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2018年05月02日
欧州大手保険グループの地域別の事業展開状況-2017年決算数値等に基づく現状分析-
2-2.営業利益の状況
次に、保険事業の営業利益の地域別内訳を見てみる。地域別の利益配分等にも各社毎の考え方が反映されているが、各国における子会社毎や各社間の収益状況の差異等も一定程度比較できるものと考えられる。なお、一般的には、国際部門や再保険関係の損益が「その他」地域に含まれていることから、グループによっては「その他」の構成比が、特に損保事業を中心に大きくなっている。
(1)2017年の結果
営業利益ベースでも、各社の地域別の構成比の状況は、保険料と基本的には変わらないが、地域別の収益状況や各地域での深耕度等を反映して、若干異なる傾向となっている。
Aegon以外の各社においては、自国以外の欧州の構成比が4割程度と大きなものとなっている。
AXAの生保では、アジアの構成比が25%と高くなっており、米国の18%と合わせた2つの地域で43%となっている。
Allianzは、米国が24%と高くなっているが、アジア・太平洋は5%程度にとどまっている。
Generaliの生保では、イタリアが40%と保険料の構成比以上に高くなっている。
Prudentialは、アジアが37%となり、2015年の30%、2016年の35%に比べて、さらにその構成比が高くなってきている。
Avivaは、英国での営業利益が7割を占めており、殆どの営業利益は欧州からである。
Aegonは、オランダの構成比は25%に過ぎず、米国の営業利益が66%と全体の3分の2を占めている。
Zurichは、アジア・太平洋の構成比が10%であることに加えて、中南米等のその他が2割を超えて、他社と比べて際立って高くなっている。
このように営業利益ベースでみると、米国事業を有する会社においては、そのグループ内での位置付けがさらに高いものとなっている。
アジア・太平洋については、Prudentialが圧倒的に高い位置付けを占めているが、AXAも高水準の営業利益を計上して、そのグループにおけるこの地域の位置付けの高さを示している。Zurichについても、アジア・太平洋のシェアは10%となっている。これらに比べて、AllianzやGenerali、さらにはAvivaやAegonやZurichについては、一定の保険料水準を計上し、その会社全体における位置付けを高めてきてはいるものの、そのグループ全体における構成比はいまだ一ケタ台である。
次に、保険事業の営業利益の地域別内訳を見てみる。地域別の利益配分等にも各社毎の考え方が反映されているが、各国における子会社毎や各社間の収益状況の差異等も一定程度比較できるものと考えられる。なお、一般的には、国際部門や再保険関係の損益が「その他」地域に含まれていることから、グループによっては「その他」の構成比が、特に損保事業を中心に大きくなっている。
(1)2017年の結果
営業利益ベースでも、各社の地域別の構成比の状況は、保険料と基本的には変わらないが、地域別の収益状況や各地域での深耕度等を反映して、若干異なる傾向となっている。
Aegon以外の各社においては、自国以外の欧州の構成比が4割程度と大きなものとなっている。
AXAの生保では、アジアの構成比が25%と高くなっており、米国の18%と合わせた2つの地域で43%となっている。
Allianzは、米国が24%と高くなっているが、アジア・太平洋は5%程度にとどまっている。
Generaliの生保では、イタリアが40%と保険料の構成比以上に高くなっている。
Prudentialは、アジアが37%となり、2015年の30%、2016年の35%に比べて、さらにその構成比が高くなってきている。
Avivaは、英国での営業利益が7割を占めており、殆どの営業利益は欧州からである。
Aegonは、オランダの構成比は25%に過ぎず、米国の営業利益が66%と全体の3分の2を占めている。
Zurichは、アジア・太平洋の構成比が10%であることに加えて、中南米等のその他が2割を超えて、他社と比べて際立って高くなっている。
このように営業利益ベースでみると、米国事業を有する会社においては、そのグループ内での位置付けがさらに高いものとなっている。
アジア・太平洋については、Prudentialが圧倒的に高い位置付けを占めているが、AXAも高水準の営業利益を計上して、そのグループにおけるこの地域の位置付けの高さを示している。Zurichについても、アジア・太平洋のシェアは10%となっている。これらに比べて、AllianzやGenerali、さらにはAvivaやAegonやZurichについては、一定の保険料水準を計上し、その会社全体における位置付けを高めてきてはいるものの、そのグループ全体における構成比はいまだ一ケタ台である。
3―欧州大手保険グループ各社の地域別の事業展開状況
ここでは、欧州大手保険グループ各社の生命保険事業について、保険料、営業利益に加えて、資産、EV(Embedded Value)7及び新契約価値等の状況を地域別に報告する。
さらに、各社の地域別の事業展開に関係するトピックについても報告する。
7 欧州大手保険グループは、これまでEEV(ヨーロピアンEV)とMCEV(市場整合的EV)のいずれかに基づくEV(Embedded Value:エンベデッド・バリュー)を地域別に公表してきたが、2017年は公表しない会社やグループ全体の数値のみの公表に留めた会社もある等EVの開示の見直しを行っている。
