2018年04月04日

札幌オフィス市場の現況と見通し(2018年)

金融研究部 主任研究員 佐久間 誠

研究員 竹内 一雅

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4. 札幌オフィス市場のエリア別動向

2017年は全地区で空室率が低下した。2017年12月の空室率は、駅前東西地区で1.00%(前年同期比変化幅▲0.78%)、北口地区1.08%(同▲0.84%)、駅前通・大通公園地区1.72%(同▲0.86%)、創成川東・西11丁目近辺地区4.52%(同▲2.26%)、南1条以南地区5.12%(同▲2.14%)となった。空室率は、相対的に高かった創成川東・西11丁目近辺地区と南1条以南地区で、大きく低下している(図表-10左図)。

募集賃料は、駅前通・大通公園地区(前年比+5.3%)や北口地区(同+3.4%)で上昇が目立ったが、その他の地区も上昇を始めており、募集賃料は上向きに転じている(図表-10右図)。
図表-10 札幌ビジネス地区の地区別空室率・募集賃料の推移(月次)
2017年末時点で最も賃貸可能面積が大きいエリアは、駅前東西地区(28.3%)で、次いで駅前通・大通公園地区(28.1%)、創成川東・西11丁目地区(16.1%)、南1条以南地区(14.8%)、北口地区(12.6%)の順となっている(図表-11)。

2017年は駅前通・大通公園地区で大規模ビルが竣工したが、建替えに伴う募集中止もあり、賃貸可能面積は計0.6千坪減少した。賃貸面積は、全地区で増え、計5.8千坪増加した。その結果、空室面積は全地区で減り、計6.4千坪減少した(図表-12)。
図表-11 札幌ビジネス地区の地区別オフィス面積構成比(2017年)/図表-12 札幌ビジネス地区の地区別オフィス需給面積増分(2017年)

5. 札幌オフィス市場における新規供給・人口見通し

5. 札幌オフィス市場における新規供給・人口見通し

2017年は札幌フコク生命越山ビルが竣工し、2018年以降も毎年、大規模ビルの供給が予定されている。2018年にさっぽろ創世スクエア、2019年に南大通ビル北1条計画、2020年に札幌大同生命ビル建替計画が竣工予定である7(図表-13)。

国勢調査によると、札幌市の2015年の生産年齢人口(15~64歳人口)は123.6万人と、2010年から5.7万人の減少となった。国立社会保障・人口問題研究所によれば、2025年までの10年間で生産年齢人口は8.8%減少する見通しで、他の主要都市と比較しても大きく減少すると予想されている(図表-14)。
図表-13 札幌のオフィスビル新規供給見通し/図表-14 札幌市の年齢3区分別人口の現況と見通し
住民基本台帳人口移動報告によると、2017年の札幌市の転入超過数は+8,779人と、主要地方都市の中で、大阪市に次いで転入超過数が多い(図表-15)。

転入超過数を性別・年齢別に見ると、15 歳~24 歳女性が大幅に転入超過となっていることと、ほぼ全年齢層で転入超過となっていることが特徴的である8(図表-16)。
図表-15 主要都市の転入超過数/図表-16 札幌市の男女年齢別転入超過数(2017年、日本人)
 
7 日本不動産研究所「全国オフィスビル調査(2017 年 1 月現在)の調査結果」(2017.9.13)によれば、札幌のオフィスビルのストックに占める新耐震基準以前(1981年以前)の割合は39%と、主要都市の中では福岡(40%)に次いで高いため、今後も新規供給が継続することが期待される。
8 他の主要都市では、福岡でも同様の傾向が見られる
 

6. 札幌オフィス市場の賃料見通し

6. 札幌オフィス市場の賃料見通し

札幌における今後のオフィス供給や人口流入、経済予測などに基づくオフィス需給の見通しから、2024年までの札幌のオフィス賃料を予測した9

札幌のオフィス賃料は、オフィス需要が底堅く推移することが見込まれるため、当面、上昇が続くと予想される。標準シナリオによると、オフィス賃料は、2020年のピークまで2017年下期比+7.4%の上昇となる見込みだ。その後、賃料は下落に転じ、2024年には2017年下期比▲5.9%まで下落する見込みである。楽観シナリオでは、2020年の賃料のピークまでの上昇率は同+18.5%、2024年の賃料水準は同+6.7%となった。また悲観シナリオでは、2018年の賃料のピークまでの上昇率は+0.3%、2024年の賃料水準は同▲19.2%となった(図表-17)。

札幌オフィス市場は、今後も毎年大規模ビルの新規供給が予定されているが、需給が逼迫した状態が続き、賃料は当面上昇する見込みである。ピークまでの賃料上昇率は、標準シナリオで2017年下期比+7.4%と、福岡(同+10.9%)や大阪(同+10.4%)と比べると、やや見劣りする10。ただし、賃料は2019年にもファンドバブル期のピークを上回ることが予想され、札幌のオフィス市場は今後も総じて底堅く推移することが見込まれる。
図表-17 札幌オフィス賃料見通し
 
9 経済見通しは、ニッセイ基礎研究所経済研究部「中期経済見通し(2017~2027年度)」(2017.10.13)、斎藤太郎「2017~2019年度経済見通し-17年7-9月期GDP2次速報後改定」(2017.12.8)などを基に設定。
10 札幌のオフィス需要の主な担い手であるコールセンターは、一般的には賃料負担力が強くないとされている。最近は、コールセンターが高水準の賃料で入居する事例もあるが、すでに高値圏にある賃料を今後どこまで押し上げることができるのか注目される。
 
 

(ご注意)本稿記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本稿は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものでもありません。
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金融研究部

佐久間 誠 (さくま まこと)

竹内 一雅

(2018年04月04日「不動産投資レポート」)

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