2018年05月02日

欧州大手保険グループの地域別の事業展開状況-2017年決算数値等に基づく現状分析-

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6Aegon
(1)地域別の業績-2017年の結果-
Aegonは、世界の20カ国以上で事業展開している。

資産ベースで、自国のオランダの構成比が2割強、英国も2割程度を占めているが、米国を中心とした北米・中南米の構成比が5割程度と高くなっている。

Transamericaのブランドを中心とする米国子会社グループは、2017年末の認容資産で、生命保険・健康保険グループで第11位となっている。ブラジルとメキシコで事業展開しているが、カナダの生命保険事業や資産管理事業は2015年7月に売却している。

また、損害保険事業は欧州でのみ展開しているが、その全体における位置付けは高くない。
Aegonは、2015年11月3日にFSB(金融安定理事会)が公表したG-SIIsのリストに、Generaliに代わって、新たに加えられている。
保険事業の地域別内訳(2017年)/うち 欧州の主要国別内訳
(2)地域別の業績-2016年との比較-
2016年との比較では、全体では、保険料が減少しているが、営業利益は増加している。

米国では、事業費の削減と支払率の改善に加えて、好調な株式市場実績からの手数料の増加等が寄与して、営業利益が11%増加した。

英国において、米国同様に好調な株式市場実績からの手数料の増加等が寄与したこと及び投資プラットフォームCofundsが加わった影響により、営業利益が倍増したことから、欧州全体でも8%増加した。

アジアでは、死亡率の低下や事業費削減及び高い継続率等により中国における事業が好調だったこと等から、営業利益が大幅に増加した。

新契約価値については、2016年に各地域で対前年大きなマイナスとなったことからの反転もあり、21017年は欧州を除いて増加している。
保険事業の地域別内訳(2016年から2017年に向けての増加額と進展率)/うち 欧州の主要国別内訳(2016年から2017年に向けての増加額と進展率)
(参考)地域別のROE
なお、Aegonは、地域別のROEを開示しているが、その状況は以下の図表の通りである。

これによれば、アジアのROEは高くなく、オランダや中東欧が高くなっている。
保険事業のROE(資本収益率)の状況
(3)地域別展開に関する方針及びトピック
Aegonは、保険事業に関して、例えば、以下の地域別展開の見直し等を行っている。

・米国の生命再保険事業のブロックをSCORに売却し、関連するキャプチィブを解散することを公表(2017年12月)
・Rothesay Part VIIの移転
・Cofunds の獲得
・米国における支払年金、BOLI(銀行所有型生命保険)、COLI(会社所有型生命保険)のWilton Reへの売却
・オランダの金融アドバイザー事業ユニットUMGの売却
・Aegon IrelandのAGER Bermuda Holdingへの売却
・メキシコでのSeguros ArgosとのJV開始
・アジアのAegon Insight事業のランオフ

Aegonは、現在は、自国のオランダや英国を中心とする欧州、米国、ブラジル、メキシコを中心とするアメリカが2大地域となっているが、今後はアジア各国に事業展開を行って、その位置付けを高めていくことを目指している。

7Zurich
(1)地域別の業績-2017年の結果-
Zurichも、世界の210以上の国と地域で、生命保険・損害保険等のサービスを提供している。

欧州では、自国のスイス以外に、ドイツや英国から高い営業利益を上げている他、スペイン、イタリア、アイルランド等からの営業利益も有意な水準となっている。ただし、こうした欧州各国からの構成比は全体の6割であり、残りの4割を米国8、中南米、アジア・太平洋等が占めている。

特に、他社との比較では、アルゼンチン、ブラジル、チリ、メキシコ等の中南米の位置付けが高いのが特徴的である。Banco Santanderとの提携によるZurich Santanderにおける販売が貢献している。
生命保険事業(Global Life)の地域別内訳(2017年)/うち 欧州の主要国別内訳
 
8 Zurichの米国子会社グループは、他の米国事業を有する4社の米国子会社グループのような大きな規模を有していない。


(2)地域別の業績-2016年との比較-
Zurichの決算数値は米ドル建で報告されているため、2016年との比較を見る上では、2017年の米ドルの主要通貨に対する状況を考慮しておく必要がある。

営業利益について、欧州・中東・アフリカでは、スイス、スペイン、アイルランド、イタリア等で成長したが、英国での特殊要因による収益の減少の影響を受けて、全体では8%減少した。米国での営業利益は大きく改善してほぼ収支が均衡する水準になった。中南米では引き続き2割増加した。アジア・太平洋は、日本、オーストラリア及びマレーシアにおける継続的な成長により、74%と大幅に増加した。

MCEVや新契約価値は、ともに28%と大きく増加した。基本的には各地域で増加しているが、特にアジア・太平洋での進展率が大きい。
生命保険事業(Global Life)の地域別内訳(2016年から2017年に向けての増加額と進展率)/うち 欧州の主要国別内訳(2016年から2017年に向けての増加額と進展率)
(3)地域別展開に関する方針及びトピック
Zurichは、保険事業に関して、例えば、以下の地域別展開の見直し等を行っている。

・Cover-More Group Limited とHalo Insurance Limited.の買収
・ドライバー、ディーラー及び製造業者を結ぶテレマティクス・ソリューションのプロバイダーであるBright Box HK Limitedの買収(2017年12月)
・Australia and New Zealand Banking Group (ANZ).のオーストラリアの生命保険会社OnePath Lifeの買収
・ドイツの医療過誤ポートフォリオのCatalinaへの売却(2017年11月)
・英国の学生ポートフォリオEndsleighのブローカーA-Plan Holdingsへの売却(2018年以降)
・シンガポールの閉鎖生命保険事業のSingapore Lifeへの売却(2018年以降)
・QBEのラテンアメリカ事業の買収(2018年)→ ラテンアメリカで第4位の保険会社へ

Zurichの生命保険事業の国際的な事業展開は、欧州と中南米が中心で、これまでのところアジアに関しては、他の欧州大手保険グループに比較して、中国やインドにおけるプレゼンスという面では、相対的に限定されていたが、今後はこうした市場への対応が注目されるところとなる。
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中村 亮一

研究・専門分野

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