1|AXA
(1)地域別の業績-2017年の結果-
AXAは、世界の60カ国以上で保険事業と資産管理事業を展開している。
AXAの生命保険事業の営業利益は、(1)自国のフランス、(2)自国以外の欧州、(3)米国、(4)日本を含むアジア、の4地域でそれぞれ重要な水準を確保してきている。
Annual Reportによれば、その生命保険事業に関して、収入保険料や新契約保険料等の規模で、自国のフランスでのシェアは8.9%で第3位であるものの、最大の米国市場では、AXAの子会社グループは、生命保険では1.7%のシェアで第19位、変額年金では10.8%のシェアで第3位となっている。また、2017年末の認容資産は、生命保険・健康保険グループで第14位となっており、その営業利益のグループ全体における構成比は18%となっている。
さらに、スイスでは26.0%のシェアで第2位、ベルギーでは8.4%のシェアで第3位であることに加えて、インドネシアでは8.6%のシェアで第2位、タイでは12.4%のシェアで第4位等、欧州やアジアの国々で高いプレゼンスを確保している。なお、ドイツでは2016年ベースで、生命保険が3.8%のシェアで第8位、医療保険は7.7%のシェアで第4位となっている。
AXAは、2016年までは、生保と損保別に保険料等の詳細なデータを開示していたが、2017年は、営業利益(underlying earnings)を除けば、基本的に生保と損保の区分をすることなく、国別の数値等の公表に留めている。このため、2016年までとは異なる分析内容となっている。
新契約価値ベースでみると、日本を含むアジアが約4割の構成比となっている。日本でのシェア(かんぽ生命除きベース)は、生命保険は1.7%で第15位であるが、医療保険では2.6%で第12位としており、その市場の規模から、AXAグループ全体の中では、営業利益(生命・貯蓄・医療)で16%と高い位置付けを有している。
なお、かつては地域別に開示されていたEEVの値も2016年以降は全体数値のみの開示となっている。
さらに、各社の地域別の事業展開に関係するトピックについても報告する。
7 欧州大手保険グループは、これまでEEV(ヨーロピアンEV)とMCEV(市場整合的EV)のいずれかに基づくEV(Embedded Value:エンベデッド・バリュー)を地域別に公表してきたが、2017年は公表しない会社やグループ全体の数値のみの公表に留めた会社もある等EVの開示の見直しを行っている。
1|AXA
(1)地域別の業績-2017年の結果-
AXAは、世界の60カ国以上で保険事業と資産管理事業を展開している。
AXAの生命保険事業の営業利益は、(1)自国のフランス、(2)自国以外の欧州、(3)米国、(4)日本を含むアジア、の4地域でそれぞれ重要な水準を確保してきている。
Annual Reportによれば、その生命保険事業に関して、収入保険料や新契約保険料等の規模で、自国のフランスでのシェアは8.9%で第3位であるものの、最大の米国市場では、AXAの子会社グループは、生命保険では1.7%のシェアで第19位、変額年金では10.8%のシェアで第3位となっている。また、2017年末の認容資産は、生命保険・健康保険グループで第14位となっており、その営業利益のグループ全体における構成比は18%となっている。
さらに、スイスでは26.0%のシェアで第2位、ベルギーでは8.4%のシェアで第3位であることに加えて、インドネシアでは8.6%のシェアで第2位、タイでは12.4%のシェアで第4位等、欧州やアジアの国々で高いプレゼンスを確保している。なお、ドイツでは2016年ベースで、生命保険が3.8%のシェアで第8位、医療保険は7.7%のシェアで第4位となっている。
AXAは、2016年までは、生保と損保別に保険料等の詳細なデータを開示していたが、2017年は、営業利益(underlying earnings)を除けば、基本的に生保と損保の区分をすることなく、国別の数値等の公表に留めている。このため、2016年までとは異なる分析内容となっている。
新契約価値ベースでみると、日本を含むアジアが約4割の構成比となっている。日本でのシェア(かんぽ生命除きベース)は、生命保険は1.7%で第15位であるが、医療保険では2.6%で第12位としており、その市場の規模から、AXAグループ全体の中では、営業利益(生命・貯蓄・医療)で16%と高い位置付けを有している。
なお、かつては地域別に開示されていたEEVの値も2016年以降は全体数値のみの開示となっている。
なお、AXAが対外的な説明に使用している、「underlying earnings(基礎利益)」は、2017年に7.5%増加して、純利益(net income)とともに初めて60億ユーロを超えたと報告している。
(3)地域別展開に関する方針及びトピック
AXAは、以下の地域別展開の見直し等を行っている。
・2017年1月2日、英国P&C商業ブローカーであるBluefin のMarshへの売却完了
・2017年4月28 日、ルーマニアの事業のVienna 保険グループへの売却完了
・5月10日、米国事業のIPOの意向の公表(市場環境にもよるが、2018年上半期を予定)
・7月3日、AXA Life Europe Limited’のオフショア・インベストメント・ボンド事業のHarcourt Life International dac(その後、Utmost Ireland dacへ名称変更)、Life Company Consolidation Groupの子会社への売却
