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- FIFAワールドカップの結果をアクチュアリーとAIが予測-果たして、どちらの予測があたるのか-
2018年06月19日
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1―はじめに
サッカーの2018FIFAワールドカップロシア大会が6月14日に開幕した。開幕前には、いくつかの機関から結果に関する予測や予想が出されている。私が注目したのは、フランスのアクチュアリアル・コンサルティング会社で保険ソフトウェアベンダーでもあるADDACTISが行ったもの1と、投資銀行のGoldman Sachsが公表したAI(Artificial Intelligence:人工知能)によるもの2である。
私自身がアクチュアリー3であることやAI時代のアクチュアリーの役割についてはここ最近話題に上ることも多いことから、両者の手法とその結果の差異を大変興味深く感じたので、調べてみた。
1 プレスリリース資料 http://www.addactis.com/wp-content/uploads/sites/2/2018/06/PR-FIFA-Worldcup-Do-actuaries-already-know-the-winner.pdf
2 報告書「The World Cup and Economics 2018」
http://www.goldmansachs.com/our-thinking/pages/world-cup-2018/multimedia/report.pdf
3 保険や年金、金融などの多彩なフィールドで活躍する「数理業務のプロフェッショナル」(日本アクチュアリー会HPより)
私自身がアクチュアリー3であることやAI時代のアクチュアリーの役割についてはここ最近話題に上ることも多いことから、両者の手法とその結果の差異を大変興味深く感じたので、調べてみた。
1 プレスリリース資料 http://www.addactis.com/wp-content/uploads/sites/2/2018/06/PR-FIFA-Worldcup-Do-actuaries-already-know-the-winner.pdf
2 報告書「The World Cup and Economics 2018」
http://www.goldmansachs.com/our-thinking/pages/world-cup-2018/multimedia/report.pdf
3 保険や年金、金融などの多彩なフィールドで活躍する「数理業務のプロフェッショナル」(日本アクチュアリー会HPより)
2―ADDACTISのアクチュアリーによる予測
ADDACTISの資料によれば、ADDACTISは、フランスのアクチュアリーのチームであるACTUARISがthe addactis® Modeling softwareと呼ばれる確率論的モデリングソフトウェアを使って、500万回のシミュレーションを実施して、FIFAワールドカップロシア大会の結果予測を行っている。このチームは、2014年のワールドカップブラジル大会において、ドイツとアルゼンチンの決勝戦とドイツの優勝を正しく予測した。
1|具体的なアプローチ
具体的な保険数理的アプローチについては、プレスリリース資料で、以下のように説明されている。
具体的な保険数理的アプローチについては、プレスリリース資料で、以下のように説明されている。
「マルコフ連鎖モンテカルロモデル を適用し、the addactis® Modeling software の使用を通じて、各試合の最も可能性の高い結果を探し出し、試合が進むにつれて敗者を控除していくのではなくて、500万のシナリオをシミュレートしている。シミュレーションモデルは、将来の可能性のある全てのケースと使用される基準をレビューしている。」
因みに、この予測によれば、日本の優勝確率は0.00%で32カ国中31位となっている。0%ということではないかもしれないが、小数点以下2桁の有効数字では数字が現われないほど極めて低い確率となっている。参加32カ国中では、日本に加えて、韓国、サウジアラビア、パナマの4カ国が0.00%となっている。アジア・太平洋州の国では、イランが0.11%で最も高く、オーストラリアは0.01%となっている。
次に、予選リーグを勝ち抜いて、決勝トーナメントに進出する確率については、日本は12.47%で29位、日本より低いのは、オーストラリア11.76%、韓国9.09%、パナマ3.45%となっている。これは、基本的には各国の実力を反映する形にはなっているが、予選リーグの組み合わせも考慮された結果となっている。
次に、予選リーグを勝ち抜いて、決勝トーナメントに進出する確率については、日本は12.47%で29位、日本より低いのは、オーストラリア11.76%、韓国9.09%、パナマ3.45%となっている。これは、基本的には各国の実力を反映する形にはなっているが、予選リーグの組み合わせも考慮された結果となっている。
3|予測結果(決勝の組み合わせ)
ADDACTISは決勝の組み合わせも予測しているが、これによると最も可能性が高い決勝戦はブラジル対ドイツで5.49%、次がブラジル対スペインで4.56%、以下、確率3%を超える組み合わせは、ドイツ対フランス3.88%、スペイン対フランス3.79%、ブラジル対アルゼンチン3.54%、フランス対アルゼンチン3.28%となっている。ただし、以上の6つの組み合わせの合計確率は24.54%で、結構高いようでそれでも1/4を占めるにすぎない。決勝の組み合わせを予測するのは大変難しい。
ADDACTISは決勝の組み合わせも予測しているが、これによると最も可能性が高い決勝戦はブラジル対ドイツで5.49%、次がブラジル対スペインで4.56%、以下、確率3%を超える組み合わせは、ドイツ対フランス3.88%、スペイン対フランス3.79%、ブラジル対アルゼンチン3.54%、フランス対アルゼンチン3.28%となっている。ただし、以上の6つの組み合わせの合計確率は24.54%で、結構高いようでそれでも1/4を占めるにすぎない。決勝の組み合わせを予測するのは大変難しい。
4|直近の実際の試合結果の状況
因みに、このレターを出稿した6月19日時点では、予選リーグにおいて、(日本はまだだが)各チームがほぼ1試合を消化している。優勝確率が高い上位5カ国のうち、ドイツがメキシコに敗れる等、勝利を収めたのはフランスのみである。また、もしブラジルがEグループで1位となり、ドイツがFチームで2位となった場合、決勝トーナメントの1回戦でブラジルとドイツが対戦することになり、決勝での対決と言うシナリオは崩れることになる。
なお、ADDACTISは予選リーグの終了後に、新たなシミュレーションを行い、予測を洗練するとしている。
因みに、このレターを出稿した6月19日時点では、予選リーグにおいて、(日本はまだだが)各チームがほぼ1試合を消化している。優勝確率が高い上位5カ国のうち、ドイツがメキシコに敗れる等、勝利を収めたのはフランスのみである。また、もしブラジルがEグループで1位となり、ドイツがFチームで2位となった場合、決勝トーナメントの1回戦でブラジルとドイツが対戦することになり、決勝での対決と言うシナリオは崩れることになる。
なお、ADDACTISは予選リーグの終了後に、新たなシミュレーションを行い、予測を洗練するとしている。
(2018年06月19日「基礎研レター」)
中村 亮一のレポート
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