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- 景気ウォッチャー調査(18年5月)~2018年入り後、景況感は停滞~
1.景気の現状判断DI(季節調整値):2018年入り後は停滞
家計動向関連では、GW期間中の消費動向は好不調が分かれた。GWを過ぎると、ガソリン価格の高騰等が響き、消費が落ち込んでいることが指摘された。企業動向関連では、好調が続く受注だが、素材業種など一部の企業からは受注の落ち込みがみられ、価格転嫁も遅れている。雇用関連は社員の待遇を改善する動きや、人材を確保するため、募集要件を広げる企業がみられた。なお、内閣府は、基調判断を「緩やかな回復基調が続いている」から「緩やかな回復基調が続いているものの、一服感がみられる」に引き下げた。
2.家計動向関連が大幅に悪化
企業動向関連では、非製造業(前月差+0.3ポイント)が小幅に改善したが、製造業(同▲2.7ポイント)は大幅に悪化した。コメントをみると、「建設機械、自動車、産業機械等、当社の関連する産業分野のほぼ全てで忙しく、当面は落ちる見込みがない」(北関東・一般機械器具製造業)など資本財関連を中心に生産活動が活発なようだ。一方で、「今年に入って前期割れの状況であった。受注量も落ちているように思う」(四国・パルプ・紙・紙加工品製造業)や「産業機器材は依然好調であるが、エレクトロニクス材の受注に陰りが見え始めている」(中国・鉄鋼業)など素材関連では受注が落ちているというコメントも一部にみられたことに加え、「鉄鋼メーカーが大手ユーザーへの値上げを実施していないため、当社の値上げも拒否されている。コスト上昇分の価格転嫁が進まず、採算が悪化している」(近畿・金属製品製造業)など、価格転嫁への動きが進んでいないようだ。
雇用関連では、「正社員への転換や賃金アップなど、従業員の処遇改善に努める企業が増加している」(東北・職業安定所)や「取引先でも求人ニーズはあるが、人材が出てこない。フルタイムやパートタイム、勤務日数などの幅広い条件を提示することで、人材の確保を進めている」(近畿・人材派遣会社)など、社員の待遇改善を実施したり、募集要件を広げる企業がみられる。
3.景気の先行き判断DI(季節調整値):企業動向関連は1年2ヵ月ぶりに50を下回る
企業動向関連では、「原材料価格の上昇に伴い利益率が大幅に低下しており、秋口に向けて値上げを予定しているが、消費動向は厳しくなる」(中国・食料品製造業)や、「原材料、人件費、物流費の上昇が避けられない状況だが、販売価格に全てのコストアップ分を転嫁できない」(四国・食料品製造業)など、食料品を製造する企業からは価格転嫁による消費の落ち込みや価格転嫁に二の足を踏むコメントが目立った。また、「原油価格の上昇に伴い原材料価格が高騰してきている。しかし、製品は流通大手が強いため、価格転嫁が難しい状況である」(四国・化学工業)や「夏場の季節商材の動きが活発化する時期に入るが天候次第の部分もある。経営を圧迫する要因の一つである燃料油の高騰が続いており予断を許さない状況である」(四国・輸送業)など、素材関連や輸送業等ではエネルギー価格の上昇が懸念されている。
雇用関連では、「減少が続いてきた求職者数については、直近は減少幅が小さくなっており、中高年層では増加に転じている。人手不足による求人の増加に伴い、より良い仕事を探す求職者や、定年後も就労を希望する求職者が増えている。今後は労働条件の改善や、就業率の上昇が見込まれる」(近畿・職業安定所)など、雇用所得環境の改善を期待するコメントがみられた。一方で、「求人数は多いが、求職者が増えず、景気は良いものの人手不足への対応ができていない状況が続く。業種によっては、人手不足がより深刻化するのではないか」(南関東・職業安定所)や「相変わらず求人が多い業種もあるが、募集広告の掲載枠の大きさを1ランク落とす傾向が表れ始めており、全体的には求人件数の減少傾向がより強まることを懸念している」(北海道・求人情報誌製作会社)など、人手不足の深刻化や人が集まらず採用にかける費用を減らす企業が出ていることを不安視するコメントがみられた。
景況感は2018年に入り停滞しており、特に家計動向関連は弱い状況が続いている。企業についても、一部業種では受注が落ち込んでいることに加え、幅広い業種で原材料費、人件費など様々な要因からコストが増加しており、先行きに対する懸念が強まっている。雇用所得環境の改善は続いており、雇用関連の景況感は高水準にあるものの、全体の景況感は停滞した状況が続きそうだ。
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白波瀨 康雄
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(2018年06月11日「経済・金融フラッシュ」)
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