・2018 年2 月21 日、アゼルバイジャンにおける損害保険会社AXA MBask Insurance company OJSC をMr. Elkhan Garibli に売却する契約を締結
AXAは収益の80%を占める10の市場に最も焦点を当てていくとしている。
一方で、AXAは、中国、インドネシア、フィリピン、タイ、ブラジル、メキシコを「High Potentials(ハイ・ポテンシャル)」として位置付けており、インドネシアやタイでは既に高いプレゼンスを有しているが、他の国々でも高成長に伴うシェア拡大を目指している。
AXAは2018年3月に、XL Groupを153億ドルで買収し、年間保険料総額300億ユーロを有する世界的な損害保険会社を構築することを公表している。この買収について、AXAのThomas Bubert CEOは、「L&S(生命及び貯蓄保険)事業中心から、P&C(損害保険)事業中心に、そのビジネスプロファイルを移行していく独特の戦略的機会である。」とし、「将来のAXAのプロファイルは、金融リスクから離れて、保険リスクに向かって大きくリバランスされていくことになる。」と述べた。この取引は2018年後半に完了することが想定されている。
また、AXAは、AXA US L&S事業とAlliance Bernsteinに対する持分を構成すると予想されるAXA Equitable HoldingsのIPOを通じて、米国からの退出を加速することを想定していると述べている。
これらの動きの意味するところは、まさにAXAのプロファイルを、L&S(生命及び貯蓄保険)事業を通じた金融市場へのエクスポジャーから、P&C(損害保険)事業、さらに今後は医療や保障に関係する保険関係リスクへのエクスポジャーにシフトさせる、との経営方針を反映したものである。AXAの現在の収益は、33%が貯蓄及び資産管理、39%がP&C事業から来ているが、XLの買収及び米国の生命保険事業の売却により、その割合はそれぞれ18%及び50%になると想定されている。
(3)地域別展開に関する方針及びトピック
AXAは、以下の地域別展開の見直し等を行っている。
・2017年1月2日、英国P&C商業ブローカーであるBluefin のMarshへの売却完了
・2017年4月28 日、ルーマニアの事業のVienna 保険グループへの売却完了
・5月10日、米国事業のIPOの意向の公表(市場環境にもよるが、2018年上半期を予定)
・7月3日、AXA Life Europe Limited’のオフショア・インベストメント・ボンド事業のHarcourt Life International dac(その後、Utmost Ireland dacへ名称変更)、Life Company Consolidation Groupの子会社への売却
・2018 年2 月21 日、アゼルバイジャンにおける損害保険会社AXA MBask Insurance company OJSC をMr. Elkhan Garibli に売却する契約を締結
AXAは収益の80%を占める10の市場に最も焦点を当てていくとしている。
一方で、AXAは、中国、インドネシア、フィリピン、タイ、ブラジル、メキシコを「High Potentials(ハイ・ポテンシャル)」として位置付けており、インドネシアやタイでは既に高いプレゼンスを有しているが、他の国々でも高成長に伴うシェア拡大を目指している。
AXAは2018年3月に、XL Groupを153億ドルで買収し、年間保険料総額300億ユーロを有する世界的な損害保険会社を構築することを公表している。この買収について、AXAのThomas Bubert CEOは、「L&S(生命及び貯蓄保険)事業中心から、P&C(損害保険)事業中心に、そのビジネスプロファイルを移行していく独特の戦略的機会である。」とし、「将来のAXAのプロファイルは、金融リスクから離れて、保険リスクに向かって大きくリバランスされていくことになる。」と述べた。この取引は2018年後半に完了することが想定されている。
また、AXAは、AXA US L&S事業とAlliance Bernsteinに対する持分を構成すると予想されるAXA Equitable HoldingsのIPOを通じて、米国からの退出を加速することを想定していると述べている。
これらの動きの意味するところは、まさにAXAのプロファイルを、L&S(生命及び貯蓄保険)事業を通じた金融市場へのエクスポジャーから、P&C(損害保険)事業、さらに今後は医療や保障に関係する保険関係リスクへのエクスポジャーにシフトさせる、との経営方針を反映したものである。AXAの現在の収益は、33%が貯蓄及び資産管理、39%がP&C事業から来ているが、XLの買収及び米国の生命保険事業の売却により、その割合はそれぞれ18%及び50%になると想定されている。
(2018年05月02日「基礎研レポート」)
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【欧州大手保険グループの地域別の事業展開状況-2017年決算数値等に基づく現状分析-】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。
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