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EIOPAがソルベンシーIIレビューに関する第2の助言セットを欧州委員会に提出(3)
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この項目については、情報提供のみで、助言は行われていない。
NSAs(National Supervisory Authorities :国家監督当局)の調査で、欧州の保険会社による2,666件の戦略的参加が確認され、これらの会社の合計資産は1,740億ユーロとなっている。投資の割合、目的等国によって異なっている。
定量的な分析の詳細は、以下の通りである。なお、その内容はCPから若干修正されている。また、以下では、助言とともに掲載されている図表については省略している。
12.4.3. 定量分析
1300.2016年末の年次報告書を用いて、標準式を使用している会社の戦略的参加の合計額は238億ユーロである。より詳細な情報を収集するために、情報提供要請がNSAs や会社に行われた。 保険会社の負担を制限するために、総資産の少なくとも1%に相当する戦略的株式投資を有する者のみが情報請求に含まれている。
1301.情報要求は、欧州保険会社による2,666件の戦略的参加に関する詳細情報を提供した。 これらの約75%は、EIOPAデータベースで利用可能な情報とリンクすることができる。 これらの75%は、資産で1,740億ユーロを占めている。
総投資に対する戦略的株式投資の割合
1302.投資に比例して、ポーランド、オーストリア、スロベニア[、イタリア、ルーマニア、ブルガリア]においては、戦略的参加は総投資額の10%超を占めている。戦略的投資の平均額は、投資総額の3(4)%である。
戦略的参加のセクター
1303.データ分析によれば、これらの戦略的投資の大部分は、財務及び保険活動への投資に関連し、不動産への投資はそれほどではない(図12.2参照)。 図12.2に含まれていない他の部門への戦略的参加は、10億ユーロ未満であり、戦略的参加により行われた総投資額の1%未満である。
1304.金融・保険活動におけるこれらの戦略的参加の38(40)%は生命保険への投資、25%は持株会社における活動、15(16)%は損害保険業界への戦略的参加に関連している。
戦略的参加の目的
1305.結果は国によって大きく異なる。全体の投資額を考慮すると、投資の大部分は、より広いカテゴリーの金融投資又は販売チャネルや補助サービスの確保によって定義することができない(図12.3参照)。「その他」のカテゴリーにおける投資の重要な部分は、グループ内の子会社又はその他の会社の保有に対応しているように見える。戦略的株式投資の数を数えると、いくつかの国では戦略的株式投資の大部分の目的は「金融投資」を保持することとなっている。
過去の戦略的参加期間
1306.2,666の戦略的参加の大半は10年未満の期間行われた(図12.4参照)。 事実、長期間にわたって行われる戦略的参加は少ないようにみえる。同様の結論は、投資された金額(すなわち、過去の平均保有期間が戦略的参加の価値によって重み付けされた平均として計算される場合)を考慮して導くことができる。しかし、戦略的参加が長期化するにつれ、投資額は平均して高くなる傾向がある。
戦略的参加の予想保持期間
1307.戦略的参加が行われている期間とは対照的に、これらの殆どは(近い)将来売却されることはないと考えられている。 確かに、加重平均又は絶対的な数値の両方で、戦略的参加のそれぞれ90%(図12.5参照)と80%は、不明確な予想保有期間を有していた。これが実際の保有意思と保有意図との間の矛盾を示唆する場合、両方の結果が必ずしも互いに矛盾しない。相違点は、例えば、グループ構造の変更、合併又は過去数年間のより多くのアウトソーシング活動によって、説明される。
(再)保険会社が保有する戦略的参加の株式
1308.(参加会社によって)保有された戦略的参加の総資本の加重平均割合は74%(73%)である。 しかし、約半数の企業が100%(に近い)戦略的な参加をしている。会社の8%(15%)が10%未満の戦略的参加をしている(図12.6参照)。
1309.戦略的参加とみなされる保険会社に保有される持分の割合は、殆どの参加者が少なくとも70%であるのと非常によく似ている(図12.7参照)。
基本的にはCPの助言に基づいており、最終助言では微修正のみが行われている。
(1) カウンターパーティデフォルトリスクモジュールの相対的重要性
・小規模会社の方が高く、中小企業の場合、相対的重要性はそれぞれBSCR(Basic Solvency Capital Requirement)の21%と15%である。
・損害保険会社にとってより大きいようにみえる。
・全体の14%では、相対的重要性はBSCRの30%以上である。
・モジュールは以前に観察されたものよりも高い。QIS4(第4回定量的影響度調査)と同様、管轄区域にはかなりの違いがある。
・平均して、リスクが全ての種類の会社にとって重要であるが、BSCRに比べて主要なリスクとは見なされない。
(2) カウンターパーティデフォルトリスクモジュールの複雑さの評価
・全ての会社の14%が、カウンターパーティデフォルトリスクモジュールの1つ以上の簡素化を使用している。
・会社の規模に関わらずカウンターパーティデフォルトリスクモジュールの簡素化を使用している。
・6つの簡素化の各々は、少なくとも10の異なる加盟国における会社によって使用されており、6つの簡素化の各々は、少なくとも45の会社によって使用されている。いくつかの簡素化はかなりのより多くの企業によって使用されている。
(3)カウンターパーティデフォルトリスクモジュールにおけるデリバティブの取扱
EIOPAは、全てのデリバティブがタイプ1のエクスポジャーとして定義されており、LGD(loss given default:デフォルト時損失率)が、デリバティブがリスク軽減的であるかどうかに関わらず、委任規則第192(3)に従って計算される、ことを勧告している。
(4) 金融リスク軽減手法の定義
EIOPAは、全体のヘッジ戦略が満たしている限りにおいて、個々のデリバティブ契約がリスク軽減手法の全ての要件を満たす必要がない場合のヘッジ戦略として、金融リスク軽減手法を定義する、ことを勧告している。本質的な部分は、デリバティブが、委任規則第210条(リスクの効果的な移転)を個別に遵守する必要がない、ということにある。
さらに、EIOPAは、リスク軽減手法がヘッジ戦略である場合、リスク軽減手法は明確に定義されるべきであると提案し、リスク軽減手法の定義が、デリバティブは、それが明確に定義されたリスク軽減手法の一部であれば、リスク軽減的であるという意味でのリスク軽減手法の定義に従う、ことを勧告している。
(5) デリバティブのリスク軽減効果の計算
EIOPAは、委任規則第196条のリスク軽減効果の計算は、契約上の合意が委任規則第214条に準拠していることを条件として、契約上の相殺合意を認識することを助言している。
また、カウンターパーティレベルでのリスク軽減効果がゼロをフロアにすることを勧告している。
(6) デリバティブに係るLGDの計算
委任規則の第192条(1)及び(3)は、契約上の相殺合意の経済効果が認識されるように修正されるべきである、と勧告している。
(2018年04月02日「基礎研レポート」)
中村 亮一のレポート
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