を考慮するとかなり難しい。それでも強いチームは勝ち上がってくることが予測されることになる。
さて、皆さんは、アクチュアリーとAI、どちらの予測がより適切と考えるだろうか。
日本人としてはAIの予測の方が若干は心地よく感じられるかもしれない。それでも、予選リーグの予測は1分け2敗と厳しい内容である。日本人としては、これらの予測を大きく上回る結果を期待したいものである。
なお、念のため最後に一言だけ添えておく。ここまで、アクチュアリー対AIという言い方をしてきたが、あくまでもそれぞれの専門家等の資格を有する個人やグループ、会社による予測である。アクチュアリーと言っても、同様のデータに基づいていても、異なる予測手段や判断基準の採用で、別のアクチュアリーは今回の結果とは異なる結果を導き出すことになるかもしれない。AIも然りだろう。
いずれにしても、アクチュアリーとAI、どちらの予測がより的中することになるのか。あるいは両者の予測とはかなり異なる結果が発生することになるのか。1ヵ月後の7月15日(日)には決勝が行われ、結果が判明することになる。
引き続き、これからの1ヵ月間が大変楽しみである。
・どちらの予測でも今回のワールドカップでの優勝確率の最も高い国はブラジルである。
・過去に優勝経験がある有力国の優勝確率については、両者でかなり様相が異なっている。
・AIは、ブラジルに、より高い評価を与えている。
・アクチュアリーの優勝確率の予測は、有力国に集中しているが、AIの予測は相対的に有力国以外にも幅広く分布している。さらに、ポルトガルやベルギーといった優勝未経験国の優勝確率もかなり高くなっている。
・決勝の組み合わせを予測するのは、予選リーグでの各種の番狂わせの発生等を考慮するとかなり難しい。それでも強いチームは勝ち上がってくることが予測されることになる。
さて、皆さんは、アクチュアリーとAI、どちらの予測がより適切と考えるだろうか。
日本人としてはAIの予測の方が若干は心地よく感じられるかもしれない。それでも、予選リーグの予測は1分け2敗と厳しい内容である。日本人としては、これらの予測を大きく上回る結果を期待したいものである。
なお、念のため最後に一言だけ添えておく。ここまで、アクチュアリー対AIという言い方をしてきたが、あくまでもそれぞれの専門家等の資格を有する個人やグループ、会社による予測である。アクチュアリーと言っても、同様のデータに基づいていても、異なる予測手段や判断基準の採用で、別のアクチュアリーは今回の結果とは異なる結果を導き出すことになるかもしれない。AIも然りだろう。
いずれにしても、アクチュアリーとAI、どちらの予測がより的中することになるのか。あるいは両者の予測とはかなり異なる結果が発生することになるのか。1ヵ月後の7月15日(日)には決勝が行われ、結果が判明することになる。
引き続き、これからの1ヵ月間が大変楽しみである。
(2018年06月19日「基礎研レター」)
中村 亮一のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
---|---|---|---|
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